永遠に 手をつないで

永遠に 手をつないで

私には20年以上も忘れられない人が居ました。
全ての出会いと再会といきさつと・・・
過去の記憶を綴ります

Amebaでブログを始めよう!

「もしもし」

聞き慣れた声。



「もしもし、瑠美ですけど・・・」



「え?」



「瑠美です。」



「ああ・・・」



「電話番号、変わってなかったんだね。」



「ああ、メールは変えたけど」



「電話番号が出て来たから、かけちゃっただけ。ごめん」



「ああ・・・」



「じゃあね。」



「ああ」




電話しなければ良かった。

縁を切ったのに電話をするのはおかしい。

少しも迷わずに電話した自分をもう一人の自分が驚愕の面持ちで見ていた・・・

そうだった。縁を切ったんだった。



私はショック?を受けているのだろうか?

わからない。

悲しみとか寂しさとかよくある辛い感情とは違ったけど、

この時は電話なんてしなければ良かったと死ぬほど後悔した。



そして、直後に

今のはなかったことにしよう。

という結論に達した。




なかったことなのだから、この事を誰にも話すまい。

だから、私はこの事を誰にも話していない。

ひと時の気の迷い。

寒すぎて、脳みそが凍りかけてたんだね、私。

なんて思いながら帰った。

かっちゃんに惚れた私は、

惚れたこと自体を思い出にして、帰国の旅を終えた。


普通の生活が戻って来たけど、

感情は凍ったまま。


今思えば、その頃はまだトシくんからの連絡を心のどこかで待っていたのだろう。


楽しそうに暮らしながら、どこかに拠り所を探して、

男の人からのメールには出来るだけ長い期間やり取り出来るように、

返信が必ず来るよう仕向けた返事をした。

どれもこれも空虚で、トシくんの代わりなど居るわけがないとわかっていたし、

だからといって、どうすれば良いのかわからない。


いつでも必ず居てくれる人が存在する状態で大人を過ごして来たのだ。


どうすれば良いのかわからない自分を当たり前だと笑う。


若いころの失恋とは違って、

「よーし!綺麗になって見返してやるー!」というわけにもいかない。


相変わらず、眠れない日々が続く。

トシくんが私の中で薄れていくのを待つしかないとわかってはいるけど、

薄れることがあるとはとても思えない。


出会わなかったことにしたのに鮮明に覚えている

[瑠美の愚痴ならいつでも俺が聞くから。俺はずっといつまでも瑠美の味方だから。]

トシくんがそう言ったのはたった2年前のことだったのに、

どうしてこんなことになったのだろう・・



ある夜、薬を飲んで眠ったはずが、眠りが浅く夢を見た。

かっちゃんの夢。

それは胸からあったかさが全身に広がっていくような心地よい夢。

それから、かっちゃんのことをよく考えるようになった。

かっちゃんのことを考えていると気持ちが良くて、

凍った感情が少し溶けて行く気がしたから、
それはとても気持ち良かった。

2件目のバーで、後輩くんと私はそこにあったボードゲームで遊び出した。

私はこのゲームが子供の頃から得意。


「私、強いよ~」


「僕も負けた事ないんです」


ゲームは私が優勢。


その間、かっちゃんは私達のゲームを見ているような

見ていないような・・遠い目・・・?気持ち悪いみたいガーン

たまに伏せてしまう。


もう帰らせてあげなくちゃな~とは思ったけど、

どうしてもゲームに勝ちたかった。


そして、あと一回、私の番で絶対に勝つ!という時に、


かっちゃんは急に


「どれどれ?」と私の番なのに私に不利な手を打った!


(そっか!しまった~)と、とても反省した。


頭の良いかっちゃんは私が勝つことがわかっていたのだ。

そして、自信を持っている後輩に男として負けさせるわけにもいかない。

でも、私が負ければ私の自信も損なわせてしまう。


どちらも負けないように、よくタイミングをはかっていて、邪魔をしたのだ。


私の番の時にそれをすれば、私が気付くと思ったに違いない。


「もうーーー!!!そんなことしたら負けるじゃない!!!!!

今の私がやったんじゃないもん。もうこのゲームは終わりにする!

