『アンの青春』訪問。 第11回目:「嘘が悪いって言うのなら僕にだって言いたいことがある」とデイヴィが言う。 ちょっと切れ気味?

 

今回、デイヴィは二つの大きな罪を犯しました。ドーラをハリソンさんの道具置き場に閉じこめたこと。 そのドーラの事を、『僕、知らないよ!』と嘘をついたこと

 

アンは、デイヴィに嘘がどんなに悪い事か言って聞かせます。

 

よくもあんなとんでもない悪戯ができたものね!

僕はただ、ちょっとふざけた だけだったんだよ

でもあんたは嘘をついたじゃないの?

嘘ってなあに? 大ボラのこと?

本当でないこと、出鱈目を言うのが嘘よ!

 

そう言っているアンの目は涙で一杯になり、溢れた涙が次々にこぼれ落ちた。

 

それを見ていたデイヴィの胸に、後悔の念が波のように押し寄せてきた。

 

僕、大ボラが悪いなんて知らなかったんだもん。 誰も教えてくれなかったんだ。お姉ちゃんを泣かせて本当にごめんなさい。 僕、これからは決して嘘はつかないよ

 

デイヴィはアンの肩に顔をうずめて激しく泣いた。

 

マリラ、どうやらデイヴィは嘘をつくのが悪い事だと知らなかったのよ

でも、ドーラを閉じこめたことについちゃ罰しなくてはならないよ、アン

罰なんて恐ろしくて、私、思いつかないわ」とアンはデイヴィを抱きしめた。

・・・・・・」 もうマリラは何も言えなかった。

 

とどのつまり、デイヴィは いつものお仕置きのようにベッドに追いやられ、明日の昼までそうしているようにアンに宣告された。

           えへっ!

 

夜、二階に上って行くと、デイヴィが小さくアンの名前を呼んでいる声に気がついた。

 

アンお姉ちゃん。ちょっといいかなぁ?

 

行ってみると、デイヴィがベッドに腰掛け、膝に両肘をついて、その上に顎を乗せ、いかにも何かを言いたげに・・・・。

 

 

 [英語原文]  Page 66, line 15

 

  “Anne,” he said solemnly, “is it wrong for everybody to tell whop大うそ . . . falsehoods?  I want to know?” 

  “Yes, indeed.”

  “Is it wrong for a grown-up person?”

  “Yes.”

  “Then,” said Davy decidedly, “Marilla is bad, for SHE tells them.   And she’s worse’nもっと悪い me, for I didn’t know it was wrong but she dose.”  

  “Davy Keith, Marilla never told a story in her life,” said Anne indignantly. 

  “She did so.  She told me last Tuesday that something dreadful WOULD happen to me if I didn’t say my prayers every night.  And I haven’t said them for over a week, just to see what would happen . . . . and nothing has,” concluded Davy in an aggrieved tone. 

 

 Anne choked back抑える a mad desire to laugh with a conviction that it would be fatal, and then earnestly真剣に set about saving Marilla’s reputation. 

 

  “Why, Davy Keith,”  she said solemnly, “something dreadful HAS happened to you this very dayまさに今日.”

  Davy looked sceptical.

  “I s’pose you mean being sent to bed without any supper,” he said scornfully嘲るように, “but THAT isn’t dreadful.  Course, I don’t like it, but I’ve been sent to bed so much since I come here that I’m getting used to it.  And you don’t save anything by making me go without supper either, forというのは I always eat twice as much for breakfast.”

  “I don’t mean your being sent to bed.  I mean the fact that you told a falsehood today.  And, Davy,” . . . Anne leaned over the footboard of the bed and shook her finger impressively at the culprit罪人 . . . “for a boy to tell what isn’t true is almost the worst thing that could HAPPEN to him . . . . almost the very worst.  So you see Marilla told you the truth.”

 

  “But I thought the something bad would be exciting,” protested Davy in an injured tone.

 

 

 

 [単語・語句の意味]

solemnlyしんみりと;発音、ソォレムリィ):whop本当はwhopperと言いたかった大うそ、発音、パァー):falsehoods(うそをつくこと;参考、falseは、”偽”の意味です。falsetransmitter ”偽伝達物質grown-up成人の): worse’n(もっと悪い)story物語 ⇒ 嘘 ;参考、「君の話は何だい?」“What is your story?” とも使う):indignantly憤然として): prayers祈り):aggrieved感情を害して):choked back抑えるmad(興奮して):conviction確信 fatal破滅的な;参考、fatal dose、致死量、dose ウス、をドウ  と濁って発音してしまう人多いかも?earnestly真剣に): set(整える、示す)reputation世評dreadful恐ろしい):this very day(まさに今日)sceptical懐疑的;発音、セプティカルs’posesupposeの意味;思う supper夕食):scornfully嘲るように):CourseOf courseのこと、 “もちろん” ):used to慣れる):for(というのは):leaned 体を乗り出す):footboard寝台の足掛け):impressively荘重に):culprit(罪人)worst(最悪)protested(断言する) injured気を悪くした

