IMM THEATERで上演された、鈴木保奈美主演・冨坂友脚本・演出『汗が目に入っただけ』

を観てきました。

 

MY初日が東京公演千秋楽だったんですが、

世界唯一の、演劇スポーツ?エクストリーム・シチュエーションコメディ(Kcal)で、

 

死んで霊になった母親と、残された家族の通夜直前の悲喜こもごもを描いたお葬式コメディ…なんですが、

 

同時に、エクストリーム・シチュエーションコメディ(Kcal)として、

俳優が赤チームと青チームに分かれ、腕に活動量計のバンドを巻いて、

シチュエーションコメディを演じながらカロリー消費量を競い、

そのカロリーの消費量で勝敗を決めます。

 

はい、意味がわかりませんね。

 

実は私は、脚本・演出の冨坂友さんが主宰するアガリスクエンターテイメントという劇団が2019年に「1つの部屋のいくつかの生活」という企画の中で上演した『エクストリーム・シチュエーションコメディ(Kcal)』を観ています。

 

その時も、「アタマおかしい…」と思いましたが、

やはり今回も、

 

「狂ってる…」と思いました(笑)

 

ただ、こんなことを思いついて実現してしまうのも、アガリスクエンターテイメントだけでしょうし、

もともとアガリスクエンターテイメントはコメディ劇団ですが、過去にはシチュエーションコメディそのものの構造を疑ってかかったりと、

新しい試みや挑戦を続けていて、今回もその蓄積の上に成立しているとも。

 

さらにいろいろなバックボーンの俳優さんたちを巻き込んだ今回の舞台、

前半の「お葬式コメディ」は、まあ、オーソドックスな展開なんですが、

 

後半に入ると、観客は

「一体何を見せられているんだ…」となると思います。

 

お堅い演劇評論家の方は眉をひそめるかもしれませんが、あまり難しく考えずに特殊な体験をする気持で観に行けばよいかと。

 

ともかく、俳優さん達がすごいです!

 

後半は、舞台上も客席もボルテージが上がり、

私も、終わってみたら日常生活でつもり積もったあれこれがデトックスされた感じになりました。

また、ほろりとさせるところがあるのもニクイです。

 

広島、大阪、富山、山形をめぐるツアーが始まっていますが、以下はネタバレを含む感想ですので、未見の方は自己判断のもと、お読みください!

 

 

 

 

 

 

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2026年4月19日(日)13時

IMM THEATER

脚本・演出 冨坂友

出演 鈴木保奈美 足立梨花 小越勇輝 西野創人 蘭寿とむ 田中要次 前田友里子 斉藤コータ 榎並夕起 津和野諒 古谷蓮 中田顕史郎 伊藤圭太 淺越岳人 鹿島ゆきこ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

闘病生活を続けていた母親(鈴木保奈美)が亡くなり、通夜まであと3時間というところで、共同で喪主を務める3人の子ども達が、葬儀の方法をめぐってもめ始めます。

 

長女(足立梨花)は、自分に一任すると言うからキリスト教式の葬儀を準備してきたし、母親も生前それを望んでいたと主張。

 

一方、長男(西野創人)は、お寺との付き合いもあり、仏教式で普通にやるべきだと言う。

 

次男(小越勇輝)は仕事上のトラブルを抱えているらしく、それどころではなく…

 

母親は、今は霊魂になっていて、ハラハラしながらその様子を見ています。

 

母としては子ども達それぞれの気持ちもわかるし、そもそも自分自身はこれといって葬儀の方法にこだわりはない。

言葉をかけたいけれど自分の姿は子ども達には見えないし声も聞こえない。

 

そんな時、ライフなんとか、(だったかな?)というところから訪問販売員の尾田(蘭寿とむ)が訪ねてきますが、

尾田にはいわゆる霊感があるらしく、母親の姿が見えている。

 

始まる前、私はこの尾田が葬儀社の関係者で、子ども達に巻き込まれて右往左往、というのを想像してたんですが、実は葬儀社の社員などではなく、壺などを売りつける霊感商法の販売員がたまたま訪ねてきたと。

 

母親は尾田の能力を使って子ども達のもめ事を解決しようとして、尾田に葬儀の担当者と偽って協力してほしいと頼みます。

(協力しないと憑りつくと脅しつつ)

 

そして母親の妹(前田友里子)、お寺の若住職(古谷蓮)、本物の葬儀担当者(津和野諒)、母親が通っていたワインのレストランのオーナー(中田顕史郎)、生前の担当訪問看護師(榎並夕起)

はては元夫(田中要次)までがやってきて音楽葬にしようと言い出したり、

 

嘘やごまかし、勘違いなども相まって、どちらの式にするか混迷を極め…

 

と、1時間経ったところで突然ホイッスルが鳴り、審判員(鹿島ゆきこ)が登場し、ハーフタイムを宣言。

 

さらに、舞台の上の方にはカロリー消費量と順位を示すスクリーンが現れ(リアルタイムで更新される)

その横には、実況担当アナウンサー(伊藤圭太)と、解説者(淺越岳人)が。

 

ここからは、実況と解説を交え、本筋のコメディを続けて演じながらいかにカロリー消費量を稼ぐかの勝負になっていきます。

 

急にオーバーアクションになったり、やたら歩き回ったり飛んだり跳ねたりする俳優達…

 

審判はその動きを見ていて、やりすぎだったり、本筋からはずれた動きには、イエローカードやレッドカードを出す。

 

これはあれですか?

