今日も村上さんは、私たちの質問や意見に対して真摯に答えてくれます。「村上さんのところ」から。

 

「なぜ人を殺してはいけないのか」「無駄に話が長い上司」「セクシーランジェリーの正しい活用法」など。

 

 

 

「1995年に生まれて」

質問:

わたしは1995年に生まれで、2ヶ月後には20歳になります。

わたしの生まれ年は第二次世界大戦から50年経った年であり、またそんな年にもかかわらず阪神淡路大震災や、地下鉄サリン事件のような多くの人の記憶に残る出来事も起こりました。

 これらの大きな出来事は、これから先の世界にどう関係していく、あるいは関係していくべきだと思いますか。また、それらが起こったあとで生きる今のわたしたちのような世代に対し、何か思いはありますか。

 

 

回答:

十九歳なんですね。あたり前の話ですが、僕にも十九歳のときがありました。世の中が今にもひっくり返ってしまいそうな大変な時代でした。 でも世の中というのは、そう簡単にはひっくり返らないものです。僕はその時代に、人生のうちで一番大事なことを「資料」としてたくさん取り入れたような気がします。その「資料」を解析するのに、とても長い歳月がかかりました。だから今のあなたにとって一番大事なことはとにかく、あなたにとっての大事な資料をたくさん取り入れ、丁寧に保管していくことだと思います。

 それがどのような意味を持つかなんて、あとでゆっくり考えればいいのです。 今はとにかく たくさん本を読んで、できるだけいろんな人と出会って、できることなら深く恋をして、困ったり、わけがわからなくなったりするといいのではないかと思います。 僕もそうしてやってきたから。

 

 

 

「お店をやっていたときの哲学」

質問:

わたしは早稲田の学生で、学校に行きながら大学の近くのカフェで店長のようなものをやっています。 村上さんも在学中にジャズバー営んでいたと聞きました。そこで聞きたいことがあります。飲食店をやっていて、「これは一番大事にしていたなあ」と今振り返って思う哲学(のようなもの)はありますか?

 

 

回答:

お客の全員に気にいられなくともかまわない、というのが僕の哲学でした。

店に来た十人のうち三人が気に入ってくれればいい。 そしてそのうちの一人が「また来よう」と思ってくれればいい。 それで店って成り立つんです。

 

経験的に言って、それって小説も同じことなんです。 十人のうち三人が気に入ってくれればいい。そのうち一人がまた読もうと思ってくれればいい。僕は基本的にそう考えています。そう考えると気持ちが楽になります。好きに好きなことができる。

 

昔、村上龍さんにその話をしたら、「おれ、そういうのだめだな。十人のうち十人が好きになってくれないといやだ」と言われました。 人それぞれ性格ってありますよね。

 

 

 

 

「なぜ人を殺してはいけないのか」

質問:

高校卒業以来考えて、答えの出ないことでしたので、思い切って村上さんに聞きたいと思います。

 人を殺してはいけない。これは確かなことだと思います。 ですが、高校のとき国語の先生が仰った質問「なぜ、殺してはいけないのか」の明確な理由がまだ私には見つかりません。年を取って、大事なもの、守りたいものも増えましたが、まだ上記の質問には答えられません。

村上さんなら、どのように答えてくださいますか。

 

 

回答:

河合隼雄先生は、心と肉体とのあいだに「魂」というものがあって、人として間違ったことをすると、理由は抜きで、その魂が損なわれていくのだ、あるいは腐っていくのだと言っておられました。

人殺しがいけないというのも、要するにそういうことなのではないでしょうか。

 

通常:           異常:

[心]  ⇔ [魂] ⇔ 肉体    []  [腐魂] [肉体]

 

 

 

 

「セクシーランジェリーの正しい活用法」

質問:

はじめまして。私の素朴な質問なのですが、これまで聞ける方がおらず、ここに書いています。それは、女性のセクシーランジェリーについて。 

暗くてすぐに脱いでしまうセクシーランジェリーの出番がなかなかないからなんです。・・・・・セクシーランジェリーの正しい活用法があれば、教えて欲しいのです。

 

 

回答:

35歳の主婦の方ですね。「セクシーランジェリー」というのがどの程度のものを示すのか、僕にはよくわかりません。 しかし、そういうのって、ご主人が何を求めるかによって違ってくるんじゃないでしょうか。やはり相手あってのものですから。 

 

ご主人にちょっと聞いてみればいかがでしょうか? 

