それから、すぐに私は実家を出て一人暮らし始めることに。
友達も誰も居ない街で自分を最初から作り直したかった。
現在はさすがに思い出を思い出として見ることが出来るが、
この頃は育った町の何を見ても、何かを思い出しては沈んでしまうようになり、
思い出を共有したせいで、友達にすら会いたくなくなった。
だから、場所を変えるしかなかったのだ。
仕事もちゃんとして、素敵な恋人が居て、
お洒落なワンルームマンションで暮らす自分を想像すると、
わくわくする![]()
今度こそ、愛される女になりたい。
行動力だけはある私。
そう決めた翌日には、
仕事で知り合った人の会社に就職させてもらえるようお願いして、
すぐに面接と部屋探しに向かう。
たった一日で仕事と部屋を決めた私は、翌週には引っ越した。
引っ越した夜。
電話もなくて、孤独な夜。
これからの人生を思うと、寂しくて不安で泣いた。
それでも頼る人は誰も居ない。
1人で何もかもしなくてはいけない。
それは本当に何もかも。
ガスは使用開始の手続きをしなくてはコンロに火が付かないなんて知らなかったし、
固定電話を付けることがこんなに面倒で大変だなんて思いもしなかった。
最低限のものだけを実家から運んだだけなので、
テレビや洗濯機や冷蔵庫なども買いに行かなくてはいけなかったけど、
一体、どこに買いに行けば良いのかもわからなかった。
PCが1人一台の時代ではなかったから、ネット検索なんてことも思い付かず、
電話を付ける時に行ったNTTでもらったタウンページが私の愛読書になっていた。
新しい仕事の合間にそんな生活するためのベースを整えて、
そんな生活にも慣れ始めた頃、私は生まれて初めての携帯電話を購入した。
その携帯電話に知らない番号からの着信があったのはある日曜日の昼間。
トシくんと連絡を取らなくなってから、ちょうど一年が経っていた。