法20条2項2号の適用を認めた事例 | 著作権コンサルタントが伝えたいこと

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法20条2項2号の適用を認めた事例

 

▶平成15年6月11日東京地方裁判所[平成15(ヨ)22031]

イ 前記の前提事実及び上記アの事実に照らし,著作権法20条2項2号の適用の有無について判断する。

前記のとおり,本件においては,イサム・ノグチと谷口の共同著作に係る著作物としての,ノグチ・ルームを含む本件建物全体,庭園及び彫刻が一体となった建築の著作物と,独立の著作物としてのイサム・ノグチの著作に係る「無」,「学生」と題された各彫刻が問題となるものであるところ,このうち,ノグチ・ルームを含む本件建物全体,庭園及び彫刻が一体となった建築の著作物が,本件工事により改変を受けるものである。

著作権法20条2項2号は,建築物については,鑑賞の目的というよりも,むしろこれを住居,宿泊場所,営業所,学舎,官公署等として現実に使用することを目的として製作されるものであることから,その所有者の経済的利用権と著作者の権利を調整する観点から,著作物自体の社会的性質に由来する制約として,一定の範囲で著作者の権利を制限し,改変を許容することとしたものである。これに照らせば,同号の予定しているのは,経済的・実用的観点から必要な範囲の増改築であって,個人的な嗜好に基づく恣意的な改変や必要な範囲を超えた改変が,同号の規定により許容されるものではないというべきである。

これを本件についてみると,上記のとおり,本件工事は,法科大学院開設という公共目的のために,予定学生数等から算出した必要な敷地面積の新校舎を大学敷地内という限られたスペースのなかに建設するためのものであり,しかも,できる限り製作者たるイサム・ノグチ及び谷口の意図を保存するため,法科大学院開設予定時期が間近に迫るなか,保存ワーキンググループの意見を採り入れるなどして最終案を決定したものであって,その内容は,ノグチ・ルームを含む本件建物と庭園をいったん解体した上で移設するものではあるが,可能な限り現状に近い形で復元するものである。これらの点に照らせば,本件工事は,著作権法20条2項2号にいう建築物の増改築等に該当するものであるから,イサム・ノグチの著作者人格権(同一性保持権)を侵害するものではない(仮に,イサム・ノグチの著作物として,上記のような本件建物全体と庭園とを一体としてとらえた建築の著作物ではなく,債権者らの予備的申立てにいうように,本件建物のうちノグチ・ルーム部分と庭園を問題とした場合であっても,ノグチ・ルームは建築物の一部分として著作権法20条2項2号の適用を受け,庭園もその性質上,同号の規定が類推適用されるものと解するのが相当であるから,上記の結論は変わらない。)。

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