かっちゃんのせいだからねぇ~」


私の声を聞きながら、かっちゃんはトイレに走り、


吐いた叫び



この時に私はかっちゃんに改めて惚れた。


誰にも嫌な思いをさせずに、さらっと悪戯のようにこなしたのに、

実は吐きそうで、必死でこらえていたんだって気付いたのはたぶん私だけ。


かっちゃんの本質は

本気で優しい。

男だからと威張ることも無い。

いつも低姿勢で優しい物腰。

なのに、男らしさに拘る。

そんな、本当の男らしさに、惚れた。



でも・・・惚れたけど、この時はまだ、

こんなにも好きになるとは思っていなかった。

かっちゃんがこの調子の良いおばさんをまだ女として見てくれるとは

思いもしなかったし。

帰国して、会う友達はたくさん居た。

中学を卒業以来、一度も会ってないような友達にも会ったし、

もちろん香奈にも会った。


そして、香奈を交えた3人でかっちゃんとも会った。

いつもの焼き鳥屋さんで。

普通に飲んで食べて。

2件目のバーで飲んで、

3件目のバーでかっちゃんは気持ち悪くなって帰った・・

「案外、お酒に弱いのねぇ・・」

ちょっと、つまらないって思ったけど、

それ以上は何もなく。


翌日。


香奈と私は香奈の運転する車でどこに行こうかと思案。


「やだねぇ・・お金もなくて行くとこも無いババア2人でさぁ(笑)」


「この辺はかっちゃんが詳しいかもしれないから、電話してみる」


かっちゃんに電話することにためらいは無く、

自宅に居るかもしれなくても気にならなかった。


「もしもし?今■■の辺に居るんだけど、この辺で安くて美味しいお店ないかなぁ?」


「じゃあ、○○寿司は?」


「お寿司は無理だよ。お金ないもん。」


「んじゃ、今、近くに居るからすぐに行くよ~」


「わ~ありがと~」


ほどなくして、かっちゃんは後輩を連れてやって来た。


「なんか・・ごめんねあせる」


「いや、いいよ。ちょうど、こいつとどこ行こうか考えてたとこだったし。」


かっちゃんは子供の頃からそうだった。


男気がある男。

言葉が優しいのではなく、心が優しい。


女に気を遣わせない術を生まれ持ってるんじゃないかなぁ・・


お寿司を御馳走になって、

歩いて行けるバーに行った。


そこで、私はかっちゃんの本質を見る目。

落ち込むわけでもなく、日々、淡々と明るく過ごす私に

親友の香奈は一層の不安を覚えたようだった。


「空元気みたいで怖い」

「突然、糸がぷつんと切れるんじゃないかって心配。」


何度となく言われたその言葉達に、

私は縋ることができなかった。


実際、悲しくもなかったし、

寂しくもなかった。


頭と心が分離している感覚・・



私の感情は凍ってしまっていて、


目の前の楽しいことだけを”楽しい”と思う。

目の前の嬉しいことだけを”嬉しい”と思う。


そんな毎日を淡々と過ごした。



ただ、夜だけがどうしても怖い。

どうしても眠れない。

週に3日は薬に頼って眠る。

頭ではトシくんが居なくなったことを

何とも思っていないのに。

過去を思い出しても胸が痛むこともない。

何が私を不安にさせているのか、わからない。

そして、こんなに寝ていないのに食欲も落ちず、

明るく楽しく暮らしている。

どうして眠れないのか・・


ちゃんと病院に行こうかと考えはじめた頃、

本当だったら、東京にも行けたはずの帰国が目前にせまっていた。


怒って送ったメールにはすぐに返事が来た。


〔色々考えたんだけど、俺たち、しばらく距離を置いた方がいいと思う。

お互いにやきもちに似た感情を抱かなくなるまでは離れた方がいい。〕


大きく深呼吸をして、もう一度読んだ。

嫉妬することも嫌だったし、、

避けられてまですがりたくもないし、

とにかく、私は疲れてる。


距離を置く?