芝居全体を考えず、独りよがりな演技をすることへのアンチテーゼや戒めの意味もある⁇

 

それはともかく、

俳優さん達の動きが可笑しくて目を奪われるし、でも本筋も追いたいしでこちらの頭の中もカオスに

 

終盤、母親がレッドカードをくらい、退場処分になってしまいます。

そして、母親の代わりを若住職が「母」と書かれた帽子をかぶって代役を務めたり(アガリスクエンターテイメント、こういうのやってましたよね)

この辺から空気感を変えるところもさすがの作劇。

 

そのうち、みんなリストバンドを外して

「カロリーなんてどうでもいい!俺たちは芝居をするんだ!」と叫び、

 

「演劇にカロリー消費は必要ではないという新境地が示されましたね!」

みたいな実況?解説?どっちだったかな?が入って、謎の感動を呼ぶシーンみたいになってました。

 

なんなんだ…

 

展開はバタバタでしたが、母親は子ども達の本当の気持ちを知ることができて。

そして、尾田には母親の姿が見えていることをみんなが分かった時点で、

 

母親が、尾田に自分の気持ちを代弁してもらうんですが、

母として、子ども達ひとりひとりにかける言葉の温かさに、じ~んときました。

 

親子って、家族って、考えていることや感じていることを言葉にしなかったり、できなかったりしますもんね。

 

一応、母親としての気持ちを伝えることができて、成仏できそう、というエンドなので、カタルシスもありました。

 

また、お葬式を扱ったコメディでも湿っぽくならなかったのは、

母親が、闘病生活の中でも自分らしく生き抜いた、という台詞があったり、

直接の死因が団子を喉につまらせたためだったり…

 

前半は、観客の笑いの反応が少なめな感じがしましたが、後半は劇場中が大笑い。

 

母親を演じた鈴木保奈美さん。

優柔不断な態度でしたがそれも3人の子ども達それぞれの想いを尊重したいからという母親の優しさが感じられましたし、右往左往する様が可愛らしかったです。

もうすっかりコメディエンヌですね?

 

今回のキーになる訪問販売員の尾田を演じた蘭寿とむさん。

うっかり巻き込まれて戸惑う様子や、必死にとりなす姿がとても面白かった。

最後、母親の想いを代弁するところの声音がとても優しくて、胸に迫るものがありました。

 

そうそう、私、最近宝塚を観るようになって(アガリスクエンターテイメントと同じ千葉県出身のトップスターさん推しお月様

タカラジェンヌって、アスリートだわ!と思っていたので、後半の蘭寿さんはまさにアスリートでした。

 

それにしても、冨坂さん作の作品って、元宝塚トップスターさんとのご縁がありますね。

テレビドラマ『人事の人見』には珠城りょうさんも出演していましたし、

 

舞台では、『SHINE SHOW』で朝夏まなとさんに音痴の役をやらせたり、

元トップ娘役の花乃まりあさんにこじらせ系元アイドルの役をやらせたり、

今回も蘭寿さんにかなりムチャなことをさせたり、と、

 

タカラジェンヌさんの輝きを知った今では、元トップスターさん達になんてことを…

なんか、すみません…という気持ちです。。。

 

長男を演じた西野創人さん、面白さの他に、親の離婚で傷ついていた心情がよく伝わってきましたし、

長女を演じた足立梨花さん、母親のためと言いながら自分のエゴもあるところが面白かった。

それを冷静に指摘した夫役の斎藤コータさんもよかった。

 

次男を演じた小越勇輝さん、キレのよい動きと、繊細な心情表現がよかったです。

 

元夫を演じた田中要次さん、妻の気持ちを最後まで理解できていない独りよがりなところがよく出ていて、そういうところ!と指摘したくなりました。

 

アガリスクエンターテイメントのメンバーは相変わらずコメディの演技に長けていて安心して観れました。

 

妹の前田友里子さん、こういう人いるよねえと思わせるし、動きがかなり激しい。

訪問看護師の榎並夕起さん、すかさずヒロインっぽい動きをするところがあざとい。

レフェリーの鹿島ゆきこさんの一人冷静なトーンがむしろ面白いし、

 

実況の伊藤圭太さん、解説の淺越岳人さん、本物のアナウンサーや解説者みたいなリアルさがまた可笑しい。

本物の葬儀社の担当者の津和野諒さん、いろいろ巻き込まれてほんとご苦労さまです、と労いたくなる。

 

若住職の古谷蓮さん、前半はすでにオーバーアクトでは?と思いましたが母親の代役のシーンよかったです。

レストランのオーナーの中田顕史郎さん、相変わらずのマイペースが可笑しかった。

 

そしてこんな狂気あふれる脚本を書き、実際の舞台に仕上げる冨坂友さんがもはや恐ろしい。

 

そんなこんなの2時間でしたが、そもそも生前、この母親が葬儀の希望を示していればよかったわけで、私もエンディングノート書かなきゃなあ、と思いました。

 

この演目、かなり体力を使いますし、激しい動きがあるので、どうか、みなさま、お怪我などされないよう、千秋楽まで駆け抜けてほしいと思います。