永遠に 手をつないで -6ページ目

永遠に 手をつないで

私には20年以上も忘れられない人が居ました。
全ての出会いと再会といきさつと・・・
過去の記憶を綴ります

ここで、意地を張ったりするのはよくない。


私は泣きながら、

どうして別れたくないのかを必死で説明したかったけど、

どんなにタカオさんを愛してるかを伝えることは

どうしても出来なかった。


ほとんど一緒に暮らしているのだ。

愛してるかどうかなんて、タカオさんの方がわかってる。


日々の家事も必死でこなしたし、

タカオさんが喜びそうなことは何でもした。

彼の帰りが遅い時も先に寝ていたことなど一度もない。


良い奥さんになるだろうと思われたかった。


だから、私は頑張っていたのに。


「瑠美ちゃんは俺に心を開いていない気がする」


「そんなことない!」


反論はするものの、彼の言う事は間違っていない気もした。


「でも、私・・この部屋が好きなの!だから出て行くのは嫌!」


別れたくない理由としては、とんでもない事を言ったと思ったが、

彼はそれに納得した。


納得した?


「じゃあ、このマンションの他の部屋を借りてあげるから、そこに住んだら良いよ」


「引っ越すお金なんてないよ」


「いいよ。俺が部屋を借りてあげるよ。そこで一人で暮らしたら良い。

会いたい時に会えるし、頑張らないで素直に暮らしてみてよ。

そんな瑠美ちゃんを近くで見ててあげるから。その方が俺も安心だよ。

別れても近くに居る。」



反論は何も無かった・・・・・



翌週、私は同じマンションの違う階に引っ越した。


その引っ越しの日、私の勤める会社に新しい人が中途採用でやって来た。

同じ日に引っ越しをしていたその人が今の私の旦那さんになる。

それからもタカオさんとの半同棲はずっと続くのだと思っていたある日。


「瑠美ちゃん、合鍵を返してくれない?」


「それってどういうこと?」


「俺もさ、付き合いとかあるしさ、いつも瑠美ちゃんが居ると困ることもあるんだよ」


「困るって何に困るの?」


「・・・いろいろ。」


「他に気になる人が出来たとか?」


「そんなんじゃないけど・・」


「でも、お友達だって紹介してくれてるし、私が居て困るのって女だよね?」


「なんかさ、、、もう少し自由になりたいんだよ。結婚してるわけじゃないのに、

毎日、帰ったら瑠美ちゃんが居るって、嬉しい時もあるけど、

今日も帰ったら居るのか・・と思うと嫌な時もあるんだ。」


「結婚しようってタカオさんが言ったんだよ?」


「うん、だからさ、結婚するまでは別れてたい」


は?

別れる?


「嫌だよ。私、別れたくないよ」


「でも、瑠美ちゃんって本当に俺の事が好き?」


「え?好きに決まってるじゃない。なんで、そんなこと言うの?」


「なんかさ、俺と別れたくなくて、必死になってるだけで、俺の事が好きなのとは違う気がするよ」


「そりゃ、別れたくないから必死になるよ!!」


「今のことじゃなくて、今までもずっと。好きだから一緒に居るんじゃなくて、一人になりたくないんでしょ?」


一瞬、次に出す言葉を考えてしまった。

その通りかもしれないと思っていたから。

だからって、他に好きな人が居るわけでもない。

私は誰も好きになれないようになっているのだろうか?

私を幸せにしてくれる人にやっと出会ったと思っていたのに。


「でも、結婚するんじゃないの?」


泣き叫んだ。

トシくんの指輪はあっけなく捨てた。



そして、平穏な日々が続く。

(続くと言っても、実際にはそれから3.4ヶ月のものだったけど。)


