法60条但書の適用を認めた事例

 

▶平成15年6月11日東京地方裁判所[平成15(ヨ)22031]

著作権法60条但書の適用について

著作者人格権は一身専属の権利であり,本来,著作者が存しなくなった後においてはその保護の根拠が失われるものであるが(同法59条),著作権法は,著作者が存しなくなった後においても,一定の限度でその人格的利益の保護を図っている(同法60条)。

この場合において,著作権法60条但書は,著作物の改変に該当する行為であっても,その行為の性質及び程度,社会的事情の変動その他によりその行為が著作者の意を害しないと認められる場合には,許容されることを規定している。

そして,著作者の意を害しないという点は,上記の各点に照らして客観的に認められることを要するものであるところ,本件においては,上記のとおり,本件工事は,公共目的のために必要に応じた大きさの建物を建築するためのものであって,しかも,その方法においても,著作物の現状を可能な限り復元するものであるから,著作者の意を害しないものとして,同条但書の適用を受けるものというべきである。

したがって,仮に本件工事について著作権法20条2項2号が適用されないとしても,同法60条但書の適用により,本件工事は許容されるというべきである。

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