『ノルウェイの森』 の 登場人物全員が ホールデン君わけても「直子」は・・・。

 

 

レイコさんは、主人公ワタナベ君の 話し方をさして言います。

 

 

「あなたって何かこう不思議なしゃべり方するわね」と彼女は言った。

 

「あの『ライ麦畑』の男の子の真似しているんじゃないわよね」

 

「まさか」と僕は言って笑った。

 

 

ただ、

 

ホールデン君の話し方なんて世界中、誰も知りませんけどね。

 

 

以下は、『ノルウェイの森』上巻 の最後のほうのページからの抜粋です。

 

主人公、直子、そしてレイコさんの三人で京都山奥の療養所の近くの山々に ハイキング に行き、主人公と直子の二人だけでの トレッキング のシーンです

 

ハイキングトレッキング は同じかな?) 

 

 

 

本文:

 

僕も立ち上がって直子のあとを追った。犬が目を覚ましてしばらく我々のあとについてきたが、そのうちに諦めてもとの場所に戻っていった。我々は牧場の柵に沿った平坦な道をのんびりと歩いた。ときどき直子は僕の手を握ったり、腕を組んだりした。

 

「こんな風にしていると、なんだか昔みたいじゃない?」

と直子は言った。

 

「あれは昔じゃないよ。今年の春だぜ」と僕は笑って言った。 「今年春までそうしてたんだ。あれが昔だったら十年前は古代史になっちゃうよ」

 

「古代史みたいなものよ」と直子は言った。「でも昨日はごめんなさい。何だか神経が昂っちゃって。せっかくあなたが来てくれたのに、悪かったわ」

 

「かまわないよ。たぶんいろいろな感情をもっと外に出した方がいいと思うんだけどね、君も僕も。だからもし誰かにそういう感情をぶっけたいんなら、僕にぶっければいい。そうすればもっとお互いを理解できる」

「私を理解して、それでどうなるの?」

 

「ねえ、君はわかっていない」と僕は言った。

 

「どうなるかといった問題ではないんだよ、これは、世の中には時刻表を調べるのが好きで一日中時刻表読んでいる人がいる。あるいは、マッチ棒をつなぎあわせて長さ1メートルの船を作ろうとする人だっている。だから世の中に君のことを理解しようとする人間が一人くらいいたっておかしくないだろう?」

 

「趣味のようなものなのかしら?」と直子はおかしそうに言った。

 

「趣味と言えばいえなくもないね。 一般的に頭のまともな人はそういうのを好意とか愛情とかいう名前で呼ぶけど、君が趣味って呼びたいんならそう呼べばいい」

 

「ねえ、ワタナベ君」と直子が言った。 「あなたキズキ君のことも好きだったんでしょう?」

 

「もちろん」と僕は答えた。

「レイコさんはどう?」

「あの人も大好きだよ。いい人だね」

「ねえ、どうしてあなたそういう人たちばかり好きになるの?」と直子は言った。 

 

「私たちみんなどこかねじまがって、よじれて、うまく泳げなくて、どんどん沈んでいく人間なのよ。私もキズキ君もレイコさんも。みんなそうよ。どうしてもっとまともな人を好きにならないの?」

 

「それは僕にはそうは思えないからだよ」僕は少し考えてからそう答えた。 [日常で、I don't think so. と言えるのは大切なことです。これが結構言えないんですよね]

 

「君やキズキやレイコさんがねじまがっているとは、どうしても思えないんだ。ねじまがっていると僕が感じる連中はみんな元気に外を歩きまわっているよ

 

「でも私たちねじまがっているの。私にはわかるの」と直子は言った」

 

 

※:この部分は、『キャッチャー:ライ麦畑』のホールデン君に対して感じることと相似・・・・かもしれません。 ただ、ホールデン・コールフィールドが躁鬱症状なの対して、直子本人だけに関していえば鬱症状なのですが、たぶん。

 

 

 

我々はしばらく無言で歩いた。道は牧場の柵を離れ、小さな湖のようにまわりを林に囲まれた丸い形の草原に出た。

「ときどき夜中に目が覚めて、たまらなく怖くなるの」と直子は僕の腕に体を寄せながら言った。

 

「こんな風にねじ曲がったまま二度と戻れないと、このままここで年をとって朽ち果てていくんじゃないかないかって。そう思うと、体の芯まで凍りついたようになっちゃうの。ひどいのよ。辛くて冷たくて」

 

 

僕は直子の肩に手をまわして抱き寄せた。

 

「まるでキズキ君が暗いところから手をのばして私を求めているような気がするの。 おいナオコ、俺たち離れられないんだぞって。そう言われると私、本当にどうしようもなくなっちゃうの」

 

「そういうときはどうするの?」

 

「ねえワタナベ君、変に思わないでね」

 

「思わないよ」と僕は言った。

 

「レイコさんに抱いてもらうの」と直子は言った。「レイコさんを起こして、彼女のベッドにもぐりこんで、抱きしめてもらうの。そして泣くのよ。彼女が私の体を撫でてくれるの。体の芯があたたまるまで。こういうのって変?」

 

「変じゃないよレイコさんのかわりに僕が抱きしめてあげたいと思うだけで」

 

「今、抱いて、ここで」と直子が言った。

 

 

*:一年前の今日、upload したブログです。

 

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ミシシッピって英語で書けますか?「カンガルー日和」のなかの『眠い』より。

 

使用書籍

ノルウェイの森 (講談社文庫ペーパーバック – 2004/9/15

村上 春樹 ()