相変わらず、トシくんからは振り込んだ電話がかかって来ていた。

私からは入金されてたよ電話をかけていた。


その電話をする前日、仕事も順調だった私に、東京への1週間の出張が決まった。


「もしもし。振り込まれてたよ。ありがとね~」


「おう」


「でさ、9月○日~○日まで、私、東京に行くんだけど」


「えーなんで?」


「仕事でね。だから、夜しか無いんだけど、台場まで来られそうな日ある?」


「いいよ。どうにかする。御馳走するから、何が食べたいか考えといて」





私にはタカオさんが居たけど、私の中ではもう終わった恋のつもり。

トシくんに会うのに、全く後ろ暗いところはなかった。


「東京に行ったら、同級生に会うんだ~」


「女の子?」


「ううん、男の子。高校の時からずっと仲良くしてた仲間の一人。」


「ふーん」


タカオさんも気にしてる風ではなかった。



元彼と言っても、もう何年も前に別れてる。

しかも、ここのところは毎月電話もしてるけど、

私達の間には何もなかった。

トシくんにはタカオさんの話もしていた。

結婚しようと思ってることも。


そして、トシくんにも一緒に暮らしている女性が居る事もきいていた。


だから、友達。


実際に胸がチクリともしなかったし、

何を御馳走して貰おうかなぁ~なんてことが楽しみだった。



それからもタカオさんとの平穏な日々が続いた。

目的地。

初めて行ったその海は青く、とても綺麗だった。

タカオさんは私の写真をたくさん撮って、

満足そうに笑う。

私は愛されてると思った。



そして、その夜。

大きなベッドが一つあるその部屋で

タカオさんは私を抱き寄せて、

初めてキスをした。


どこからか彼が用意していたキャンドルの火と

淡い香りが素敵だった。


そのままベッドに倒れ込んで、

私達は初めてセックスした。

最初から最後まで、優しすぎるくらいのセックスだった。

タカオさんは私を愛してる。



だけど、私はやっぱり気持ち良くない。



もう、セックスは気持ち良いものなのだというのは諦めよう。

イクとか全く意味がわからない。

少し、痛いくらいだもん。



裸のまま、ベッドに横たわる彼に

「どうして、今までしなかったの?」

それまで、ひっかかっていた事をきいてみる。

「瑠美ちゃんと初めて結ばれる時はさ、

こうやって、ロマンティックにしてあげたかったんだよ。

一生、思い出に残るように。」

なんてロマンティストな男なんだろう。

私は幸せだと思った。

このまま、この人と結婚する日が来て、

私はこのまま幸せなのだろうと思った。



(明日、帰ったらトシくんの指輪は捨ててしまおう。)

指輪をもらったものの、

実際にタカオさんと暮らすことは難しかった。


私の両親は古風な考えだったから、

結婚する前の男女が一緒に住むなどということは

とてもじゃないけど言えなかったし、


いくら離れているとはいえ、住所が変わったり、

電話番号が変わったりするのに、

秘密にしておくことも出来なかった。


タカオさんは、次に私の両親が訪ねて来た時に

挨拶をすると言っていた。

それまでは半同棲のような状態。


タカオさんの部屋の方が新しくて広かったから、

私はタカオさんの部屋に入り浸るようになった。


一緒にベッドに入っても、タカオさんは私に

キスもしなかった。

頬や額にはキスをするけど、口にはしない。


だから、もちろん、胸やアソコに手を伸ばすこともない。


意味がわからない。


男の人はセックスしたいんじゃないの?


私はしたいわけではなかったが、

求められないことに不安を覚えた。



「今度の連休、海に行こう」


「どこまで?」


「■■、行ったことある?」


「遠いよね。行ったことないよ」


「そこで小さなホテルを経営してる友達が居てさ、

泊まりで旅行だよ。初旅行だね!」


嬉しそうにタカオさんは言う。

どう考えても、私を愛してると思った。


抱かないのは何故だろう?


訊けないまま、連休になり、

新調した水着を持って、私はでかけた。

安堵で涙が流れた。


タカオさんが居なくなったのではないという安堵。

タカオさんが無事だった安堵。

どちらかわからないが、とにかくホッとしていた。


疲れてもいた。

私は元々、働き者ではない。

こんなに頑張ることってあんまり無いからなぁ・・と

自分を褒めて、ふと思う。


私はタカオさんを好きなんだろう。


私が戻っていることに気付き、タカオさんが目を覚ました。


「どうした?」


「ん・・良かったね。熱下がったね。」


「なんで泣いてるの?」


「わかんないけど」


「瑠美ちゃん、俺の事、好き?」


「好き」


「だよね(笑)。結婚しよ?」


「?まだ熱があるんじゃない?私、まだ彼女でもないよ」


「じゃあ、彼女になって!一緒に暮らそう。それから結婚しよう」


「寝た方がいいよ。」


「うん。寝るね。布団、自分で出せる?」


「うん。大丈夫。」


「今日はありがとね」


「うん。早く寝て」




翌週、タカオさんは本当に指輪を買って来た。


まだ婚約出来るような稼ぎは無いから・・とペアリング。


3年以内には大きなダイヤを買ってみせる!と笑って、

私の薬指に指輪をはめた。




この時、私はまだトシくんとペアで付けていたあの結婚指輪を大切に持っていた。

「タカオが病欠で。昨日から休んでるんですよ・・高熱らしくて。」


え?何?それー!!叫び


タカオさんは一人暮らし。

病院には行けたのだろうか?


