『アンの青春』訪問。 第20回目:アンの教師一年目も何とか終わり、長ーい 夏季休暇に入ります。

 

 

今日は天気も良く、まさにお墓参り日和です。アンはマシュウの墓に持って来たオレンジの薔薇の花束を供えてから、若くして、二十二歳で亡くなったヘスター・グレイの墓へも花を手向けた。ヘスター・グレイは少女四人での春ピクニックで、ダイアナから教えてもらった女性です。 

 

前の日の夕方、アンは森の中に今でもある あの小さな庭に行き、三十年前、若妻 ヘスターが自らの手で育てた“ 白い薔薇 ”を摘んできたのだった。

 

 

ヘスター、あなたはどの花よりこの白い薔薇が好きだと思ったのよアンはやさしく囁いて、持って来た花束を手向けた。

 

「本文:英文内容含む」

 

アンがお墓に手を合わせ、しばらくそこに佇んでいると、芝生の上に人影がさした。見上げるとアラン夫人だった。アラン夫人も、過日、自分の小さな子供を亡くし墓参りに来ていたのであった。

 

アンとアラン夫人は、連れ立ってお墓を後にした。

 [They walked home together.]

 

 

 [英語原文]  Page 107, from first line (except the title of this novel).

 

  Anne was still sitting there when a shadow fell over the grass and she looked up to see Mrs. Allan.  They walked home together.

 

  Mrs. Allan’s face was not the face of the girlbride whom the minister had brought to Avonlea five years before.  It had lost some of its bloom若々しさ and youthful curves(体型), and there were fine, patient lines about eyes and mouth.  A tiny grave in that very cemetery墓地 accounted for some of them;  and some new ones had come during the recent illness, now happily over, of her little son.  But Mrs. Allan’s dimple were  as sweet and sudden as ever, her eyes as clear(明るい) and bright輝く and true(誠実な);  and what her face lacked of girlish beauty was now more than atoned for in added tenderness and strength.

 

  “I suppose you are looking forward to your vacation, Anne?” she said, as they left the graveyard墓地.

  Anne nodded.

  “Yes. . . . I could roll the word as a sweet morselひと口 under my tongue.  I think the summer is going to be lovely.  For one thing, Mrs. Morgan is coming to the Island in July and Priscilla is going to bring her up.  I feel of one of my old ‘thrills’ at the mere thought.”

 

  “I hope you’ll have a good time, Anne.  You’ve worked very hard this past year and you have succeeded.”

  “Oh, I don’t know.  I’ve come so far short in so many things.  I haven’t done what I meant to do when I began to teach last fall.  I haven’t lived up to my ideals.”

 

  “None of us ever do,” said Mrs. Allan with a sigh.  “But then, Anne, you know what Lowell says, Not failure but low aim is crime. We must have ideals and try to live up to them, even if we never quite succeed.  Life would be a sorry business without them. With them it’s grand崇高な and great卓越した.   Hold fast to your ideals, Anne.” 

 

  “I shall try.  But I have to let go most of my theories想定、理論,”  said Anne, laughing a little.   “I had the most beautiful set of theories you ever knew when I started out as a schoolma’am, but every one of them has failed me at some pinch or another.” 

 

  “Even the theory on corporal身体の punishment,” teasedからかう Mrs. Allan.

 

 

 

 [単語・語句の意味]

fellfallの過去形;落ちた):grass(芝生、草口語ではマリファナの意味で使われることもある。主成分、テトラ-ハイドロ-カンナビノール):girlbride若い花嫁):minister牧師;主に、プロテスタントのbloom若々しさ、花):youthful若々しい): curves(体型)patient忍耐強い;発音、ペント):tiny(非常に小さい:発音、タイ;例)tiny spikes 振幅のとても小さな細胞活動):grave):cemetery墓地): accounted for説明する):dimple(えくぼ):sweet(気持ちよい、甘美):sudden(不意に) clear(明るい):bright輝く):true(誠実な):tenderness優しさlooking forward楽しみにしている;よく使う I’m looking forward to see you.):vacation(弘田三枝子;):graveyard墓地):roll(転がす⇒味わう): morselひと口):tongue(舌、言葉) lovelyすばらしい):bring up連れてくる):thrillsぞくぞくする):mere thought(思うだけで):this past yearこの1):succeededうまくいくfar short~よりはるかに少ないlived up(~に応えるideals理想;発音、アイディールズsighため息;記憶方、“サイ”さんも“ため息”をつくcrime grand崇高な great(卓越した)let go手放す、執着を捨てるtheories(想定、理論)schoolma’am女性教師):failed(失敗するsucceed):pinch危機 corporal身体の teasedからかう

 

:YouTube  弘田三枝子 『 ヴァケイション

 

 [日本語訳] 今回は、中村佐喜子訳を提示してみます。

       ページ175、3行目

 

 そうして静かにたたずんでいりとき、草の上に長い人影がさしたので、見上げるとミセス・アランだった。 二人は一緒に帰った。

 

