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永遠に 手をつないで

私には20年以上も忘れられない人が居ました。
全ての出会いと再会といきさつと・・・
過去の記憶を綴ります

子供を外に預けれらるようになり、

私はすぐに仕事を始めた。


家事と育児と仕事を両立することは

本当に大変なことだと痛感するが、

それでも、私は外に出たかった。


私が働くことを、

旦那さんは本当は良く思っていないことも感じていたけど、

どこから見てもとても良い旦那さんは、

それを咎めたりはしない。


そして、こう言った。


「瑠美は仕事が好きだから」


この言葉に続く言葉を私は感じた。


『瑠美は仕事が好きだから、働かせてあげる』


そう言っているように聞こえて、

また、うんざりした。


私が働く事によって、家計は潤ったし、

それによる恩恵は旦那さんも受けているはず。


だけど、疲れて帰る私に労いの言葉などは一度も無い。


仕事で夜、どうしても出かけなくてはいけない時には

旦那さんが早く帰って、子供を見ていてくれる。


有難いと思う。思うけど・・


帰って来た旦那さんに


「ごめんね~。ありがと。」


と言う事にも本当はうんざりだった。


子供は夫婦二人で産み育てるもの。

旦那さんと同じように働く私が、なぜ、


「ごめんね」


と謝るのか?