心配になった私は、その日の午後、早退して彼のマンションに向かった。

自宅に氷枕と冷えピタを取りに寄り、コンビニで大量のポカリスエットを買った。


エントランスでピンポン。

オートロックを開けて貰えなかったらおしまいだ・・

ドキドキして待っているが、開かない。

幸い、誰かが中から出て来た!

私は隙間からさっと入り込み、マンション内には入る。

今度は玄関だ・・・どうか開けてくれますように!!!

ドアベルを鳴らしても中からドアに近付いて来る気配がない。

ノブをまわしてみると・・鍵がかかっていなかった。


(入っちゃおう)


「タカオさん?」


恐る恐る声をかけると、真っ赤な顔でベッドに横たわっているタカオさんがこちらを向いた。


「どうして、電話に出てくれなかったの!!!もっと早く来てあげられたのに!!!」


水と市販薬がテーブルの上にある。

やっぱり病院には行けていないらしい。


「いつから?」


「一昨日、ちょっと調子悪いな・・と思って寝たら、昨日の朝には動けなかった」


「なんで、電話に出てくれなかったの?」


「瑠美ちゃんが心配してくれなかったら傷つくな・・って思って。

弱ってるのに傷つきたくないじゃない?」

かすかに笑う。


私は氷枕をタカオさんの頭に敷いて、額に手をあてた。

ものすごく熱い!


「熱は何度?」


「体温計ないからわかんない」


あんなに頼りになるお兄さんだと思っていたのに。

こういう時、男の人ってどうしてこんななんだろう?


「何か食べた?」


「動きたくないから食べたくない」


それから、タクシーを呼び、病院に連れて行って、彼が点滴している間にスーパーで買い物を済ませた。


彼のマンションに連れて帰り、ベッドに寝かせて、お粥と具無し茶碗蒸しを作って食べさせた。


病院の薬を飲ませて、


「一回、帰ってすぐ戻って来る。今日は泊まる。」


と言って鍵を持って出た。



自宅で着替えを取って急いで戻ると、タカオさんは寝ていた。

額に手をあてると熱は下がっているようだった。

2つ年上なだけなのに、タカオさんはとても大人に見えた。

食事に誘ってくれる時もスマートだ。

それでも、オシャレなお店ばかりに私を連れて行くのではなく、

「ここが本当に美味しいんだよ」と、

下町のお好み焼き屋さんとか椅子の無いカウンターの串揚げ屋さんとかにも連れて行く。


頼りになるお兄さんという感じだった。


お互いに緊張もしなくなって、

いつの間にか敬語も使わない関係になっていた。


時々、タカオさんのマンションにお邪魔してビデオを観たりもしたし、

タカオさんの手料理も御馳走になったりした。


だけど、私は自分のマンションにタカオさんを招くことはなかった。

理由はタカオさんが私を丸々愛してくれる自信が無かったから。

自分が愛してるかどうかを自身に問うことも、もうやめていた。

考えてもわからないから。


そんな曖昧な関係が続いた頃のある木曜日。

タカオさんが電話に出ない。

何度かけても、いつかけても出ない。


いつもなら、1時間以内には折り返しかかって来たのに。。


タカオさんが居なくなる筈が無いと信じていた自分に気付く。


どうして、信じてしまったんだろう?

どんなに私を好きだと言った男も皆、私から去ったじゃないか?

もう、こんな風に信じるのは嫌だったのに、

どうして、信じてしまったんだろう?



翌日、タカオさんの会社の違う人が納品に来た。

誰かが「担当、変わったんですか?」と訊いている。


(私に会いたくなくて、担当まで変えたのか?)


と傷ついた。

タカオさんが連れて行ってくれたところは

周りが大人ばかりのオシャレなお店だった。


タカオさんは仕事帰りでスーツだったし、

シンプルなワンピースにして良かったと思った。


何を食べたのかは覚えていないけど、

ピンク色の可愛いソーダを私に頼んでくれたのを覚えている。


会話はほとんど仕事の話とタカオさんのこれまでの経歴(?)

