カイシャ脳 | コンサルサルのぶろぐ-思考、読書、雑感などを語る

コンサルサルのぶろぐ-思考、読書、雑感などを語る

外資系IT企業で働くコンサルタント&プレイングマネージャーのブログです。日々の雑感や読書日記を紹介します。

今日の日経新聞「カイシャ脳を鍛える時代」を読んで、昔からコンサルティングファームでは資産とされてきたナレッジデータベース、ナレッジマネジメントがAI特に生成AIの進化でますます重要になってくると思います。


テクノロジーの進化に加えて、社会的背景として、great resignationつまり大退職時代において、人にジョブをつけて会社組織を動かすことはサステナブルでなくなり、ジョブに人をつけるまさにジョブ型マネジメントでないと成り立たなくなります。


よって生成AIを活用し、会社全体の脳みそを鍛え続けて、ある程度の仕事は誰がやっても再現できるような環境にしないといけない。ここに活路があるのではないかと思います。


私もコンサルティング事業の組織長の端くれですが、育成した若手・中堅世代が転職をしていくのが当たり前の業界。一方で学生の方々からはDXトレンドで一定数入社してくれ、育成に投資をしています。


コンサル分野と生成AIの共生は個人的には可能と考えており、お客様へのサービス品質の一定レベルの維持、またコンサルならでは価値を届けるためにも、まずはコンサル会社自身がカイシャ脳を鍛え続けることが重要と考えます。


日経新聞記事 2023.09.07

カイシャ脳を鍛える時代


 「21世紀の石油はデータ」。この10年ほど繰り返されてきたフレーズだ。確かにGAFAMなど有力テクノロジー企業は膨大なデータをテコに巨大な富を手に入れた。一方、その他多くの企業にそこまでの手応えはないだろう。

 データがないわけではない。米デル・テクノロジーズが従業員250人以上の企業と公的機関1000組織を調べたところ、管理するデータの量は2022年で平均9.8ペタ(ペタは1000兆)バイトに達した。16年の7倍近い。

 文字や画像、音声と形式はさまざま。顧客や財務の情報など中身もいろいろだ。整理されたものも、されていないものもある。すべてフル活用とは言いがたい。

 だが、生成AI(人工知能)の台頭が転換点になるかもしれない。多様なデータを学習し、巧みな文章や凝った映像も生み出す技術は、企業が情報資産からより多くの価値を引き出す力を秘める。

 だから経営の重要テーマとして浮かび上がるのは、各社が「カイシャ脳」とでも呼ぶべき独自のAIをつくりデータで鍛えることだ。経営版の「脳トレ」といえる。

 

 そんな企業同士の新たな競争を見すえた試みが始まっている。

 スタートアップのRevComm(レブコム、東京・渋谷)が目をつけたのは口頭でのコミュニケーションだ。電話やオンライン会議、対面での会話が生む音声データをむだにせず集め、企業が経営に役立てるのを助ける。

 同社のサービスを使うと、取引先や顧客とのやり取りは音声解析される。発言と沈黙の割合、話す速度のほか、話し手の感情がポジティブかネガティブかも推定してパソコンに表示する。営業効率や顧客満足度を高めるヒントになるが、それだけではない。

 どんな案件に、どんな対応をしたら、どんな結果になったのか。それがわかる会話データが大量にたまれば、その会社のAIにとって貴重な教材になる。営業や商品企画、人事などに関する意思決定の場面で有用な助言をするカイシャ脳の実現に近づく。

 「いずれ企業間でAIの貸し借りが起きる」。会田武史代表取締役はそう予想する。国境をまたぐM&A(合併・買収)の経験が豊富な大手商社のAIを、海外進出をねらう中小企業が1時間30万円で借りて戦略を練る。そんなイメージだ。各社独自のAIが経済活動を回すキーファクターになる。

 企業とデータのつき合いは古い。歴史と会計の専門家ジェイコブ・ソール氏の著書「帳簿の世界史」によると、例えば18世紀に誕生した陶磁器ブランドの英ウェッジウッドは、生産時間や賃金、原料費などを綿密に計算した創設者が成功の土台を築いた。数字という定量データを経営に生かそうと企業は長く知恵を絞ってきた。

 いま生成AIを携えた企業は、言葉という定性データにも分け入って本格活用する入り口に立つ。「(経営の様子が)複合的に見える化される」とコンサルティング大手ベイン・アンド・カンパニーの安達広明パートナーは話す。

 

 すぐれたカイシャ脳をつくりたければ、自社の姿を正しく示すデータをAI学習のために用意しなければならない。企業にはなすべきことがまだまだある。

 従業員たちは、この会社でどのくらい働きがいや一体感を感じているのか――。クラウド型財務・人事サービス大手の米ワークデイは、企業が高い頻度でエンゲージメント調査ができるしくみを提供する。世界で1500社が使う。

 ワークデイ自身も利用者だ。週1回、1万7800人の従業員に5つの質問がメールで届く。選択式で答え、コメントも書ける。所要時間5分。回答は匿名だが、従業員の思いがつかめ職場改善などの手がかりになる。

 エンゲージメントの高低は企業の生産性を左右するといわれる。経済や働き手の意識の変化は速く、半年~1年に1回といったペースの調査では従業員の新鮮な声を聞きのがす。ラグー・プラサド副社長は「従業員が何を考え、何をしているか。日常的に知るデータがいる」と訴える。

 企業が世に送り出す商品の動きにかかわるデータも、活用は道半ばだ。小売業で在庫の徹底管理はイロハのイのように思えるが、現実は必ずしもそうなっていない。

 例えばアパレルや化粧品の売り場だ。帳簿のうえでは在庫があるはずの商品なのに、盗難にあって実際には無いといった事態がままある。倉庫からの品出し漏れもある。商品一個一個のありかをリアルタイムにつかむデータなしに機会損失は防げない。

 

 改めて注目されるのが、無線自動識別(RFID)タグだ。目新しい技術ではないが、段ボール箱に入ったままの商品も一度に複数のデータを読み取れる利便性から需要が膨らみ続ける。その数は世界で年300億枚以上とされる。

 RFIDの米大手エイブリィ・デニソンの場合、この事業の売上高は5年で3.2倍になった。「企業に見えていない世界が多くある」。データはまだその本領を発揮していないと同社幹部は語る。

 8月28日、米オープンAIは代表的な生成AI「Chat(チャット)GPT」を安全に使うための大企業向けサービスを発表した。企業がAIを深く経営に埋め込むひとつの契機となりうる。

 データが質、量ともに充実し、頼りになるAIを訓練できるだけの環境が整っているか。経営者は総点検のときを迎えている。