AIM の世界セイハ日記 Back in California -497ページ目

クラッシュ

こんばんは。写真を毎回楽しみにしているみなさん、今日は写真はありません。ちょっとここで複雑なお話です。こういうことは、感じたときに書き留めておくのが大事だと思うので、日本国内だけで生活をされていて海外事情を知らない方々のためにもお伝えしたいと思います。前にも人種問題については軽く触れましたが、今回もそれに関するものです。

今日はNくんの働き始めた会社が、今度発売される高級時計をコンセプトにした、ジュエリー感覚の携帯のデザイン、内容とうの公開レセプションを行いました。資金提供者や有名な方々が招待されており、カンパニーにとっては重要なイベントです。

エイムが訪れたのは、3時ちょっと過ぎ、あまりまだ人は来ておらず、Nくんの会社の人々に紹介され、初公開の携帯をぐるぐる見て回りました。

心にぐっと来る経験をしたのは、ちょっと久しぶりですが、これをどれだけの感覚で受け止めたらいいのかわかりません。ある女性社員のお父さんの無知なひと言がすべての空気を変えてしまったのです。

Nくんの会社仲間に囲まれて、日本についていろいろと聞かれていたときです。突然、そのお父さんが、私を見て、きれいな目をしているねっと言ってきました。人種の違う人に会い慣れてない人々のよく使う、何話していいか分からないからとにかく見た目の違いを話そうという典型的なものです。デンマーク人は肌の色よりも顔の作りの違いに焦点を当てる人が多いようです。「へへへユニークでしょっ」と苦笑いでかわすエイム。そこまではよかったのです、、、、、。(ちなみに私の目は普通の日本人の奥二重です。)

「うーんアジアの人はどうして目が違うんだろーね」とフォローするNくん。事前にパンよりお米のほうが好きと話していたせいもあって、やさしい顔をしたお父さん、いきなり、目の両脇を手で抱えて目を吊り上げながら、「あーまたお米を食べなければいけな~い叫び」と、このジョークを言えるときを待っていました風に、叫び始めました。気まずいジョークに、空気は一瞬かたまり、私も一瞬意味が分からずNくんのほうを見ました。

「デンマークのアジア人に対するインターナルジョークだよ、ははは」とその場を乗り切るNくん。空気が読めず、ジョークを分からせようとリピートするお父さん。笑わえないでいる他の会社員と私に対し、まずいと思ったお父さん、面白くなかったねっとちっちゃくなります。

Nくんにつられ、ミーティングルームへ。

二人だけになり、ぼそぼそっと、今のジョークはちょっと失礼だったねと言い出すNくん。あれは差別的表現だ。と、、、。

しばらく平然としていましたが、「人種差別」というものを言葉にされたとたん、涙がぽろっぽろっと出てきました。ぎゅーっと私の肩を抱えてから、ちょっと待っててね、話してくると部屋を飛び出すNくん。冷静にNくんが状況を話した後、そのお父さんはぶるぶる震えながら涙目で謝ってきたそうです、、、。

人種差別とは人種の違う相手を嫌悪するあまりに被害を与えてしまうことであって、このお父さんのジョークはけして悪意のない、無知なものでした。ただ身体的な違いを指摘するのは、たとえデンマーク人の間でも失礼です。デンマーク人内で一般的にとらわれているアジア人のステレオタイプは目がつっていて、お米ばっかり食べている人々。友達や家族であれば、これぐらいハハハで終わります。あーまた言ってるよって相手の特徴もけなしてイーブンで終わります。よく知らない相手にこんなことを言われるともちろん、悪意で人をバカにしているのか、本当に冗談なのか分からないところが危険です。

娘の晴れ舞台を見に来たおとうさん、たったひと言の過ちで深刻な場を作り上げてしまい、まわりから白い目で見られ、ちょっと心が痛みます。そして、デンマークで所属する場もなく、デンマークという場所を探りに探りながら不安をもち続ける私の心にぐさっとささったものは、悲しくも一緒に笑えなかった人種の壁でした。

人種差別とは、歴史的に劣等感を抱き続けてきた人々が大げさにコンプレックスに感じているもので、こういうささいなことを大きく捕らえるか捕らえないかは考え次第です。日本人は欧米諸国で育ったアジア人とは別で人種の違いにすごーくうとく、免疫がありません。デンマークの人々も、同じく人種差別にすごくうとく、自分の言っていることが他国ではタブーなのを知りません。

目がウルウルしたエイムを一人で帰すことができなったNくん。後で打ち上げパーティーに出席しなければならないのに、1時間かけてて一緒に電車にゆられ、家まで送り届けてくれました。そして、一人で大丈夫?と言いながらまた家を出かけていきました、、、、。本当に傷ついたのは、私ではなくNくんかもしれないとふっと思いました、、、。うーん、複雑です。