楽曲の「表現上の本質的な特徴の同一性」の判断基準 | 著作権コンサルタントが伝えたいこと

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楽曲の「表現上の本質的な特徴の同一性」の判断基準

 

▶平成14年09月06日東京高等裁判所[平成12(ネ)1516]

確かに、一般に、楽曲の要素として、旋律(メロディー)、リズム及び和声(ハーモニー)をもって3要素といわれることがあり、また、場合によってはこれに形式等の要素を付け加えて、これら全体が楽曲に欠くことのできない重要な要素とされていることは、当審証人Lや控訴人A自身の著書の「やさしい作曲のしかた/初心者のために」によっても認められるところである。

そして、一般に、楽曲の本質的な要素が上記のような多様なものを含み、また、それら諸要素が聴く者の情緒に一体的に作用するのであるから、それぞれの楽曲ごとに表現上の本質的な特徴を基礎付ける要素は当然異なるはずである。そうすると、具体的な事案を離れて「表現上の本質的な特徴の同一性」を論ずることは相当でないというべきであり、原曲とされる楽曲において表現上の本質的な特徴がいかなる側面に見いだし得るかをまず検討した上、その表現上の本質的な特徴を基礎付ける主要な要素に重点を置きつつ、双方当事者の主張する要素に着目して判断するほかはない。

もっとも、単旋律だけで表現される楽曲もあることは、上記J意見書及びK意見書の指摘するところであって、旋律は、例えば浪曲のように単独でも音楽の著作物(楽曲)として成立し得るものである上、旋律自体を改変することなく、これに単に和声を付するだけで、旋律のみから成る原著作物の表現上の本質的な特徴の同一性が失われることは通常考え難いところである。これに対し、和声は、旋律を離れて、それ単独で「楽曲」として一般に認識されているとは解されず、旋律と比較して、著作物性を基礎付ける要素としての独自性が相対的に乏しいことは否定することができない。そして、このことは、打楽器のみによる音楽のような特殊な例を除いて、リズムや形式についても妥当するものと解される。そうすると、楽曲の本質的な特徴を基礎付ける要素は多様なものであって、その同一性の判断手法を一律に論ずることができないことは前示のとおりであるにせよ、少なくとも旋律を有する通常の楽曲に関する限り、著作権法上の「編曲」の成否の判断において、相対的に重視されるべき要素として主要な地位を占めるのは、旋律であると解するのが相当である。

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