もう、相当、遠いってば・・ここ。


やきもちに似た感情を抱かないなんて、一生、ありえないと思った。

私とトシくんはお互いに別枠なのだ。


気にしていないフリなら出来るようになるだろう。

友達のフリも出来る。

だけど、心の奥底がチクリともしないことなど想像も出来ない。


〔やきもちに似た感情をうまく隠せるようになるまでなら距離を置いてもいい。

だけど、その感情を抱かなくなることは無いと思うから、私はトシくんとは出会わなかったことにする。

このメールを送信したら、すぐにアドレス帳からトシくんを消すね。

【やきもちに似た感情をうまく隠せるようになるまで】にさっきのメールを訂正してくれるのなら、

そうなった時にトシくんから連絡して♪今まで25年間、本当にありがとう。〕


一度たりとも消したことのない名前をアドレス帳から削除した。

涙も出ない。

感情が白く濁った氷になったように感じた。


嫉妬だけで居なくなってしまうような存在だったのか・・

いや、逆に、嫉妬は

こんなに深く信頼した人でも居なくなってしまうような

恐ろしい力を持ってるんだ・・



その日から、眠れない日々が何か月も続く。

落ち込んだり悩んだりは一切していないつもりなのに、

眠ることができない日々。

今までと何も変わらない。


トシくんは確かにそう言ったのに、

明らかにそれまでとは変わってしまった。


メールしても返事はなかなか来なくなり、

電話する機会もなくなり、

避けられている気が否めない。


そして、トシくんがA子にFaceBook上で一切のコメントを書かなくなったことが

私を一層、不安にさせた。


2人は深い関係になり、それを気付かれないようにコメントしなくなったんじゃ?


嫉妬から来るそんな疑念を、もう、トシくんにぶつけるわけにはいかなかった。

トシくんは私の彼氏ではない。

私は責めるわけにはいかないのだ・・



その嫉妬の苦しさの捌け口を探さなくてはいけない。


私は精一杯、幸せな毎日を演じることにした。


A子の投稿には出来るだけコメントを残した。楽しそうに。

他の共通の友達にもそうした。楽しそうに。


自分の楽しそうな写真は友達の友達にも見えるようにして投稿した。


こんな写真をみたら、いくらなんでも嫉妬するかな?


トシくんが私のものでないように、

私もトシくんのものではないのよ。


そんなアピール。

毎日、戦ってるみたいな日々。


トシくんの知らない楽しい時間を私は過ごしてる!

そのアピールで必死な日々。



そして、また、2か月後に帰国する機会がやってきた。

今回は東京にも行ける。

トシくんに会うチャンスだ。


私はトシくんにメールした。


〔○月に帰国して東京に行くことになったの。

東京に行くなんて、滅多にないチャンスだから、

○日か○日に会えないかな?ちゃんと会って話がしたいの。〕


そして・・返事は無かった。



一週間待って、私はとても怒っていた。


〔避けられている気はしてたけど、

返事が無いってことは会いたくないって意味かな?

それならそれでもいいんだけど、

私もせっかくの帰国、予定をちゃんと組みたいから、

会えないなら会えないって返事くらいくれても良いんじゃない?〕

香奈からA子とのことを聞いた日から一ケ月が経った頃、

トシくんからメールが届いた。


〔バタバタしていて、連絡出来なくてごめん。今日、電話出来る?〕


バタバタしていたのはウソだ。

FaceBookで私との共通の友達には浮かれたコメントまで書いていた。

こんなコメントは書けるのに、私にはメール出来ないのね。

見る度にそう思っていたから、

バタバタしていたのはウソだと思う。


そして、そんなウソをつくくらい、私と話したくなかったのだと思うと

今日の電話で何を言われるのだろう・・と怖かった。


約束の時間。


電話が鳴った。


「もしもし、俺。今大丈夫?」


「うん・・・」


「あのさ・・」


「うん、ごめん」


「大体さ、大げさなんだよ、瑠美は。」


「うん・・・」


「俺と瑠美は何も変わんないしさ・・今更、変われないじゃん?」


「うん・・・」


「俺もさ、今の生活があるから、毎日相手してやるのは無理だけどさ」


「うん・・・」


「いつも味方だからさ。瑠美のこと傷つけることは絶対にしないし」


「じゃあ、どうしてすぐに返事くれなかったの?」


「だって、頭に血がのぼってる瑠美に何言っても喧嘩になるだろ?」


「うん・・・」


「だから、時間あけた方がいいと思ってさ。」


「じゃ、今まで通りだよね?」


「それで良いんじゃない(笑)」


そこで電話は終わった。



ものすごくホッとしたのも束の間。

結局、トシくんはA子との疑惑を何も弁明しなかった。


だけど、もうきけない・・・


今までと変わらない関係なら、いいか。これで。


私の嫉妬は消えないままに、いたずらに時間だけが過ぎる気がした。

嫉妬で心が燃えて、わけがわからなくなってしまった。


すぐにトシくんにメール。


〔香奈にきいたよ。

A子にも写真を送らせてるんだって?

