メシアン唯一の音楽技法書『音楽言語の技法』と『アッシジの聖フランチェスコ』の新譜 | cookieの雑記帳

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興味を持ったことなどを徒然なるままに書き留めていきます。半分は備忘録。音楽(classicからpopsまでなんでも)、美術(絵画、漫画、現代美術なんでも)、文学(主に近現代)、映画(洋画も邦画も)、旅や地理・歴史(戦国以外)も好き。「趣味趣味な人生」がモットーです。

20世紀フランスの作曲家オリヴィエ・メシアンに関する今年最大の話題は、多くの学習者やファンが待ち望んでいた、国内では絶版になって久しい著作『わが音楽語法』が、64年ぶりに新訳で刊行されたことでしょう。

原著は1944年に、まだ36歳(!)だったメシアンが、自身の音楽技法について、自作の譜例を用いながら詳細に語った著作「Technique de mon Langage Musical」で、多くの後進たちが作曲技法のバイブルのひとつとして参考にしてきた名著です。

日本では1954年に作曲家の平尾貴四男さんが『わが音楽語法』のタイトルで邦訳されましたが、かなり前から絶版で古書価も高く、簡単には読めない状態が続いていました。

今回邦訳の許可が出たことで、細野孝興さんが新たに訳し、ヤマハミュージックメディアからタイトルを『音楽言語の技法』と変えての刊行となりました。A4サイズの大きめなソフトカバーの書籍です。厚みはさほどありません。
本書はあの独特なメシアン節の解説書であり、一般的な作曲技法やオーケストレーションなどについて書かれているわけではありません。メシアンの代名詞ともいえる「不可逆リズム」や「移調の限られた旋法(本書では移高が限られた旋法と訳出されています)」などについて、豊富な譜例とともに詳細に語られています。メシアン好きにはたまらない一冊です。
ただし、この本が出版されたのは1944年なので、まだ『トゥーランガリラ交響曲』や『ハラウィ』『5つのルシャン』などが発表される前であるため、初期のメシアン作品における技法ということになります。もちろんその後の作品群もこれらの技法がベースになっているわけで、まずは押さえておくべき内容なのだと思います。
巻末に付いている作品表も出版当時のものを採用しているため、中期以降の作品は掲載されていません。
ともあれ新刊でこの本が読める時が来るとは思わなかったので、嬉しいですね。

そんなメシアンの晩年の大作『アッシジの聖フランチェスコ』全曲の日本初演がちょうど1年前にあったのは記憶に新しいところですが、その時の録音が早くもリリースされました。

メシアン作品のスペシャリストの1人であり、この歌劇をもっとも多く指揮しているシルヴァン・カンブルランさんと読響の総決算ともいえる(常任指揮者として最後の公演となる「グレの歌」が来年春に控えていますが)、日本の音楽史に残る歴史的なライブの記録です。
当日の、あのワクワクする演奏を追体験できます。


『アッシジの聖フランチェスコ』の録音に関しては以前のブログにまとめてありますのでご参考まで。
現在、このディスク以外に国内盤はなく(輸入盤もDVDはありますが、CDはグラモフォンの全集のセット以外は入手難です)、対訳付きで4000円くらいで手に入りますので、迷うなら買いです。

『アッシジの聖フランチェスコ』を聴きながら『音楽言語の技法』を読むという、どっぷりメシアンな晩秋は如何でしょうか?