みたいな・・自己紹介みたいな感じ。


私の失恋話に触れることは全くなく、

本当にただ、食事を一緒にしてくれているだけのようだ。

この時の私は何かを期待するような余裕は少しもなかった。


「家はどの辺なの?」


私が自宅の最寄駅を告げると、彼は驚いたように


「じゃあ、ご近所さんだね。うちもその駅だよ」


それから、自宅の最寄駅まで移動して、2件目。

そこは大人が行くようなところで、私は入ったことのないBARだった。


少し飲んで、緊張がほぐれて来たところで、

タカオさんが唐突に言った。


「僕とお付き合いして下さい」


「でも、私、昨日、彼氏と別れたばっかりなんで・・」


「僕は以前から○○さん(←私の苗字)をいいなと思ってました。

彼氏が居るとか居ないとかは知らなかったから、

土曜日に伺えるチャンスがあれば、○○さんが居る日に誘おうって決めてました。」


「はあ・・ありがとうございます。でも、私、昨日別れたばかりでまだ考えられません。すみません」


「○○さんがフラれたの?」


「そう、彼に他に好きな人が出来たんです」


「辛い?」


そこから、私はてっちゃんとの出会いから今までを全て話した。


「本当に好きなのかどうかが自分ではよくわからないんです。

寂しいから一緒に居て欲しいと思ってる気がします。

誰でも良いわけではないけど、

誰かを好きで好きでたまらないって感情が思い出せないみたい(笑)」


「付き合うって形が怖かったら、僕と一緒に居てみてくれないかな?

彼女になってくれなくても良いから。

僕を彼氏候補として、隣で見ていて貰えないかな?」


「・・・こうやって食事をしたり?」


「そう。家も近いし、会いやすいと思うけどな。

休みの日もお互いに時間があったら、デートしようよ。

でも、僕は○○さんを束縛したりはしない。

僕を好きになるまでに他に好きな人が出来ても良いよ。

候補の一人にしてくれれば良い。」


「・・・友達?」


「そうじゃないな。僕を好きになって欲しいと思ってるから、

僕は○○さんを友達としては見れないからね。」


「私を好きですか?」


「好きだね。これは(笑)。だって、僕、今、必死でしょ?(笑)」


「(笑)そうですね、あはは(笑)」


この日は何も約束しなかった。

何も返事はしなかった。


だけど、孤独の恐怖からは解放されて、

未来は明るい気がした。


てっちゃんとのお別れで一晩中、泣き明かした。


翌日は土曜日だったが、交代で出勤する当番が私だった。

誰かに会うのなら、泣き腫らした目で恥ずかしいと

出勤を誰かに代わってもらうところだが、

土曜日は私以外は出勤しない。

誰かが来ることも滅多になく、

いわゆる電話番みたいなものだったから、

自宅に居るより、気晴らしにもなるかと出勤した。


コンビニで買った簡単な昼食を済ませた後、

残った書類の整理をしていると、

取引先のタカオさんが納品に来た。

タカオさんはいつもビシっとしたスーツに身を包んで、

スマートでカッコよかったから、女子社員の憧れの的だったが、

土曜日に納品に来るようなことは滅多になかった。


何もこんな目をした日に会いたくなかったなぁ

と思いながら・・

やっぱり、顔を見て言われた。


「何かあったんですか?」


「昨日、失恋しちゃったんですよ~(笑)」


「元気出して下さいね」


「はい。ありがとうございます」


その後、夕方5時まで書類整理に追われて、、、

さあ、あと1分。もう帰ろう!!

とタイムカードのデジタルが17:00を指した瞬間、

電話が鳴った。


一瞬、悩んだ。

これって就業時間を過ぎてからかかってるのかなぁ?

いや、先方の時計が16:59だったら、私がサボったみたいだし。


仕方ない。

私は出入り口から一番近い電話を取った。


「はい。株式会社○○でございます。」


「○○産業のタカオです」


「お世話になります。どうかされましたか?」


「いえ、個人的な電話を差し上げました」


「あいにく、本日出勤しているのは私だけでして・・」


「はい。なので、えーと・・

今夜、一緒にお食事でもいかがですか?」


「?私ですか???・・・あの・・明日ではダメですか?

今日は私、酷い顔で・・」


「はい。なので、元気にして差し上げたくて」


胸が熱くなって、また泣きそうになった。


また一人ぼっちになったと思っていたから、

励ましてくれようとする人が居ることがとても嬉しかった。


「ありがとうございます。では、甘えさせて頂いても?

何時にどこに伺えば良いでしょう?」


私は一旦、帰宅してシャワーを終え、メイクで目の下のくまを出来るだけ隠した。

ひざ丈のシンプルでノーマルなワンピースに着替えて、

待ち合わせ場所に向かった。


今夜、一人で食事をするのでなくて、助かったと思っていた。