長らくお休みしていましたが 再開です
左手のピアニスト 舘野泉さんの
病から復活し紡ぎ出した
「命の言葉」 をお届けします
これまでのおさらいをしてみましょう
舘野泉さんは
1936年11月10日 東京都生まれ
1年の浪人後 東京芸術大学に入学
24歳 東京芸術大学主席卒業
28歳 フィンランドに移住 世界中で演奏活動
65歳 脳溢血の後遺症による右半身麻痺に
67歳 左手のピアニストとして復活
2020年 83歳の現在も現役ピアニストです
『命の響』 舘野 泉
左手のピアニスト
生きる勇気をくれる23の言葉 より
今日の演奏テーマ <いのちの言葉>
生き延びる ために
生きて いるのではない
生きがい のあることのために
生きて いるのだ
「もうちょっとで死ぬところだった」
三度の危機一髪 ヒヤリ体験
①空襲からの生還
1945年(終戦の年)春
3月10日の大空襲は難を逃れました
自由が丘の自宅は危ないからと
当時はまだ田舎の世田谷区上野毛へ疎開
空襲警報で防空壕に駆け込んだすぐ後
10メートル先の借家を 焼夷弾が直撃
翌朝戻ると 焼け野原
ピアノは鉄骨のフレームだけの姿に
②毒キノコ
1960年後半 フィンランドでのこと
市場で採りたてのキノコを 食用に求め
綺麗な色と 森の香りが嬉しくて
とりあえず部屋に飾りました
知り合って間もないころの 妻のマリアさんが
部屋を訪ねてきて キノコを見るなり叫んだのです
「ダメッ! このまま食べたら死ぬわよ!」
何度も茹でこぼして毒を抜かないと
食べられないとのこと
まだフィンランド語に慣れていなかったので
市場のおばあさんの説明がよく解らなかったのです
マリアさんが教えてくれなければ
シチューか炒め物で毒キノコを食べていたところでした
③2002年の脳溢血
リハビリに励み
息子ヤンネの熱意が 左手での再出発を後押しします
「お父さんは 音楽がないと生きていかれない」
2004年 67歳で左手のピアニストとしてCDを発売
2020年6月 83歳 現役ピアニストとして最高齢
「後期高齢者なのに忙しすぎる」
友人に呆れられます
脳溢血から復活後は
以前のように地球の反対側まで演奏にいくのは
控えているといるという 舘野さんですが
日本国内で 年50回ぐらいの演奏旅行
2012年 日本モンゴル国交樹立40周年では
憧れのモンゴルからの依頼に
モンゴル国立フィルハーモニー管弦楽団と共演
7・8月と クリスマスシーズンの フィンランド滞在中は
ヨーロッパ諸国から演奏会の依頼があるそうです
フィンランドでは 60歳を過ぎたら年金生活
残りの人生をゆったり過ごすのが常識
生涯現役の日本でも 後期高齢者になったら
演奏活動を控えるように 言われる
「だから私は 変わり者です」
谷川俊太郎の詩に
共感するものが大きいという舘野さんです
一心
谷川俊太郎
生きのびるために
生きているのではない
死を避けるために
生きているのではない
その風の快さに和む心と
竜巻の禍々(まがまが)しさに怯える心は
別々の心ではない
同じひとつの私の心
死すべきからだのうちに
生き生きと生きる心がひそむ
悲喜こもごもの
生々流転の
「やりたいことをやって命を輝かせ
後悔しない人生を送りたい」
その思いをより強固にする出来事がありました
2014年12月7日
日本での秋の演奏シーズンが終わり
ヘルシンキに戻って1週間後
虫垂炎の手術と
術後の腸の異常で12日間の入院
筋肉は落ち
腸内バクテリアが無くなり皮膚病に
年末のエストニアでのレコーディングは 延期
年末年始の 日本滞在は中止
その後の好転
「きみは転んでもたたじゃ起きない」(友人評)
①2014年のクリスマスを 自宅で
②2015年のお正月に ピアノを再開
③2015年1月~6月 週1回
日本経済新聞夕刊のコラムを執筆
「こんにちは盲腸」で始まった
笑撃的エッセイとなりました
2015年1月15日 ドクターストップが解け日本へ
1月22日 京都市交響楽団と共演
1月23日 大坂でファンの集い
1月25日 福島県南相馬市でコンサート
1月26日 仙台市の親戚宅へ
「病み上がりでも納得のいく演奏ができた」
「身体の調子を整えながら
曲を仕上げるための
ペース配分が 感覚的にわかる
だから決して 無理はしていない」
「活力の元 それは公演の予定
若いころ以上に ピアノを弾くことが楽しい」
「音楽を通して この世界と彼岸を見てきたことを
左手で具現化していくことが 至上の喜び」
ラストの一曲 <いのちの言葉>
ピアノの前に座って
音を立ち上らせると
疲れ 悩み 年齢
すべてが 宇宙の彼方へ飛んで行く
最初の音を弾いた瞬間
「ああ 生きている」と思う
僕の命の花が開いていく
音楽は 僕にとって
生きることのすべて
生きる張り合い
では
左手のピアニスト 舘野泉さんと
ヴィオラ奏者 安達真理さんとの
「デュオ・リサイタル in 自由が丘」 をどうぞ
<参考文献>
『命の響』 左手のピアニスト 生きる勇気をくれる23の言葉
舘野 泉 (集英社 2015年)
ある日の空
「僕は 変わり者です」
と 言い切る舘野さん
自然体で 穏やかで
情熱が 静かに燃えていて
不思議な運を 引き寄せます
「僕は 幸せ者です」
と 目を細めて言う舘野さん
人生を楽しむ術を 身に付けたのは
いつのころなのでしょう・・・
あなたの わたしの
他人と ちがっているところが
すばらしい 魅力と思えるようになり
喜んで 感謝して
より 伸ばすことが できますように
今日もブログに最後までお付き合いいただき
有り難うございました