隣の席の父親とその膝に座った小学低学年のような女の子が
会話をしていた。
父親が
「イマ・スティーキ、イマ・スティーキ・・」
と何度も繰り返して覚えこませようとしている。
でも、女の子は発音できない。
お父さんが娘さんに先住民の言葉、ケチュア語を教えようとしているのだ。
ケチュア語はインカ帝国の時代の主要言語で、
今でもアンデス山岳地帯で使用され、
スペイン語とともにペルーの公用語のひとつにもなっている。
「イマ・スティーキ」
とは相手の名前を尋ねる表現。
なかなかしゃべろうとしない彼女に向かって、隣の私が
「イマ・スティーキ?」
と尋ねた。
彼女と会話をしたくなり、なんとなく彼女の名前を知りたくなったのだ。
恥ずかしそうにしている彼女。
お父さんが代わりに、私に
「イマ・スティーキ?」
と訊ねてきた。
「ノカ・カヨコ・カニ」
と答えると、女の子は目を輝かせて私を見た。
ガイジンさんがまさかケチュア語がわかるのが信じられなかったんだろう。
その後、父子がバスを降りるまでお父さんのほうと会話を続けた。
「学校でケチュア語を教えないんですよ。
家でもスペイン語でしか会話しないし・・
でも、昔の文化を捨てたくないんでね」
「ペルー文化省のテレビ番組でも簡単なボキャブラリーを教えてますね。
それで、少しずつ覚えていけますよね。
クスコではケチュア語をしゃべることを促進していますね」
クスコ市内では年配の人の中にはスペイン語とケチュア語のバイリンガルもいる。
スペイン語で会話をしていたと思ったら、いきなりケチュア語に変わって・・
なんていうこともある。
なかにはさらに、英語、フランス語、ドイツ語ができて、という
先住民言語も含むマルチリンガルもたくさんいる。
もちろん田舎から出てきた人の中には
ケチュア語しか出来ない人もいて、
今朝市場でアルパカ肉を買っていたら、
肉売り場のオバサンがいきなり
「アイチャ(肉)」としゃべり始めた。
ペルーではケチュア語がだんさん廃れているという報道もあるが、
クスコ市内ではそのような印象は薄い。
一時期廃れてかけたケチュア語の復権運動が行われている。
家庭で話されなくても第二外国語のような感じで学ぶものもいる。
ペルー文化省の先住民言語、ケチュア語使用推進ビデオ。
教養のある人間がある程度のケチュア語の知識がないのは恥ずかしいことなのだ。
スペイン語会話の中にケチュア語のボキャブラリーを加えることで
面白みを与えることはよくある。
そう、クスコではケチュア語をしゃべることは
クールなことなのだ。
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