昨年没後40年、ベンジャミン・ブリテンの音楽を聴く | cookieの雑記帳

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興味を持ったことなどを徒然なるままに書き留めていきます。半分は備忘録。音楽(classicからpopsまでなんでも)、美術(絵画、漫画、現代美術なんでも)、文学(主に近現代)、映画(洋画も邦画も)、旅や地理・歴史(戦国以外)も好き。「趣味趣味な人生」がモットーです。

1913年生まれのイギリスの作曲家ベンジャミン・ブリテンは、国内のみならず、20世紀を代表する世界的なコンポーザーと言えるでしょう。
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小学校でも習う『青少年のための管弦楽入門』がとにかく有名ですが、ではその他は?と言われると、一般的には意外と作品は知られていないのが実情だと思われます。


昨年は没後40年の、いちおうメモリアルイヤーだったのですが、あまり盛り上がらなかった気がします(^_^;)

自分がなぜブリテンの音楽が好きなのか、上手く言葉では説明しにくいのですが、何と言うのでしょうか、静かな?、いや、乾いた抒情性?
多くの作品において、メッセージは声高になりすぎず、常に抑えが効いており、内なる思いが感じられます。
ギトギト感は無いですよね。
このあたりに共感するのかもしれません。

声楽作品が占める割合が高く、声好きの自分に合っているのと、管弦楽伴奏の作品なども、声に寄り添う音楽とでもいいましょうか、決して声を邪魔をしない響き。

ショスタコーヴィチやメシアン、バーンスタインなどと比較的近い世代ですが、無論いずれとも音楽のスタイルは違います(ショスタコーヴィチの体制寄りでない音楽には共通項がありそうですが)。

ブリテンはイギリスを代表するオペラ作曲家でもあり、『ピーター・グライムス』は今でも頻繁に上演されています。
『ねじの回転』『アルバート・ヘリング』『ルクレツィアの凌辱』といった、響きに透明感のある室内オペラや、教会三部作と言われる『カーリュー・リヴァー』『放蕩息子』『燃える炉』の抑制された表現など、聴きどころ満載なのですが、やはり好みはあるでしょう。


万人が、いいな、と思う作品ではないのも事実だと思います。

協奏曲を含む純粋な管弦楽曲はそれほど多くなく、オーケストラコンサートのレパートリーが比較的少ないのも、日本でメジャーになれない要因かもしれません。とりあえず『シンプル・シンフォニー』は案外知られているでしょうか。

その他では、日本の皇紀2600年の委嘱作として書いた『シンフォニア・ダ・レクイエム』が、政府に拒否されたというエピソードと併せて有名かもしれません(でも曲そのものはあまり聴かれていないですよね、きっと)。


多くの作品の中でも、近年演奏回数が増えているのが、W.H.オーデンの詩を用いた『戦争レクイエム』ではないでしょうか。1時間半近くかかる大曲ですが録音も増え、少し前までは自作自演のディスクくらいしかなかったのが嘘のような状況です。


その他の独唱、合唱と管弦楽の作品では『春の交響曲』などは聴きやすいと思います。


それから、ブリテンの真骨頂である器楽伴奏付きの声楽曲、ホルンのソロが活躍する『セレナード』、『イリュミナシオン』『ノクチュルヌ』などはとにかく絶品です。





ブリテンを得意にしているボストリッジをラトル/ベルリンフィルがサポートしているCDは現代の定番と言えるでしょう。

合唱曲は名曲ぞろいで、『キャロルの祭典』などをはじめ、宗教曲が多いです。

無伴奏混声合唱曲『5つの花の歌』あたりは、イギリスの合唱作品の流れを汲んだ、とっつきやすい曲です。もっと取り上げられてもいいのにと思います。


歌曲も素晴らしく、多くの作品が盟友ピーター・ピアーズのために書かれました。歌曲集として纏められているものが多く、『ミケランジェロの7つのソネット』『子守歌のお守り』『冬の言葉』『ヘルダーリンの6つの断章』『詩人のこだま』『この子らは誰か』などなど。


聖書を題材にした5曲のカンティクルも聴きごたえがあります。


本人が一流のピアニストだったにもかかわらず、意外にピアノ曲は少なく、室内楽作品も決して多くはありません。
その中でもロストロポーヴィチのために書かれた3曲の『無伴奏チェロ組曲』が、チェリストのレパートリーとして定着した感があります。


実演では一部の曲を除いてなかなか聴くのが難しいのですが、幸い録音には恵まれていて(本人が積極的だったこともあり)、作品世界の全貌をつかむことは比較的容易です。
英デッカが自作自演を含むブリテン作品の録音を多数持っており、生誕100年の時に大きな箱入りの全集(作品番号の付いているもの全てと、その他もいろいろ)を出しています。
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その他にもパフォーマーとしてのブリテンの録音を集めたボックスもあります。
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EMIにもブリテン作品の録音がたくさんあり、過去のディスクを纏めたものが出ているのと、同様にBBCの持っている音源もディスク化されているものがたくさんあります。
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没後に発見され出版された作品や未出版の作品(習作などを含めると膨大な量です。詳しくはBritten-PearsFoundationのHPを参照)、劇伴などは録音がないものが多く、ぽつりぽつりと出てきたものを落穂ひろいしています。
どこかで系統的に録音するプロジェクトなどを立ち上げてくれないですかね。
ブリテンが主催していたオールドバラ音楽祭あたりで企画してくれると嬉しいですが。

ブリテンに関する書籍は最近まで日本語のものがありませんでしたが、数年前に↓が出版されました。
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90年代に出版された↓は、作品ごとのCDリリースの有無や、どのディスクに収録されているかなども掲載されており、たいへん重宝しますが、新しい情報を盛り込んだ新版が出版されると嬉しいですね。
今はネット検索で情報が色々と得られますが、意外に本に纏めてくれた方が見やすいんですよね。
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各作品ごとの詳細な分析は、英語で読めるものが出版されています。

作品リストはこちら

没後50年はもっと盛り上がるといいなと思います。