東京までわざわざトシくんに会いに行くらしいじゃない。

私、自分が恥ずかしい・・こんな自分の写真送ったりして。

もう、バカにしないで。さようなら。〕


さようなら?


本当に自分でも何を言ってるのかわからなくなってる。


トシくんが私をよくわかっていると言う同様に

私もトシくんをわかっていた。


こんなメールを受け取って、何か言ってくるはずがない。


本当は

「瑠美の誤解だよ。そんなことは全く何も無い。

ごめんな、心配させるようなことになって。

A子に会うことなんて、絶対にないから大丈夫だよ。」

と言って欲しい。


言って欲しいけど、そう言わないとわかっていた。


その夜は眠れなかった。

正確に言うと、その夜から眠ることがほとんど出来なくなった。


翌日になってもトシくんからの返信はなく・・


さようならと書いたことをとても後悔して、

またメールを書いた。


〔香奈にきいて、私、頭に血が上っちゃって・・ごめんなさい。

私のことを大事に想ってくれているのをわかってるのに、

さようならなんて書いて、本当にごめんなさい。

あれは本心じゃないの。〕


それでも、返信は来なかった。

一ヶ月近く、連絡が無い状態が続いて、

その間にも、

どうして連絡くれないの?

や

怒ってるの?

や

ごめんなさい。

を繰り返し送った。


なのに、どうしてもA子とのことを想像してしまう。

今頃、2人で私を鬱陶しいと思ってるのだろうか?

今頃、2人で私になんて言おうか話し合ってたり?

今頃、2人は再会して恋に燃え上っているのかも?

そのままをメールでトシくんにぶつけた。


いつになったら、

「全部、瑠美の誤解だよ」

って言って来るのだろう・・


この一ヶ月間の私は、

トシくんと私が昔別れた原因を知ったあの時より不安定だった。

ただ、生活をしなくてはいけなかったし、

旦那さんの目もあったから、アルコール漬けにはならずに済んだけど。

この時の私は気が狂っていた・・・

FaceBookは地元を離れて、遠方に住んでいた私には

とても有難いツールだった。


海外に引っ越すことになった時、

全てを捨ててしまいたいと思った時には

FaceBookもやめてしまおうと思ったけど、

結局、香奈の猛反対にあった。


「瑠美が生きてるか確認出来るから」


そう言われてFaceBookのアカウントは残した。


トシくんとは個人的に連絡を取り合っていたから、

FaceBookの友達になる必要はなかったのだけど、

実際はトシくんから断られて私は友達にはならないでいた。


断られた理由は

奥さんもトシくんのFaceBookをみるから。

奥さんは私のフルネームを知っている。

結婚する前から、トシくんの元カノという位置に私を置いて

私を想像していたに違いない。

そんな私の写真を奥さんに見せるわけにはいかないのだ。

しかも、未だに連絡を取り合える状態だと知られるのは

夫婦関係に支障をきたすのだろう。


トシくんはFaceBookで香奈とは友達だった。

そして、中学の頃の同級生A子とも友達。

私は香奈とA子とも友達。

A子は私とトシくんの関係を全く知らない。

そして・・・A子は美人だ。ものすごく。



そこから始まった・・悪夢。


ある時、香奈と電話していた深夜。


「A子がさ、トシくんに会いに東京に一緒に行こうって言うの。」


「へぇ~またなんで?」


「なんか、写真を送り合ったりして仲良いみたいだよ」


「(笑)マジで~?」


気にしていないフリをしたけど、

気にならないわけがない。


後にこの写真を送り合うというのは、

香奈のただのうっかり妄想だったと判明するのだが、

本当のところはどうなのかわからない。


トシくんは私によく、「今の瑠美の写真を送って」

と言っていた。

同じように、他の女性にも写真を送らせていたのだろうか?

嫉妬に狂った。