カジノ収入に賭けるシンガポール 社会悪のまん延を警戒
カジノ収入に賭けるシンガポール 社会悪のまん延を警戒
シンガポールは2年前、大胆な賭けに出て同国最初のカジノをオープンした。他のカジノ都市を苦しめている組織的犯罪やギャンブル中毒といった社会悪を引きつけることなく、景気を押し上げる可能性に賭けたのだった。
ラスベガスのカジノリゾート運営会社ラスベガス・サンズ
LVS+0.81%が開発したマリーナベイ・サンズと、ゲンティングループの統合型リゾート、リゾート・ワールド・セントーサというシンガポールの新たな2つのカジノは今日、素晴らしい業績を収め、2011年のギャンブル収入総額は約60億米ドル(約4700億円)となった。ただ社会的には懸念も生じており、世界の景気低迷と競争激化で同国の始まったばかりのカジノ産業の成長が脅かされるなか、同国当局にはギャンブルのもたらす弊害を抑制するために一段の政策が求められている。
懸念された組織犯罪の拡大は実際には発生せず、シンガポールにおけるギャンブル産業は全体として縮小していることは事実だ。しかし、政府当局者たちは低所得者層が賭けにますます多くの資金をつぎ込んだり、ギャンブラーの賭けの頻度が増していて、さらにギャンブルをめぐるトラブルに関してカウンセリングを求める人々が増加しているという調査を受けて、懸念を深めている。また、ギャンブル中毒になり、資金繰りのために犯罪に走る人々を取り上げた地元のメディア報道も、住民に警鐘を鳴らしている。
こうした状況を背景に、政府はギャンブルへの参加料を引き上げた。当局は先ごろ、破産を申請したり政府給付に頼っている住民がカジノに行くことを禁じるプログラムを拡大し、現在では約4万3000人がカジノへの立ち入りを禁じられている。
シンガポール政府は7月に、同国のカジノ管理法を順守しないカジノ運営会社に対する罰金をギャンブル収入の最大10%に引き上げることなど大幅引き上げを提案した。これが実現すれば罰金は数億ドルにのぼる可能性もある。同法ではカジノに行く国民に対し1日当たり100シンガポールドル(約6400円)もしくは年間2000シンガポールドルの課税に加え、カジノでのクレジットの取得に対する制限が盛り込まれている。さらに、一部の地元ギャンブラーたちのカジノへ行く頻度を制限するといった一段の措置も検討されている。
同国は既にカジノに関してアジアで最も厳格なルールをいくつか採用している。地元住民をターゲットとするカジノ広告を禁じたり、ジャンケットオペレーター(多額をつぎこむギャンブラーを呼び込み、クレジットを発行し、債務の取り立てを行うことでコミッションを稼ぐ仲介人)への規制などだ。ギャンブル収入が世界最大のマカオではジャンケットオペレーターは要となっているが、組織犯罪と関係していることが多く、これまでのところシンガポールでは一般的に活動が阻止されてきた。
同国のこうした取り組みの結果には世界が注目している。日本の一部議員は、米カジノ運営大手ラスベガス・サンズのシェルドン・アデルソン最高経営責任者(CEO)からの働きかけてを受け、日本経済の復活に役立てるためにカジノの合法化を求めている。マイアミなどの米国の都市と同様に、台湾やモンゴルでもカジノ解禁が検討されている。日本のパチンコ王、岡田和生氏をはじめとする富裕なカジノ支持者たちは、フィリピンやベトナムなどですでにプロジェクトを進めており、他地域への拡大も考えられる。
同国で導入されたような政策がどの程度効果を発揮するか、あるいは、同国でのカジノ収入の伸びが鈍化するとともに他国での競争が始まるなかで、こうした規制が長期的に持続可能かどうかは引き続き不透明だ。
カナダのレスブリッジ大学の教授で、アルバータ・ギャンブリング・リサーチ・インスティチュートの研究者、ロバート・ウィリアムズ氏は、「シンガポールの規制政策は原則としては良いアプローチだが、実情を見る限り、こうした規制の効果は比較的小さいことが示唆されている」と語った。ただ、見方はまちまちで、こうしたルールの導入が問題回避に役立っていると指摘する向きもいる。
カジノ側は、市民や永住者によるカジノ訪問――全体の約20~30%とみられている――は2011年には前年比で減少したと指摘している。ギャンプル依存症対策評議会(NCPG)が2月に公表した調査によると、競馬やスポーツに関する賭け、宝くじを含むギャンブル全てについて18歳以上の地元住民の割合は11年には47%と、08年の54%から低下した。