 ミセス・アランの顔は、五年前アラン牧師と一緒にエヴォンリーへ来た時の、小娘のような花嫁の顔ではなくなった。 はなやいだ若々しい丸みが消え、眼や口のあたりには、気高く我慢づよいしわができた。 それはまず、この同じ墓地内の小さなお墓によるものであり、また、もう全快したけれど、最近の小さな息子の病気によって あらためてふえたものであった。でも、くっきりくぼむ美しいえくぼはもと通りだし、眼もあいかわらず澄んであかるく、誠実さをあらわしていた。 少女っぽい美しさは消えたが、やさしさと力強さのましたその顔は、いっそう美しくなった。

 

「お休みになってうれしいでしょう? アン」と墓地を出ながら彼女が言った。

 アンはうなずいた。

「ええ。――口の中で、お休みという言葉を甘いお菓子みたいに味わってますの。 とても楽しい夏になりそうですのよ。まず七月にミセス・モーガン がこの島へいらして、それからプリシラの案内でここへもいらっしゃるんですの。それを思っただけで、あたし、子供の頃みたいに、ぶるっとしてしまいますわ。

 

  「せいぜいお楽しみになるがいいわ、アン。 あなたはこの一年、ずいぶんよく働いたし、成果もあげたのですもの」

「さあ、どうかしら。いろいろ満足できないことばかりですわ。 去年の教えはじめに考えたことも実行だきなかったし、――ちっとも理想通りじゃありませんでしたわ」

 

「誰でもそういうものよ」とミセス・アランが吐息をした。 「でもね、アン。『とがめるべきは失敗ではなく目的の低さだ』とロゥエルが言ってるでしょ。 たとえ決して成功しないとしても、私たちはやっぱり理想を立てて、それへ向かって努力しなくちゃいけないのね。 でなければ、人生なんて貧弱なものになってよ。 理想によって堂々と立派になるのよ。 しっかりと理想を持つことだわ、アン」

 

「そうですわね。 でもあたしの理論はおおかた廃止ですわ」とアンはちょっと笑った。 「ご存知のように、先生になりたての頃は、いろいろ立派な理論を考えてましただしょ。 でもどれもみんな、いざとなれば失敗でしたもの」

 

「体罰に関してもね」とミセス・アランはからかった。

 

有名なカナダの女性作家(シャーロット・E・モーガン)?:代表作品『薔薇の花園』

   Charlotte E. Morgan (1868-1943) was a novelist from Toronto and the aunt of      

       Priscilla Grant. Anne Shirley and Diana Barry enjoyed reading Mrs. Morgan's books.

 

 [三人の翻訳の比較] 

   “I hope you’ll have a good time, Anne.  You’ve worked very hard this past year and you have succeeded.”

  “Oh, I don’t know.  I’ve come so far short in so many things.  I haven’t done what I meant to do when I began to teach last fall.   I haven’t lived up to my ideals.”

 

  “None of us ever do,” said Mrs. Allan with a sigh.  “But then, Anne, you know what Lowell says, Not failure but low aim is crime. We must have ideals and try to live up to them, even if we never quite succeed.  Life would be a sorry business without them.  With them it’s grand and great.   Hold fast to your ideals, Anne.” 

 

  “I shall try.  But I have to let go most of my theories,”  said Anne, laughing a little.   “I had the most beautiful set of theories you ever knew when I started out as a schoolma’am, but every one of them has failed me at some pinch or another.” 

 

  “Even the theory on corporal punishment,” teased Mrs. Allan.

 

 

 

MIによる逐語訳:MI提示のこの訳は、原著から少しだけ偏移しているかも、but no so bad?

 

「アン、私はあなたが楽しい時間を過ごせることを望んでますよ。 なんといっても、この一年あなたは一生懸命やったのだし、すばらしい結果だったでしょ」

「いいえ、それは違いますわ。 いろんな点で、力足らずでした。去年の秋、先生になった時にやろうと思っていたこと、さっぱりできておりませんし。 自分の理想からは遠くかけ離れております」

 

「そんな事ができた人はどこにもおりませんよ」とアラン夫人はため息をつきながら言った。 「それでねアン、あなたは、あのローウェルが言った『失敗が罪なのではなく、志し低きことが罪悪なのだ』という言葉を知っているでしょ。わたしたちは、いつも高き理想をもって、そこに到達できるように努力を怠ってはならないのです。 完全なる成功が得られないとしても。 人生ってそれを、理想を、目指すのでなければ虚しいものなのです。 理想あってこそ、人生は崇高で卓越したものとなるのです。 あなたの理想、そこに早く到達して下さいね、アン」

 

「頑張ってみます。でもとにかく、教師になる前の想定の殆どは撤回ですの」ちょっと笑いながらアンは言った。 「アラン夫人もご存知のように、私、女性教師として先生になる前は、教育というものに崇高な理想を持っていたのですが、いくつかの現実の前では ことごく打ち負かされました」

 