うんざりしながらも、必ず謝った。


揉めたくはない。



こうして、どんどん冷めていく気持ちを止められないまま、

その頃の私にとっての大事件が起こる。



おばさんのはずの私に、その日は突然やって来た。

結婚して2年後くらいから、

再びトシくんとは電話やメールで連絡を取るようになっていた。


きっかけはトモくんの結婚。


それでも、年に1度か2度のペースで、

特に長く話すわけでもなく、お互いの今を事細かに話すわけでもない。


結局、腐れ縁なんだろうな。


惚れた貼れたの関係ではないけど、

一応、頭の片隅のどこかには居る存在。


そんな関係は私を安心させた。


トシくんとは恋人としてはうまくいかなかったけど、

話も合うし気心知れてる。


おそらく、私の幸せを願ってくれてるのだろうし、

付き合ってるわけじゃないから、私を捨てることもない。


このまま、ずーっと友達。


それでいい。

何でも話せるつもりになっていたトシくんにも

私が不幸そうな話だけはしない。


私、すごく幸せなんだよ


のオーラを出したかったのは、見栄だったのかな。



トシくんは結婚した。

前出の同棲の彼女。

一つ年下。

それは、周りが気をつかって、

なかなか私の耳には入らなかった。

おめでとうも言えてない。

けど、今さら

「結婚したんだね」

と話題にするのもおかしな話だし、

いいや。ずーと友達だし。



子供が生まれて、数年は幸せが続いていた。

・・・が徐々に旦那さんの本心が見え隠れするようになる。


彼は本来、私には良妻賢母と言われる女性になって欲しいと

思っているようで、

それは私にはとうてい、無理な事だった。


私はすぐに仕事にも復帰したかったし、

妻として、母としてより一人の人間として社会に存在することを

重んじていた。


立派な妻で、立派な母で、立派な人間であれば問題ないのだろうが、

私はそのどれでも無い。


だけど、立派でなくてもほとんど全ての人間が社会に存在しているのに、

私の世界が家庭の中だけになるのは理不尽だと思えてしまう。


口喧嘩が多くなった。


旦那さんが「母親として・・・」「主婦として・・・」

と小言を言う度にうんざりした。


元々、良い旦那さんだからなのだろうが、

私は旦那さんに「父親として・・・」「夫として・・・」などの小言を

一度たりとも言ったことが無い。

お付き合いで飲み明かし、朝帰りになったとしても

そんなことは言ったことが無い。


未だに旦那さんを一人の人間として見ている私に


子供の母親として見たい時や

自分の妻として見たい時や

女として見たい時など、色んな顔を求められても難しい。


そんな口喧嘩を何年も繰り返して来たが、

今ではそれらの口論をすることもない。


お互いがある程度のところで諦めたからだと思うが、

そんな価値観の違いを感じるようになってからは、

旦那さんへの気持ちはどんどん冷めていった。


もう一つ。

私の旦那さんへの気持ちが冷めた理由がある。

それをここに書くと、私のことをよく知っている人が読んだら、

私だとわかってしまうから書くことが出来ないけど、

ある事から、私は旦那さんに感謝ばかりをしなくてはいけなくなった。


純粋に感謝していたうちは良いが、

そのうちに恩を着せられてる気持ちになってしまうのだ。

旦那さんには恩を着せたつもりなど全く無いこともわかっている。

だけど、どうしても卑屈になってしまい、

それはもう解決する事が出来ないのだとわかった時から、

私はもう、この人生を諦めた。

結婚して、しばらくは共働きで

夫婦2人の生活が私は気に入っていた。


だけど、旦那さんは子供を欲しがった。


私も子供を要らないと思っていたわけではなかったけど、

それが今だという勇気は出ない。


自然に出来てしまえば良いのだが、

出来てしまうのが怖くて、

必ず避妊してもらった。


何度も何度も話し合い、

私はとうとう決断した。


一生、子供無しなのは嫌だ。


世の中には子供が欲しくてたまらないのに

なかなか授からない人が沢山居るというのに、

一発一中。

すぐに妊娠。


妊婦生活も旦那さんの優しいフォローで

幸せに過ごした。


ベビーカーやベビーベッドなど、必要なものは

2人で買いに行き、新生児服なども2人で選んだ。

2人共、田舎が遠かったので、親の援助は一切なく、

不安だらけだったけど、2人居ればそれで良い。


そして、出産。


子供の誕生日は私が忘れることの出来ない9月のあの日。


トシくんと付き合い出した記念日。


予定日より一週間も遅れて、子供はわざわざこの日に生まれて来た。



出産後も私はかなり、幸せだった。

子供の夜泣きに、真夜中、起きて寝かしつけてくれる旦那さん。


こんなに良い人と結婚出来て、私は本当に幸せだ。


出産を機に仕事も辞めて、専業主婦になった私は

一日を家で過ごし、子供の世話をして家事をして・・

それがとても大変で育児ノイローゼになる人も居ると聞くが、

私には無縁だった。


近くに友達も無く両親もおらず、孤独だったけど、私には旦那さんが居て、

可愛い子供が居て、問題は何もなかった。

唯一の不満は美容室に行けなかったことくらいだ。

トシくんと東京で会った日から

わずか5か月後に、私はウエディングドレスを着ていた。


それは、私が学生時代に想像していたような結婚式ではなかった。


通常、結婚式に新婦の男友達が出席するようなことは無いが、

ヒデくんや木場ちゃんは私の結婚式には出席すると

高校生の頃から言ってくれていた。


だけど、誰も呼べない。


友人達は驚くだけで、私の結婚を心から祝福するムードではなかった。


とにかく、驚かれた。


だから、私の結婚式に友人は誰も呼んでいない。


旦那さんと私がお世話になっている、仕事関係の人ばかりだった。

それでも、幸せだった。


トシくんには直接は伝えなかったけど、

ヒデくんから聞いて知っているだろう。

トシくんに「おめでとう」と言われるのは嫌だったし、

私は新しくスタートしたいのだ。


もう、全て忘れてしまおう。


結婚してからも幸せはそのまま何年も長く続いた。


彼は私のわがままを何でもきいてくれたし、

とても優しくてスマートで、私には自慢の旦那さんになってくれた。


共働きの私達は金銭的にも余裕があったし、

2人で旅行したり、美味しいものを食べに行ったり、

素敵なものを購入したり、それらを全て2人でした。


2人の時間や物は幸せの象徴だった。


私が好きじゃないセックスも頻繁には求めて来ない。

完璧な結婚生活だ。

子供が生まれても数年は喧嘩の一つもしたことが無い。

完璧な結婚生活。

「付き合って欲しい」

旦那さんになる人に言われた時、

すごくすごく好きになってるわけではないと

言おうと思った。

けど、やめた。

私はズルいから。


代わりにこう言ってみた。

「付き合うのは無理。友達のままか結婚するかどっちかだよ。」


「えー結婚?」


「そうだよ。だって、付き合ったら私は捨てられるもん。

そうしたら私が会社を辞めなきゃいけなくなる」


「じゃあ、結婚しよう。」


私はもう、結婚しようだなんて言葉を信じたりしなかった。


「だから、結婚するまで付き合うとかじゃないよ?