一方、警察当局のデータによると、シンガポールの犯罪率は昨年、一昨年の水準から5.3%低下し、20年ぶりの低水準となった。一方、カジノ関連の犯罪(窃盗や不正行為、偽造といったケースがほとんど)率は、10年も11年も全犯罪の2%未満で横ばいだった。
しかし、NCPGの最新調査では、低所得者層がますます多くのお金を賭け、頻繁にギャンブルする人々のギャンブル頻度がさらに増していることが明らかになった。
カウンセリングセンターの統計によると、ギャンブルがらみで助けを求める人が増えている。そうしたセンターの1つによると、2011年3月までの1年で、こうしたケースが398件報告された。これは2008年度より88件増えた。別のセンターでは11年には前年比132件増加した。増加件数は10年には105件、09年には86件だった。
測定することは難しいが、広い意味でのカジノの社会的な影響として富をひけらかす風潮が広がっている。その一方、低所得の労働者の賃金引き上げは実現できていないでいる。
政府はカジノが2万2000人を雇用しており、一部が海外に流れているが、国民の懐を豊かにしていると強調する。
シンガポールの規制強化にカジノ運営会社からの不満はそれほど強くない。ラスベガス・サンズのアデルソン氏は7月、シンガポール政府の動きを懸念しておらず、事業への影響も大きくないと語った。
他のアジアの国々のカジノとの競争が激化するなか、同国のカジノ市場の成長は向こう2、3年、減速し、一けた台後半の拡大を続けるとみられている。
同国は法律で2017年まで新たなカジノを作れないことになっている。市場の成長鈍化への対応のために、同国がマカオのようなカジノを仕切るジャンケット・オペレーターを増やすことはないとする見方が大勢だが、そうせざるを得なくなるのではないかとの見方も一部に出ている。
【2012年9月7日 The Wallstreet Journal】
日本金銭機械、カジノの賭け金管理効率化システム
日本金銭機械、カジノの賭け金管理効率化システム
金銭処理機大手の日本金銭機械はカジノ向けに、ゲームの賭け金の管理を効率化するシステムを開発した。同社の貨幣識別機と組み合わせ、賭け金とチップの受け渡し時間を短くする。従業員による賭け金の横領も防ぐ。年内にも売り出し、カジノの新増設が相次ぐアジアで2015年度までに15億円の売り上げを目指す。
カードの配り手であるディーラーが客から受け取った賭け金を貨幣識別機に入れる仕組み。手作業で数える現在の方法と比べてスピードが速く、顧客の待ち時間を短くできる。偽札の有無も細かくチェックできる。ディーラーは賭け金と引き換えにICタグが埋め込まれたチップを渡し、各テーブルのアンテナを通じて集計して賭け金と照合する。
アジアを中心にカジノの人気が高まっており、マカオの11年のカジノ売上高は前年比42%増の約2兆6000億円だった。シンガポールや韓国などでもカジノの新設が相次いでいる。
【2012年9月6日 日本経済新聞】
マカオ最大手SJM社、台湾でのカジノ進出に意欲
台湾では今年、住民投票による賛成多数でカジノの解禁が現実化してきました。
SJMとしては初の海外進出を狙っています。
SJM幹部が訪台、カジノ解禁にらむ
3日付星島日報によると、マカオのカジノ最大手でスタンレー・ホー氏系の澳門博彩(SJM)の幹部が最近、カジノ解禁の機運が高まる台湾を頻繁に訪れている。蘇樹輝(アンブローズ・ソー)最高経営責任者(CEO)ら幹部は先ごろ、台湾の王金平立法院長(国会議長)と会ったとされ、台湾進出への意欲を表明した可能性が指摘されている。
マカオのカジノ市場は全体としてパイが拡大しているものの、大型カジノリゾートの新規開業が相次ぎ、競争が激化している。このため、SJMは「脱マカオ」の検討を開始しているとみられる。同社が新規市場として有望視しているのが台湾で、王院長との会談も、台湾でカジノが解禁された場合、真っ先に進出するための布石と受け止められている。消息筋によれば、蘇CEOは半年前に金門島で地元首長とも会談したという。
台湾では今年7月、離島の馬祖列島(連江県)でカジノ事業解禁の是非を問う住民投票が行われ、賛成多数で可決された。これにより、台湾で初となるカジノ開設が実現する可能性が出てきた。また、澎湖諸島(澎湖県)でも2009年9月に同様の住民投票が行われ、反対多数で否決されたが、同県でも今年9月以降に住民投票の再実施が可能となっている。
【2012年9月4日 NNA.ASIA】