「“体罰の論理”さえもね」とアラン夫人はアンをからかった。

570文字)

 

 

 

◎中村佐喜子訳:じょうずな訳だとは思うが、何かちょっと違和感も? ただ、とがめるべきは失敗ではなく目的の低さだは秀逸。

 

  「せいぜいお楽しみになるがいいわ、アン。 あなたはこの一年、ずいぶんよく働いたし、成果もあげたのですもの

「さあ、どうかしら。いろいろ満足できないことばかりですわ。 去年の教えはじめに考えたことも実行だきなかったし、――ちっとも理想通りじゃありませんでしたわ」

 

「誰でもそういうものよ」とミセス・アランが吐息をした。 「でもね、アン。『とがめるべきは失敗ではなく目的の低さだ』とロゥエルが言ってるでしょ。 たとえ決して成功しないとしても、私たちはやっぱり理想を立てて、それへ向かって努力しなくちゃいけないのね。 でなければ、人生なんて貧弱なものになってよ。 理想によって堂々と立派になるのよ。 しっかりと理想を持つことだわ、アン」

 

「そうですわね。 でもあたしの理論はおおかた廃止ですわ」とアンはちょっと笑った。 「ご存知のように、先生になりたての頃は、いろいろ立派な理論を考えてましたでしょ。 でもどれもみんな、いざとなれば失敗でしたもの」

 

「体罰に関してもね」とミセス・アランはからかった。

434文字)

 

 

 

⦿村岡花子訳:非常にすぐれた訳と思う、ただ少しだけ違和感も。

 

「たのしく、おすごしなさいね、アン。 この一年、一生懸命にはげんだ甲斐があったのよ。大成功だったのね」

「あら、そうでもありませんわ。思うようにならないことばかり、たくさんあったのですもの。 去年の秋、おしえはじめるとき、しようと思ったことを果たさなかったし―――あたしの理想を実現しなかったわけですよ」

 

「わたしたちはだれでもみんなそうですよ」アラン夫人は吐息をもらした。 「でもね、アン、詩人のローウェルがこう言っているではありませんか。 『失敗がわるいのではない。目標の低さこそは罪悪だ』とね。 わたしたちは、理想をもち、たとえ成功しないとしても、それを実現するために、努力しなくてはいけないのよ。 理想がなかったら、人生はみじめなものですよ。 理想があればこそ人生も偉大なものになるのですからからね。 自分の理想をしっかりもっていることですよ、アン」

 

「ええ、やってみますわ。 でもあたし、自分の理論は大部分捨ててしまいましたわ」アンは低く笑った。 「あたしが学校の先生として出発した時には、これ以上すばらしい理論はないと思われるほどにりっぱなものをもっていたんです。 けれども、なにかしら、せっぱつまるたびに、それがみんな、だめになってしまいました

 

「体罰の理論でさえもね」とアラン夫人はからかった。

541文字)

 

 

 

○松本侑子訳:十六歳の新人教師としては、 何かちょっと違う気がする。『失敗は罪ではない、低い志こそ罪である』は訳者の優しい性格が現われている?

 

「ぜひとも楽しくおすごしなさい。 この一年、よく働いて成果をあげたんですから」

「そうでしょうか。いろんなことが思ったとおりにいきませんでした。去年の秋、教師になったときにしようと思ったことが、まだできていません・・・・それに理想も果たしていないんです

 

「誰だろうと理想どおりにはいかないものですよ」アラン夫人はため息をついた。 「でもね、ローウェルも言っているわ、『失敗は罪ではない、低い志こそ罪である』と。 私たちは理想をかかげ、それを果たすように努力しなければならないの、たとえ一度もうまくいかなくても。 理想のない人生は、虚しい営みでしかないわ。 理想があるからこそ、人生は偉大ですばらしいものになる。 アン、あなたの理論をしっかり持ってね

 

「はい、そうします。 でも、私の教育理論はほとんど捨ててしまいました」アンは小さく笑った。 「教師になったときは華々しいくらい立派な理論を一そろい持っていたんです。 でも、あれこれ問題がおきてみると、どの理論も役にたたなかったんです

 

「体罰の理論も、役にたたなかったものね」アラン夫人はからかった。

464文字)

 

 

        【今日の塗り絵】フェルメール 『地理学者』

 

 [使用書籍]

1. Anne of Avonlea ペーパーバック – 2024/3/25

英語版  Lucy Maud Montgomery (著)

 

2.アンの青春 赤毛のアン・シリーズ 2 (新潮文庫) 文庫 – 2008/2/26

ルーシー・モード・モンゴメリ (著), Lucy Maud Montgomery (原名), 村岡 花子 (翻訳)

 

3.アンの青春 (文春文庫 モ 4-2) 文庫 – 2019/9/3

L・M・モンゴメリ (著), 松本 侑子 (翻訳)

 

4.アンの青春 (角川文庫) 文庫 – 2008/4/25

モンゴメリ (著), 吉野 朔実 (イラスト), 中村 佐喜子 (翻訳)