河童橋に包丁を買いに行く。
初出勤はなんと朝の6時!
眠い目をこすり教会を改造したレストランミクニへ続く坂を登り北島亭に向かう。
こんなに早く来たのにすでに厨房では仕込みが始まっている。
折りパイを折るスタッフ、パンをこねるスタッフ。。。
……ここに来て初めてわかったこと…
僕は料理について何も知らないし、わかってなかったって事。。。。
与えられた仕事を言われた通りに誰よりも早く出来るという事だけで、実際目の前の雑事にも手を出すことは許されない世界…
何も出来ない…
それからの日々は…
ゴミ箱洗い!床の掃除!パセリのみじん切り!皿洗い!
一応それまでタイ料理屋ではシェフ待遇で働いていたのだが・・・・
雑用しか出来ない日々でさえ憧れの三ツ星クラスのレストランに入れた事は至福の喜びでした。
圧巻は、肉などオーダーが入るまで骨付きの塊!
オーダーが入ると北島シェフが井上!ノコギリ!!っとそこから骨をギコギコ切り始める!
美味しいものをお客様にお出しするためには妥協を許さない姿勢に驚く。
いや…毎日驚きの連続! でした。
パセリなんかも昼切った分は夜のサービスには使わず、ミルポアにまわす。
ラップはなくバターの銀紙を再使用。
ビニール袋も洗い再利用。
全ての無駄を省きお客様とスタッフに還元するための努力は惜しまない。
そして…昼も夜のサービスの間ストーブ前を一人でこなす。
その上毎朝6時には築地に仕入れ…
料理…いや仕事に対する姿勢にこれほどの差があるとは…
初めからわかっていたかもしれないけど…認めたくなかった事実。
唯一まかしてもらえていた仕事はポトフでした。
丁寧に灰汁をとることだけがコツでした。
一度だけ僕にシェフが言ったコトバが今でも僕の胸に突き刺さっています。
グローブみたいな手とくしゃくしゃな顔でニコニコしながら 僕に向かって一言。
おい!井上!
料理はな…愛情だよ!
そう言って楽しそうに灰汁を取る北島シェフの背中を忘れません…
いろんな都合があり他の店に移り、その後福岡へ戻り和食店での修業をへてCOONELをオープン。
…十数年後
奥さんと2人で北島亭二十周年のお祝いにレストランに駆けつけました。
懐かしいレストランの入り口をくぐると…
変わらず満面の笑顔で僕ら二人の肩を抱き、大歓迎してくれました。
少し…小さくなって白髪が混じってて・・・十数年の月日を感じた夜でした。。。
40年の人生の中で彼との出会いは「宝」です!!
ありがとうございます。
北島シェフ。