 

 

 [日本語訳] 今回は、村岡花子訳を提示してみます。

                   ページ140、2行目

 

「姉ちゃん。どんな人でも大ぼ―――うそをついちゃいけないの? おしえてよ」デイビーは重々しくたずねた。

「いけませんとも」

「おとなの人でもいけないの?」

「ええ、いけないのよ」

「それなら、おばちゃんはいけないんだよ。うそついたもん」デイビーはきっぱり、言った。 「それに、おばちゃんのほうがぼくよりもずっと、いけないや。ぼく、それ、いけないことだって知らなかったんだけど、おばちゃんは知ってるんだもん」

「デイビー。おばちゃんはいままで、一度も嘘なんかついたことはありませんよ」アンは憤然とした。

「ほんとうに、うそ言ったよ。この前の火曜日に、もしぼくがまいにち、お祈りをしないなら、おそろしい事がおこるって言ったんだよ。それでぼく、どんな事がおこるのかなと思って、ためしに、一週間よりもっとお祈りをしてないんだけど、なんにもおこんないんだもん」といかにも不平そうな口調だった。

 

 アンは笑いたくてたまらなかったが、笑ったら最後だと思って、一生懸命がまんし、マリラの名誉回復に努力した。

 

「あら、デイビー。きょうこそ、あんたにおそろしいことがおきたじゃありませんか」アンはおごそかな顔をした。

 デイビーは信じられないようすだった。

「姉ちゃんの言うのは、お食事なしでベッドへやられることだろう?」とさも軽蔑したように言った。 「だけど、そんなこと、ちっともおそろしかないや。もちろん、ぼくだって好きじゃないさ。だけど、ここへきてから、あんまり、なんどもベッドへ入れられたもんで、なれちまったもん。それから、お食事をくれなくても、ちっとも、とくしたことにならないよ。朝の食事のときにいつもの二倍、食べるもん」

「あんたがベッドへやられることではありません。あたしが言うのは、きょうあんたが嘘をついたということなのよ。 いいこと、デイビー?」アンはベッドの裾にのりだし、罪人に重々しく、指をふってみせた。 「男の子が、ありもしないことを言うほど、わるいことはないのよ。一番おそろしいことと言っていいくらいよ。 ほらね、だからおばちゃんはほんとうのことを、あんたに話したわけでしょう?」

 

「だけどぼく、その出来事というのが、なんかおもしろいことかと思ってたんだもん」

 

 

 

 [三人の翻訳の比較] 1:attentional sentences  (Singl sentence ⇒ two elements)、2:1行目のsolemnlyをどう訳すか?

 

 “Anne,” he said solemnly, “is it wrong for everybody to tell whop . . . falsehoods I want to know?

  “Yes, indeed.”

  “Is it wrong for a grown-up person?”

  “Yes.”

  “Then,” said Davy decidedly, “Marilla is bad, for SHE tells them.  And she’s worse’n me, for I didn’t know it was wrong but she dose.   “Davy Keith, Marilla never told a story in her life,” said Anne indignantly. 

  “She did so.  She told me last Tuesday that something dreadful WOULD happen to me if I didn’t say my prayers every night.  And I haven’t said them for over a week, just to see what would happen . . . . and nothing has,” concluded Davy in an aggrieved tone. 

 

  Anne choked back a mad desire to laugh with a conviction that it would be fatal, and then earnestly set about saving Marilla’s reputation世評.

 

 

MIによる逐語訳: セリフ非分割記述派 Solemnlyの訳は? MI(manual intelligence)

 

アン、出鱈目・・・・嘘をつくって悪い事なの、僕知りたいんだ」とデイヴィは しんみり言った。

「そうよ、もちろんだわ」

「大人でも悪い事なの?」

「もちろんよ」

そんなら、マリラは悪いんだよ。 おばさんは僕に嘘をついたんだもん。 それに、おばさんはもっと悪いんだ。だって僕は嘘が悪いなんて知らなかったけど、おばさんはそうじゃないもん」デイヴィは決然と言った。

「デイヴィ・キース、マリラはこれまで、一度も嘘なんかついたことないわよ!」アンは憤然として言った。

「おばさんは僕に嘘をついたんだ。おばさんは先週の火曜日に僕に言ったんだ、もし毎晩のお祈りをしなかったら何か酷いことが起こるって。 それで僕、何が起こるか知りたかったもんだから、週間以上もお祈りを止めてみたんだ・・・・でもって、何にも起こらなかったよ」とデイヴィは不満げに言い放った。

 

アンは、ここで笑ってしまったらお終いだとわかったので、何とかしてマリラの名誉を守ろうとした。

409文字)

 

 

 

⦿村岡花子訳セリフ非分割記述派。 訳も極めて自然で上手。 solemnlyの訳は?