 

「そんなのいらねえよ」という人もいるでしょうし、「ちょっといいかも」という人もいるでしょう。 「セクシーランジェリーの正しい活用法」、そんなの僕に わかるわけないじゃないですか。 もう大人なんだから自分で考えてみてください。

 

 

 

 

「無駄に話が長い上司」

質問:

こんばんは。春樹さん折り入って相談したいこと、それは上司の話がそごく長いことです。この間は「15分、時間を下さい」と言われて半日!話されました。

いちち全ての話が長いんです。やんなっちゃう。話の長い人の話を短くするにはどうしたらいいでしょうか?

 

 

回答:

話の長い人の話を短くすることは不可能です。

あれは不治の病です。死ぬまで治らない。 僕もよく

「退屈な人って、自分に退屈しないのかな?」

と思うんだけど、しないんですね、ぜったいに。 気の毒だけど、あきらめてください。 「退屈さには神々も旗を巻く」※ と確かニーチェも言ってます。 神様でさえかなわないんだから、あなたに勝てるわけはありません。

※:Mr. Murakami said、 世の中には どうしようもなく退屈な人もいる?! 運転免教習所で、ギリシャのカフェで。

 

 

 

「お父さんの本棚の人へしつもん」

質問:

こんにちは、はじめまして。 お父さんの本棚に村上さんの本がたくさんあったので、どんな人かと思ったので質問してみました。 学校(小学生)の授業中、トイレに行きたくなった時お腹が痛いと嘘をついています。そんな時村上さんだったらどうしますか?

 

 

回答:

十歳のかたなんですね。うそをつくのは女性の権利です。 どんどんついてください・・・・・とは言わないけれど。 適当についてかまいません。 男はだいたい馬鹿だし、だまされるほうが悪いんです。 村上さんはうそがあまりうまくないので、すぐにみやぶられます。

おとうさんはりっぱな人です。 尊敬してあげてください。

 

 

 

 

「批判されるのが怖い」

質問:

ワタシは批判されたり、嫌われたりするのを恐れて自分の意見を主張できなかったりすることが多々あります。 あとで「あのときああいっておけばよかった」と後悔するのですが・・・・

どうすれば気にならなくなるか、アドバイスを頂ければ幸いです。

 

 

回答:

僕は自分が嫌われたり、批判されたり、ないがしろにされたりするのが普通の状態だと思って生きてきました。 そう思うと、嫌われたり、批判されたり、ないがしろにされたりしても、あまりこたえなくなります。 もちろんあまり良い気持はしませんが、「ま、しょうがないだろう」と考えます。 むずかしいかもしれませんが、そのように考えるといいと思いますよ。

 

スティングの歌の歌詞にたしか

「I’m a legal alien」というのがありましたよね。「ぼくは合法的な 異邦人 なんだ」と。人はそのように基本的に孤独なものです。

 

*:大ヒット曲『異邦人』久保田早紀 

https://www.youtube.com/watch?v=HgvzyBkYsKU

 

--------------------------------------------------------------------------------

1年前の今日、私が upload したブログです。

 

 

1年前の今日あなたが書いた記事があります

『神の子供たちはみな踊る』:「神を試してはいけない」の意味は?  

 

1年前の今日あなたが書いた記事があります

BRUTUS特別編集 合本 村上春樹 「読む。聴く。・・・そして、思う」より。

--------------------------------------------------------------------------------

 

使用書籍

村上さんのところ (新潮文庫) 文庫 – 2018/4/27

村上 春樹 (著)