結婚するならすぐにだよ。」


「いいよ。じゃあ、すぐに結婚しよう」


「ほんとに?」


「ほんと。」


そんな風に結婚することになった。


嫌いじゃない。大好きかどうかはわからないけど、

好きは好き。

私とすぐにでも結婚したいと言ってくれるほど

この人は私を好きなんだ。

女は愛されて結婚するのが一番幸せだとよく聞く。

だから、私はこれで幸せになれる。

どうせ誰の事ももう本気で好きにはなれないんだし。


旦那さんになる人を騙しているわけでもなんでもなかった。

その時、この人と一生添い遂げようと本気で思っていたから。



引っ越して数ヶ月でもう新しいマンションを出るのだから、

話さないわけにはいかない。


「私、結婚することになった。」


とタカオさんに伝えた夜、彼は号泣した。


「俺が悪かった。

自由になりたいなんてもう言わない。

お願いだから、その結婚は取りやめてくれ。

俺と結婚してくれるって言ったじゃない。」


この時ほど、好きだと思った男性を見て冷めたことはない。


「だって、別れたじゃない。

付き合ってもいられない女と結婚なんか出来るわけないじゃん。」


泣いてる彼を置いて、私は自宅に戻った。

その夜、タカオさんから貰った全てのもの(指輪も)を

タカオさんから貰ったバッグに詰めて、

彼の部屋の玄関に置いて来た。


「このマンションにかかった費用はお返しします」


とメモも書いて入れておいた。


翌日の朝、自宅を出ると私が置いて来た筈のバッグが

私の部屋の前に置いてあった。


中にはCDと想いが綴られた3枚の手紙が入っていたけど、

私はそれをサラっと流し読みして、CDと共に捨てた。


バッグも指輪も何もかも、結婚する時に持っていくわけにはいかない。

少し、胸が痛んだけど、旦那さんになる人を裏切ることは出来ない。


これですべて終わる。
私は新しくスタートするんだ。

またもや、トシくんとの決別を経て

東京から戻った私は、

それまでにも増して、旦那さんになる人と密に会うようになった。


自暴自棄になっている私を元気づける為に

誘ってくれてるのはよくわかった。


「○○さん(←私の苗字)はいつも困った顔をしてるけど、

笑った方が魅力的だよ」


素直に有難いとは思っていたけど、

それから恋愛に発展するとは思えなかった。


最初は皆、私にいい顔をする。

最初は皆、私を好きだと言う。

けど、皆、私を愛さなくなる。


タカオさんとも相変わらず会っていた。

休日のお昼は一緒に食べるのが日常になっていた。

タカオさんにも恋愛感情はもうなくなっていた。


誰も私を愛さないのなら、

私も誰も愛さない。


愛せないのだと認めたら、とても楽になった。

私は少し異常なのだと。

これまで誰としたセックスだって気持ち良くなかったし、

私は恋愛には向いていない。

そう認めたら、とても楽になった。


そう認めて開き直った私に寄って来る男は

以前より多くなった。

どこの誰が何てアプローチして来たかを話すうちに

タカオさんの態度が変わっていく。

私が夜遅く帰宅することを咎めるようになったのだ。


「関係ないんでしょ?」


やっと、この言葉を言えた時にスッキリして、

仕返ししている自分に嫌気がさす。


もう、全部終わりにしたい。


人生で初めて、本気で死にたいと思っていた頃。


そんな私の内心を知ってか知らずか、

旦那さんになる人が突然、こう言ってきた。


「付き合って欲しい」


嫌いじゃない。一緒に居ると安心できる。

子供のような私を優しく諭してくれる。

そんな男性からの一言は、私を救ってくれた。


でも、この人もきっと私を捨てる。


もう恋愛はしたくない。





他人は私を恋多き女だと言うが、

すぐに好きだと思い込んでしまうだけで、

お互いに愛情を注ぎ合うような恋愛は極端に少ないと思う。

もちろん、遊びの恋を繰り返したわけでもないし、

遊びで男と寝たことも一度も無い。

その時、その時、本気で好きだと思っていたのだから、

本気の恋愛をしていると思っていたのだ。

東京の台場で、

手を繋いだまま、海をみながら、

笑いながら話す私。


「だって、トシくんの家を知らなかったからさ。

知らないのによく行ったよね~私(笑)」


トシくんは私を抱き寄せた。

そして、思い切り抱きしめた。


「知らなかった。知ってたら・・」


知ってたら・・何?