 

 姉ちゃん。どんな人でも大ぼ―――うそをついちゃいけないの? おしえてよ」デイビーは重々しくたずねた。

「いけませんとも」

「おとなの人でもいけないの?」

「ええ、いけないのよ」

それなら、おばちゃんはいけないんだよ。うそついたもん」デイビーはきっぱり、言った。 「それに、おばちゃんのほうがぼくよりもずっと、いけないや。ぼく、それ、いけないことだって知らなかったんだけど、おばちゃんは知ってるんだもん

「デイビー。おばちゃんはいままで、一度も嘘なんかついたことはありませんよ」アンは憤然とした。

「ほんとうに、うそ言ったよ。この前の火曜日に、もしぼくがまいにち、お祈りをしないなら、おそろしい事がおこるって言ったんだよ。それでぼく、どんな事がおこるのかなと思って、ためしに、一週間よりもっとお祈りをしてないんだけど、なんにもおこんないんだもん」といかにも不平そうな口調だった。

 

 アンは笑いたくてたまらなかったが、笑ったら最後だと思って、一生懸命がまんし、マリラの名誉回復に努力した。

435文字)

 

 

 

◎中村佐喜子訳:誰が始めたかは知らないが、一続きのセリフを二つに分割して表記する小説的記述方ーセリフ分割記述派。小説では、日本語でも、英語でも良くみられる手法なので言語体系とは無関係? solemnlyの訳は?

 

アン」と彼は重々しく言った。 「誰がちゃらん―――いや、うそをついても、それは悪いことかい? ぼくは知りたいんだよ

「もちろん悪いことですよ」

「おとなが言っても悪いんだね?」

「そうよ」

そんなら」とデイヴィは決然とした。 「マリラは悪いよ。うそをつくよ。ぼくよりよっぽど悪いじゃないか。ぼくは知らないでついたけど、マリラは知ってるくせにつくんだから

「デイヴィ・キース。マリラは今まで一度だってでたらめを言ったことはない人ですよ」とアンは腹を立てた。

「ちがわい。この間の火曜にマリラはさ、毎晩お祈りをしないと悪いことが起こると言ったよ。そいでぼく、どんなことが起こるかと思って、一週間以上お祈りをしないでいるんだよ。―――だけど何も起こらないじゃないか」とデイヴィは、いかにも不平そうに言った。

 

 アンは、ここで笑ってはおしまいと思って無理にも我慢し、マリラの名誉をまもるために努めることにした。

394文字)

 

 

 

Д 松本侑子訳:セリフ分割記述派。 訳は非常にコンパクトにまとまっている。実際の会話は、こんな感じ。solemnlyを“神妙に”とした訳は秀逸と思う。

 

アン」デイヴィは神妙に言った。「でたら・・・・じゃなくて嘘は、誰もがついちゃいけないよね

「そのとおりよ」

「大人も?」

「そうよ」

じゃあ、マリラはいけないよ」デイヴィはきっぱり言った。「嘘をついてるもん。 ぼくより悪いよ。ぼくは悪いって知らなかったけど、マリラはわかってたんだから

「マリラは一度も嘘なんか言いません」アンは憤然とした。

「いいや、言ったよ。この前の火曜日、毎晩お祈りをしないと恐ろしいことが起きるよって言うから、一週間お祈りをしないで何が起きるか待っていたの・・・・それなのに、何もないじゃないか」デイヴィはふくれっ面をした。

 

 アンはふき出しそうになったが、そんなことをしたらおしまいだとこらえ、マリラの信頼回復に懸命にとりかかった。

324文字)

 

 

 

 [使用書籍]

1. Anne of Avonlea ペーパーバック – 2024/3/25

英語版  Lucy Maud Montgomery (著)

 

2.アンの青春 赤毛のアン・シリーズ 2 (新潮文庫) 文庫 – 2008/2/26

ルーシー・モード・モンゴメリ (著), Lucy Maud Montgomery (原名), 村岡 花子 (翻訳)

 

3.アンの青春 (文春文庫 モ 4-2) 文庫 – 2019/9/3

L・M・モンゴメリ (著), 松本 侑子 (翻訳)

 

4.アンの青春 (角川文庫) 文庫 – 2008/4/25

モンゴメリ (著), 吉野 朔実 (イラスト), 中村 佐喜子 (翻訳)