颯爽と身支度を終えて、狩りに出る準備ができた。
ただひとつの剣を背負うだけだ。
長い時間を掛けるほうが無理なことだ。
背負った剣を細い目で見る。
この剣は師匠が作ってくれた剣だ。
名はムラマサ。
1兆度に近い熱でエメラルドドラゴンの翼を焼き溶かして作ったものだ。
エメラルドドラゴンは、名のとおり、エメラルドでできた鱗をもつドラゴンだ。
全身は輝きという輝きで形成されていて、翼は特に純度が高い。
その輝きはある国の王女を虜にし、その王女は翼を見たまま食事も睡眠もとらず、ついに餓死したという。
そのエメラルドドラゴンの中でも、特異種のエメラルドドラゴンは全身が虹色でできていて、発見しただけでも、称号が与えられるほどだった。
昔、ある征伐隊が特異種のエメラルドドラゴンを討伐し、永遠の富を得たという。
その後、特異種のエメラルドドラゴンは発見されておらず、伝説の翼竜として古い書物には記されている。
この世にただ一人だけ、特異種の素材を使った剣があるらしいが、所有者は見つかっていない。
まあ、見つかったらあらゆる手でその剣を奪う輩が居ることだろう。
そんな長話を脳内で再生しているうちに、川に着いた。
今日狩るのは大魚。
ただ、ここの魚はボクの何倍の大きさのあるものばかり。そして、師匠の体よりも大きい魚も居る。
その魚を水中に潜り、仕留めるのだ。
簡単なことだが、奥は深い。
正面から捕らえようと思えば、恐らく相手は自分の身の危険を察知し、逃げるだろう。
逆に、背後から捕らえようとすると、川の流れに逆らうことになってしまう。
完璧な場所から着水し、水と同化する。
殺気を抑え、息の続く限り魚を追う。
魚が油断したところで、仕留める。
無論、一発で仕留めなければ、魚は逃げるだろう。
完全に心臓を射抜かなければならない。
ボクは静かに着水し、魚を見つける作業に移る。
その魚を水中に潜り、仕留めるのだ。
簡単なことだが、奥は深い。
正面から捕らえようと思えば、恐らく相手は自分の身の危険を察知し、逃げるだろう。
逆に、背後から捕らえようとすると、川の流れに逆らうことになってしまう。
完璧な場所から着水し、水と同化する。
殺気を抑え、息の続く限り魚を追う。
魚が油断したところで、仕留める。
無論、一発で仕留めなければ、魚は逃げるだろう。
完全に心臓を射抜かなければならない。
ボクは静かに着水し、魚を見つける作業に移る。
だが、何かがおかしい。
いつもなら、魚はこんなに沖の方に向かって泳ぐことはないはず。
すると、師匠は大きな声で静かに囁く。
すると、師匠は大きな声で静かに囁く。
その声は、悲しみを感じさせる声量であった。
「今日は止めだ。魚が怯えている。」
今日の水はなんだか冷たい。
ボクも早々に切り上げ、帰る準備をした。
一瞬。
師匠の片付ける手が止まった。
思わず、ボクも手を止めた。
時間が止まったのか。
それは違うようだ。
風の音だ。
なにかよくないものを運んでいる。
「今日は止めだ。魚が怯えている。」
今日の水はなんだか冷たい。
ボクも早々に切り上げ、帰る準備をした。
一瞬。
師匠の片付ける手が止まった。
思わず、ボクも手を止めた。
時間が止まったのか。
それは違うようだ。
風の音だ。
なにかよくないものを運んでいる。
その風はボクらの頬を冷たく染め上げて、森の方へ消えていった。
微かに、血のにおいもした。
ボクは思わず、口を開いた
師匠は見向きもせず、ただ立ち上がる。
今日は何かがおかしかった。
ボクが剣を構える体制に入ったその瞬間。
物陰から小さな影が現れた。
ボクは襲い掛かろうとしたが、師匠はいつの間にかボクを止めていた。
師匠はその影に歩み寄る。
よくみるとそれは、森の民である妖亀であった。
「大丈夫か。主は...」
「森の民が…」
「お主、怪我をしておる。」
師匠の気遣いもかまわず、亀は呟いた。
「あ、あなたは大樽のヤンマさんですよね...?」
大樽のヤンマ。
森の民は師匠をそう呼んでいた。
昔、この森では戦争があった。
それはとても長い戦争だったが、森の民たちは全員で力を合わせ、その戦争に終止符を打った。
微かに、血のにおいもした。
ボクは思わず、口を開いた
師匠は見向きもせず、ただ立ち上がる。
今日は何かがおかしかった。
ボクが剣を構える体制に入ったその瞬間。
物陰から小さな影が現れた。
ボクは襲い掛かろうとしたが、師匠はいつの間にかボクを止めていた。
師匠はその影に歩み寄る。
よくみるとそれは、森の民である妖亀であった。
「大丈夫か。主は...」
「森の民が…」
「お主、怪我をしておる。」
師匠の気遣いもかまわず、亀は呟いた。
「あ、あなたは大樽のヤンマさんですよね...?」
大樽のヤンマ。
森の民は師匠をそう呼んでいた。
昔、この森では戦争があった。
それはとても長い戦争だったが、森の民たちは全員で力を合わせ、その戦争に終止符を打った。
その時に、
激励の酒という意味をこめて、森の民全員で『ひとつの酒』を作ろうと。
森の民になるものは、その酒を何十倍に薄めたものではあるが、酒を足にかけて、その者を『共に森を歩んでいくもの』として歓迎した。
そのため、森の団結力は一層堅くなった。
いわば、森の民を支えたのは師匠の酒のお陰なのかもしれない。