訊きたかったけど、訊けなかった。

訊かなくてもわかった。


わかったところで、もう、どうしようもないのだ。


トシくんには今の生活がある。

結婚はしていないけど、

一緒に暮らしている彼女と結婚するつもりなのだろう。


トシくんの生活を壊すつもりはなかった。

それに、私にとって、もうトシくんは友達。


今更、好きかどうかなんて考える必要もない。

たとえ、好きだなぁと思っていたところで、

もう、どうしようもないのだ。


それでも、込み上げてくる感情は

涙という形になって、私からこぼれる。


「俺はさ、彼女が居てもこうやって他の女に会いに来るような男なんだよな。本当は。」


それには答えず、


「もう、私、恋愛は疲れちゃったよ。

もしも、トシくんが田舎に帰るなら、私も帰るんだけどね(笑)

そんなことしないよね?」


「・・・」


「だよね」


「今更、帰るにはここで出来たしがらみが多過ぎる」


「だよね~(笑)私もこのまま頑張ってみるよ~(笑)」


トシくんは私の涙を右手で拭った。



この時、どうして”もう、どうしようもないのだ”と思ったのだろう。


この時はまだ2人とも独身だった。

全ての誤解をとくことが出来ていたら、どうにか出来たのではないだろうか?


そんな風に10数年後に、2人で話すだなんて、

この時には想像もつかなかった。


運命の劇場はここで、幕を閉じたと信じていた。

旦那さんになる人は温和で優しい人だった。

職場が同じなので、帰りに皆で食事に行くことも

当たり前のようにしていて、

私は毎日、彼らと食事をして帰宅するようになった。


だんだん、旦那さんになる人と2人で食事する機会が増え、

プライベートな話もするようになる。


私は別れたタカオさんの話をよくした。


「○○さん(←私の苗字)はチャーミングだから、

他の男が放っておかないよ」


旦那さんになる人がそう言っても、私はそれを彼からの好意だとは受け取らず


「最初はね・・。でも、結局は捨てられるんですよ・・私なんて」


この頃、私は口癖のように

「私なんて」とよく言うようになっていた。


私なんて、結局、愛されないんだから。




東京への出張の日が来た。

トシくんと会える日は一日だけ。


その日まではまだ3日もあったが、

何かのアクシデントでひょっとしたら今日になるかもしれない!と

携帯電話を何度も何度もチェックして、3日間を過ごした。


トシくんと約束していた当日、仕事を終えて待ち合わせ場所に行った私は

黒のロングワンピースを着ていた。


トシくんと付き合っていた頃には絶対に着なかったような大人っぽいデザイン。

大人になった私を見せたいと思って、それを選んだ。


久しぶり過ぎて、ぎこちなくなるかと思っていたのに、

会った瞬間に緊張も何もかもが解けた。

昔とは何も変わらない間合いに、心底ホッとした。


夜景がキレイなレストランで、笑いが絶えない食事をした。


まだ、帰るには少し早いねと

店を出て歩く時には自然に手を繋いでいた。


「昔と変わらないね」


友達だと思っている割にはおかしな行為なのだが、

その時の私には恋人も居ない。

罪悪感も何もなく、これが一番自然だと思えた。



私は笑い話にしようかと、

あの日、

もう好きじゃないと言われた翌日、

トシくんに会いに東京まで来たのだと話した。

「あの階段に居たら、会えると思ったんだけどね~(笑)」

タカオさんと同じマンションに引っ越した私には、

彼と別れたという実感がなかった。


実際に彼が借りてくれている部屋だったし、

彼は私の部屋によく来た。


私の部屋の窓からは彼の部屋の玄関が見えたから、

彼が帰宅したこともわかったし、

私は彼を束縛することをやめなくて済んだから、

安心していた・・


だけど、

ある日、彼が帰って来ない・・何度見ても電気が付かない叫び。


私は窓の傍に椅子を移動して、ビールを持って、

彼が帰って来るのを張り込んでずっと待っていた。


まるでストーカーだ。


(女を連れて帰って来たらどうしよう)

(このまま帰って来ないとしたら女のところ?)

(やっぱり、女が出来たから私を追い出したんだ!)


こういう時、ネガティブなことばかりが頭を巡る。



彼が帰って来たのは朝方の4時だった。

私は急いで彼の部屋に行った。


「こんな遅くまでどこに行ってたの?」


「関係ないだろ」


「だけど、心配するじゃない。まさか女のところ?」


「それが、嫌だって言ってるんだよ!もう関係ないんだから!」


ガチャンと鍵をかけられてしまった。


もう関係ない。


関係ないを彼は繰り返した。

そうだ、関係ないんだ・・

この時に別れたことをやっと実感した。




あーそうですか。

じゃあ、私がどこで何をしていても関係ないのね。

「どこ行ってたの?」なんてきかれたら、

「関係ないでしょ」って言ってやる!!


私は、翌日からは努めて早く帰宅しないようにした。


そんな私に付き合って、毎晩のように食事を一緒にしてくれていたのが、

今の旦那さんだ。