劇団チョコレートケーキ『遺産』感想 | ぽけっとにチケット~おきらく観劇日記~

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あっという間に今年もあとわずかとなってしまいました。

相変わらず感想を書けていなくて、もうブログをやめようかな、と何度も思ったりしているんですが、過去記事へのアクセスがかなりあり、読んでくださる方もいるので、備忘録として書きとめておくだけでもいいのかな、と思い直したりしています。

 

そんなわけで、まずは11月にすみだパークスタジオ倉で上演された、古川健脚本・日澤雄介演出・劇団チョコレートケーキ『遺産』の感想から書きたいと思います。(ネタバレしています)

 

 

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2018年11月11日(土)14時

すみだパークスタジオ倉

脚本・古川健

演出・日澤雄介

 

出演・浅井伸治 岡本篤 西尾友樹 佐藤弘幸 足立英 日比野線 渡邉りょう  原口健太郎 林竜三 李 丹

 

 

 

死の床にある老医師に蘇る、1945年の満州の関東軍防疫給水部、いわゆる「731部隊」の記憶。

9月に上演された『ドキュメンタリー』ともゆるやかにつながりながら、老医師が命を終えようとしている1990年の場面とが交互に展開しました。

 

まず思ったのが、脚本、構成、演技ともに完成度が高いなあ、ということ。美術もシンプルながら、床にはビーカーがいくつも置いてあり、これから起こることへの予感と恐怖を示唆するものでした。

 

突然拘束されて731部隊に連行された中国人女性。子供が待つ家に帰してほしいと懇願するその女性に行われた数々の「人体実験」。

目の前で行われる“それ”は、まるで本当に自分がそこにいるように迫ってきて、そのリアルさは、まさに劇団チョコレートケーキならでは。

 

戦争という大義と、医学者としての科学的探究心の前に、731部隊に関わった彼らは人間としての倫理を失っていたのか?

731部隊で働いていた少年兵の目を通して、女性が「実験材料」ではなく生きた「人間」であることを描き、

死の間際の老医師の枕元に立つ中国人女性の、「もう一度殺さないで」という言葉を受けて、あの場所で行われたことを後世に伝えようとする老医師を描き、

それを知らされた医師の驚愕を描いていたこの物語は、

 

贖罪か、告発か、警告か、と、間近で観る私は、自分に問いかけざるを得ませんでした。

 

『ドキュメンタリー』に出てきた血液製剤を扱う会社、グリーン製薬でともに働いたことがあり、老医師の最後を看取ることになった西尾友樹さん演じる若い医師は、老医師の残した書類から、あの場所で何が行われていたかをすべて知ることになりますが、

 

そこに、かつての731部隊の幹部で、現在のグリーン製薬の会社幹部が、その書類を渡すようにと迫ります。

『ドキュメンタリー』で描かれた、グリーン製薬の告発はなされなかったこともわかりました。

グリーン製薬側から脅しを受けながら、はたして若い医師がとった行動は・・・?

 

この作品を観た方の感想では、あんな事実があったことが本当に恐ろしい、というものが多かったんですが、私、『ドキュメンタリー』の感想を書いていたある方のブログを読んで、ハッとしたことがあって、

私自身、割と無防備に信じやすいタイプなんですが、ノンフィクションだと思っていたものが実はフィクションだった、と後から作者が認めたのを知って驚いたりしたことを思い出しました。

 

作者の古川健さんが言っているように、これはあくまでもフィクションなんですが、あまりにも真実味にあふれているので、ある種の痛みとともに観客の胸には事実として刻み込まれてしまうのではないか、とちょっと危惧を覚えたりもしました。

ただ、そこまでの力をこの作品がもっているのだとも言えるのでしょう。

 

あと、この作品で、日本の医療の闇に切り込む、という予告(?)がなされていたように受け取っていたのですが、結局のところ、731部隊のいろいろな遺産が今に連なっている、という指摘に終わっていたように私には思えて、今ひとつ掘り下げられてはいなかった気がして、そこは少し残念でした。

 

けれども、『ドキュメンタリー』の時とは全く違う役柄を演じた西尾友樹さんと浅井伸治さんの、俳優としての底力を感じましたし、複雑な感情に揺れる老医師を演じた岡本篤さんもよかったです。

中国人女性を演じた李 丹さんの、赤い服の鮮烈さと悲しみが今も心に残っているし、その他の方々の演技もとても手堅いものでした。

 

今を生きる私たちは、過去の歴史の正の遺産、負の遺産によって生きているという現実を思い知らされながらも、すべてを知った若い医師が、強迫にもめげずに、老医師の遺志を継いで、過去の事実を伝えていこうとするところは、やはり救いを感じましたし、

非道な目にあった中国人女性が、最後に柔らかく踊る、そのラストは観客の胸に様々な想いを抱かせてくれて、そこがまた劇団チョコレートの魅力だなあ、と思ったのでした。

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