「森のみんなが、どうかしたのか。」
「森のみんなが、どうかしたのか。」
師匠は恐れながらも聞く。
「ひ、氷帝の…」
その時師匠は大きく目を開く。
「な、なぜだ。なにがあった!??」
師匠は取り乱した。
「オルガ…、オルガがこの森を凍らせようとしています。森どころではなく、全世界。みんなはその寒さに耐え切れず、次々とオルガの氷の魔力に落ちて、皆、氷漬けに……。私も、命辛々生き延びましたが、脚に雹槌を喰らいました。長くはないかと…。」
師匠の目はなにか遠いものを見ていた。
師匠は小さく口を開けて、何かを呟いていたが、ボクにそれは聞こえなかった。
「どうかオルガを...みんなを」
「ひ、氷帝の…」
その時師匠は大きく目を開く。
「な、なぜだ。なにがあった!??」
師匠は取り乱した。
「オルガ…、オルガがこの森を凍らせようとしています。森どころではなく、全世界。みんなはその寒さに耐え切れず、次々とオルガの氷の魔力に落ちて、皆、氷漬けに……。私も、命辛々生き延びましたが、脚に雹槌を喰らいました。長くはないかと…。」
師匠の目はなにか遠いものを見ていた。
師匠は小さく口を開けて、何かを呟いていたが、ボクにそれは聞こえなかった。
「どうかオルガを...みんなを」
民の息は次第に荒くなる。
師匠は大きく呼吸をしてから、決心した。
師匠はコブシを握り締めた。
師匠は大きく呼吸をしてから、決心した。
師匠はコブシを握り締めた。
「よ...よかった...!...」
次の瞬間。
一枚残った枯葉が散るように。
水滴が地面に落ちるように。
ただスッと。
亀は前のめりになった。
「死におった。」
師匠は呟いた。
「師匠、ボクにできることは。」
師匠はボクの顔を見たが、すぐに地面を見た。
ボクも地面を見たが、そこには何もなかった。
師匠は呟いた。
「師匠、ボクにできることは。」
師匠はボクの顔を見たが、すぐに地面を見た。
ボクも地面を見たが、そこには何もなかった。
そこにあったのは、冷たい雫。
そして、雨が降り始めた。
師匠は静かに。ゆっくりと。その足を森の奥に踏み入れた。
何故だろう。
もう戻ってこれない気がした。
この場所に。
この日常に。
平穏だった日々に。
もう夜空をきれいだと思えなくなるかもしれない。
それでもボクは
ボクは師匠の足を追った。
師匠が不思議そうに話しかけた。
「お前は」
とまで口に出したが、師匠は何かを隠すように空を見上げた
ボクは口を開いた。
でも。
ボクも何も言わなかった。
少し歩くと泉が見え、そこに民たちが群がっているのが見えた。
ここに来れば、民たちはいつも楽しそうに生活していた。
そんな民たちは消えたかのように、この泉は物静かになっていた。
ただ悲しみの呻き声や喘ぎ声を除いて。
群がっていた亀たちは、たくさんの亀たちを弔っている最中だった。
ボクはその亀たちの間から炎に焼かれ、煙になる亀たちを見た。
惨すぎる。
その空気を切るように、師匠は口を開いた。
「すまない。何も救えなかった...。」
亀たちは目に涙を浮かべながら、師匠と僕を見た。
一匹の亀は答えた。
「オルガは...。」
「西に...、奴の塔があります。」
師匠は静かに。ゆっくりと。その足を森の奥に踏み入れた。
何故だろう。
もう戻ってこれない気がした。
この場所に。
この日常に。
平穏だった日々に。
もう夜空をきれいだと思えなくなるかもしれない。
それでもボクは
ボクは師匠の足を追った。
師匠が不思議そうに話しかけた。
「お前は」
とまで口に出したが、師匠は何かを隠すように空を見上げた
ボクは口を開いた。
でも。
ボクも何も言わなかった。
少し歩くと泉が見え、そこに民たちが群がっているのが見えた。
ここに来れば、民たちはいつも楽しそうに生活していた。
そんな民たちは消えたかのように、この泉は物静かになっていた。
ただ悲しみの呻き声や喘ぎ声を除いて。
群がっていた亀たちは、たくさんの亀たちを弔っている最中だった。
ボクはその亀たちの間から炎に焼かれ、煙になる亀たちを見た。
惨すぎる。
その空気を切るように、師匠は口を開いた。
「すまない。何も救えなかった...。」
亀たちは目に涙を浮かべながら、師匠と僕を見た。
一匹の亀は答えた。
「オルガは...。」
「西に...、奴の塔があります。」
亀はさらに何かを言おうとしたが、師匠はそれを遮るかのように答える。
「分かった。」
「分かった。」
師匠はこれ以上何も言うまいと、一歩ずつ歩む。
師匠は、僕に告げた。
「お前はここで待っていろ。」
だが不満を師匠にぶつけた。
「ボクも行きます、行かせてください。」
師匠が言う。
「ダメだ。」
ボクは続ける。
「行かせてください。」
師匠は、困った顔でボクを見た
その時の師匠の目には、涙が溜まっていた。
「ここで待っていてくれ。」
師匠は、僕に告げた。
「お前はここで待っていろ。」
だが不満を師匠にぶつけた。
「ボクも行きます、行かせてください。」
師匠が言う。
「ダメだ。」
ボクは続ける。
「行かせてください。」
師匠は、困った顔でボクを見た
その時の師匠の目には、涙が溜まっていた。
「ここで待っていてくれ。」
涙と共に、感じたこともない殺気が見えた
ボクは、師匠の背中を見送ることしかできなかった。