大槻ケンヂの「グミ・チョコレート・パイン」 | 昭和80年代クロニクル

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古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。

グミ・チョコレート・パイン パイン編 (角川文庫)/大槻 ケンヂ
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大槻ケンヂ師匠が好きである。ヴォーカリストとしても作家としても。

筋少のCDもある程度持っているし、執筆本もかなり読んだ。

周辺は誰も気づいてなかったが、マフラーで顏半分を隠すようにし帽子を被った

大槻ケンヂと2回ほどすれ違ったことがある。

1回目は歌舞伎町のゲーセン、2回目は営業で移動中の高円寺駅ホーム。

ハッと気付いた瞬間、声を掛けさせてもらいたかったが度胸なく掛けれなかった。


そんな大槻ケンヂの有名な青春小説

『グミ・チョコレート・パイン』


1部のグミ編、2部のチョコレート編、そして完結編のパイン編の3部作。

1部と2部は何年も前に読んで、それからずっと経って3部が出たので

3部のパイン編に関しては読んでなく、先日借りてきて読んだ。

数年ぶりのグミチョコ拝読。


ポップでキッチュでエッチな表紙は漫画家・江口寿史のイラストである。

電車内で読むにはちょっとレジスタンス。


内容は大槻ケンヂの半自叙伝である。

(完結時に本人は全く別物の話になっていったと語ってるが)


主人公は高校2年生の「大橋賢三」

他の登場人物はその友人数人。そして同級生で後にアイドルとなり

違う世界の住人へと変わるオンナノコ。


「苦役列車」の西村氏も私小説を書く時は主人公の名は自分の名前を

多少アレンジすると書きやすいといって「北町貫多」としてたように、

大槻ケンヂ大橋賢三と変えている。


一般的に高校生が主人公の青春小説というと


〈ケンカに明け暮れ恋に破れバイクで暴走し、最後は決まって夢中になれる

スポーツをみつけそれで大会を目指す〉

のようなオレのキライな「ヤンキーサクセスストーリー」が主流。


だが、この小説には、

そんなヤンチャな話も流れも ない!

主人公の「大橋賢三」は地味で、自慰行為とマニア映画とロックに浸る文化系である。

クラスに中で明るく騒ぐ彼言うトコロの「クダラナイ人」たちと馴染むことも出来ず浮き気味。


友人も多くはないので休み時間の退屈を回避する究極の手段として水飲み場に行き、

ずっと水を飲んでいるフリをして休み時間が明けるのを待っているような男子である。

俗物の中にいるよりも孤高のほうが意味があると己に言い聞かせながら。


タレントの矢部美穂も休み時間に黒板を書き写すフリをして休みが明けるのを待った

と本で書いてたからなんかその状況にも似てるな。矢部美穂はイジメられて友人が

いなかったのが理由だけど。


なんかわかるなァ、賢三のそのキモチ。

ちょっとボーイズ・オン・ザ・ランの世界観も掠ってるわ。

このキモチが理解できるヤツとはマブダチになれそうだ。

もしいたら、モンテローザで臨時男子会やろーぜww。


で、この賢三。

基本はおとなしい文化系なんだけど自慰行為と映画、ロックにかけては

異様に熱心w。


机の下には重宝してるアイドルのグラビアがある。

モンモンモンモとしたらそのグラビアを見るのだ。


高校生ン時ってね、かなりのギラリズムですからね。

ワタクシも当然ながらギラリズムでしたわ。

でもそれがフツ―の高校生なのよねん。

ありとあらゆるスケべエなことに興味シンシン。


そういえば、高校の時に三宅裕司のラジオの読者投稿ネタで

「ヌードグラビアをクシャクシャにして元に戻すと凸凹で3Dみたく立体感出るぞ」

という投稿があって、別にそれを鵜呑みにしたり期待したわけじゃないけど

ヒマでヒマでしょうがないときに半分むなしくなるのも覚悟の上で

試してみて、グラビアをクシャクシャにして元に戻してみたことがある(-_-)。


結果、3Dもクソもない・・・。ただ単に汚くシワクチャになったオッパイがあった

だけであった。投稿したヤツもアホだなww。

車で時速いくらで走ってサンルーフから手の平を出すと風圧の感触がオッパイと

同じとかいう話題も流行りましたね。

これだけ聞いてると女性の皆さんは半ば引くかもですけどオトコってほんとガキ

ですから。



なーんてような世界を物語の中で主人公・大橋賢三は展開してくれるんです。

文化系の色満載、活劇のないトムソーヤの冒険(笑)。


何気に共感できる男子は多いと思うし、女子にもリアル男子を知ってもらうために

読んでほしい青春時代を通過した男女のバイブルです。女性ファンも多い本だし。


賢三にはほんと共感する場面が多い。


のちにアイドルとなる憧れの同級生から「大橋くん?」と声を掛けられた時

まさか自分なんかに声を掛けてもらえると思わなかった動揺と同時に、

実は好意をもってたことを悟られないようにするために、

「あ、君は○○サンだったよね?たしか・・・?」

みたいに名前をハッキリ知らないフリをしてすっとぼけるとことかすんごいワカル。

本人も自分に対して「知ってるくせに!」とツッこんでるしw。


そういう恋模様や成長過程を3部作で綴っている。

多くの人に読んでほしいオレの超おススメ作品。


最後にこの「パイン編」の中で平家蟹に似てる風俗店店長が出てくるんだけど

その店長がこんなセリフを言っている。


【生きていれば死なない。死ぬまで生きればいいだけ。

くだらねえことばかり起こるけれど、くだらねーのが人生当たり前だ。

だから本当は何も起こってないのと結局は同じ】


いいこと言うねえ。名言だこれは。


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