建物,庭園及び彫刻を一体として建築の著作物と認定した事例

 

▶平成15年06月11日東京地方裁判所[平成15(ヨ)22031]

上記のとおり,谷口とイサム・ノグチは,ノグチ・ルームを含む本件建物,庭園及び彫刻の製作について,これを両者による共同作業と位置付けているものであるところ,前記前提事実として記載した事実関係によれば,ノグチ・ルームは,本件建物を特徴付ける部分であって,本件建物の正面を構成する重要な部分である1階南側部分を占め,西側庭園に直接面して,庭園と調和的な関係に立つことを目指してその構造を決定されている上,本件建物は元来その一部がノグチ・ルームとなることを予定して基本的な設計等がされたものであって,柱の数,様式等の建物の基本的な構造部分も,ノグチ・ルーム内のデザイン内容とされているものである。これらの事情に,疎明資料により認められる事情を総合すると,ノグチ・ルームを含めた本件建物全体が一体としての著作物であり,また,庭園は本件建物と一体となるものとして設計され,本件建物と有機的に一体となっているものと評価することができる。したがって,ノグチ・ルームを含めた本件建物全体と庭園は一体として,一個の建築の著作物を構成するものと認めるのが相当である。

彫刻については,庭園全体の構成のみならず本件建物におけるノグチ・ルームの構造が庭園に設置される彫刻の位置,形状を考慮した上で,設計されているものであるから,谷口及びイサム・ノグチが設置した場所に位置している限りにおいては,庭園の構成要素の一部として上記の一個の建築の著作物を構成するものであるが,同時に,独立して鑑賞する対象ともなり得るものとして,それ自体が独立した美術の著作物でもあると認めることができる。

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