戦略思考を鍛える:Gree | コンサルサルのぶろぐ-思考、読書、雑感などを語る

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外資系IT企業で働くコンサルタント&プレイングマネージャーのブログです。日々の雑感や読書日記を紹介します。

今月から自分の戦略思考を鍛えていくために、
一ヵ月に一つの会社を選んで、その企業の新規事業戦略を練ってみることにしました。
空いている時間でやっているので粗いですが、せっかくのなので、
このブログにアウトプットしたいと思います。

ここで書くことは私のお仕事とは関係なくやっておりますので、
念のためお知り置き下さい。

2015年1月の企業はグリーの新規事業立案を考えてみたいと思います。。

まずはグリーの基礎情報から紹介したいと思います。

1. グリーの基礎情報

グリーの基礎情報は下記の通りです。

【グリー株式会社基礎情報 ※2015年1月時点】
◆ 経営理念
インターネットを通じて、世界をより良くする。

◆ 事業内容
- ゲーム事業
- コマース・ライフスタイル事業
- コミュニティ・メディア事業
- 広告事業
- 投資事業

◆設立
2004年12月7日

◆代表者
代表取締役会長兼社長 田中 良和

◆ 本社所在地
東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー

◆ 従業員数
1,867人(グループ全体・2014年9月末現在)



2. グリーの事業環境分析

次にグリーの財務分析を行いたいと思います。

2014年6月期の売上約126,000百万円。
2012年6月期ピークの約160,000百万円から減少傾向にあります。
また経常利益も同じ現象です。
競合会社の一つと言われるDeNAは一人勝ちの様相で、
ここ数年、売上・経常利益ともに順調に伸ばしています。

一方でコストサイドは、原価率・営業費用率共に高くはありません。
販管比率は若干DeNAより高い程度でコスト構造に大きな問題を抱えていると言えないかと思います。

2012年の業績に回帰をしていくことが当面の目標であると言えるでしょう。

続いて、内部・外部環境分析をします。

グリーの内部環境分析(SWOT)をすると次のようにまとめられると思います。

【Strength】
ブランド価値(グリーという会社が社会でも認知をされている)
ものづくりの能力の高さ(開発能力が高い)
キャッシュの多さ
GREEプラットフォームの存在

【Weakness】
子どもの高額課金問題やコンプガチャの規制でのイメージ失墜
ここ近年ヒットゲームがない(Mixiのモンストやガンホーのパズドラ等競合にヒット)
経営能力が乏しい(ベンチャー経営の体質が抜けていないか)
海外展開の失敗(急速な展開に舵を切ってしまったことによる弊害)

【Opportunity】
ゲーム事業からの多角化
⇒ 現にグリーは現在旅行、リフォームEC事業に乗り出している。

新しいネット時代の始まり

【Threat】
参入障壁が低く、競合他社が沢山いる

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次に外部環境分析はPESTを使って次のようにまとめました。

【Political】
ソーシャルゲームへの規制の強化
グローバル成長戦略へ政府が梶取り(教育を含む)

【Economic】
スマホの急速な普及

【Social】
スマホ・タブレット文化の定着
ネット時代はますます隆盛する

【Technology】
人工知能やディープラーニング、ロボット産業に流行の兆しあり
シリコンバレー、インド・バンガロールの発信が強くなってくる
ゲーミフィケーション
Internet of Things

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現在のグリーの戦略は、ゲーム事業に次ぐ新たな柱を作っていくことを、
グリーとしては目指していることがわかります。
また新しい柱を作っていくための資金や開発能力は十分にあると言えるでしょう。

一方でソーシャルゲーム産業は様々な社会問題や規制があり、
グリーを始めとするソーシャルゲーム会社の存在は認知されていますが、
ブランドイメージが高いとは言えません。
今後企業価値を高めていくためにも、ブランド力を向上する取り組みが必要です。

外部環境としてはネット事業を柱とするグリーには今後も追い風と言えるでしょう。
競合他社とは異なるきらりと光る事業・社会に役立つ事業を確立できれば、成長機会になるのではないかと分析しました。


最後に顧客はグリーに何を求めているのか。
グリーはもともと釣りゲームで、ソーシャルゲーム企業として礎を築いてきました。
私はこの釣りゲームはやったことがないですが、顧客の気持ちになって考えると、
きっとグリーには「わくわくするエンターテイメント」「おもしろいゲーム」を求めているのではないかと仮説を立てました。

3. グリーの競争戦略
ではグリーの打ち手は何でしょうか。
ポーター競争戦略論から考えると、

① コスト優位 ② 高付加価値化による差別化 ③ ニッチ市場への集中・独占

のいずれかを選択する必要があります。
今回はグリーがゲーム事業とは別に、もう一つの柱の構築を目指すべきと判断し、
③ ニッチ市場への集中・独占 を取ったらという仮定で論を進めたいと思います。

この③ ニッチ市場への集中・独占 を選択した場合、グリーの新しい競争戦略コンセプトを、

“250億円事業の新たな柱の確立、
IoT時代をにらんだ新たなワクワクエンターテイメントの提供”

と定義しました。
IoTはこれからのトレンドですし、ゲーム事業で培ったノウハウを新たな領域で挑戦していくことを検討したいと思います。

では新事業のドメインは何でしょうか。

(1) 誰をターゲットにしようか(Who(m))
(2) そのターゲットに何を売り込むか(What)
(3) そのためにどんな経営資源を具備するか(How)

私は海外展開の失敗を教訓にし、国内市場でかつグリーのイメージを高めるために教育をターゲットにすることを考えました。
そして売り込むものはIoTを核にするサービスであり、GREEのモノづくり能力、ゲーミフィケーションを活用したいと思います。

つまり、「GREE Education」という事業の創設です。
イギリスではIoTを学校教育に生かすプロジェクトが始まっているそうです。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/IDG/20130823/499742/

記事の内容を見るとゲーミフィケーションの延長のようなものですが、
グリーはGREE Platformという独自のアプリプラットフォームを持っており、
各学校と提供しながら、教育に役に立つアプリ群を提供することでGREE Educationの事業実現性が高まります。

また実現性という観点ではグリーはCSRの一貫で教育機会の提供をする活動を始めており、
事業化への社内的な障壁はないと言えるでしょう。

[参考]教員養成学部授業におけるアプリ教材づくり —ハッカソンにおけるプロトタイプ作成まで
http://corp.gree.net/jp/ja/csr/special/chiba-university/

GREE Educationでは、GREE Educationプラットフォーム上に各開発ベンダーが作った教育アプリが格納され、
顧客である学校は必要なアプリをダウンロードし、教育現場に役立てます。
またGREEサイドにも要件を伝え、欲しいアプリを作ってもらうことも可能です。
独自に作ったアプリは当然ながら他の学校でも使うことができます。

では収支計画はどのようなものになるか考えてみたいと思います。
2012年の業績に回帰するという目標を立てると250~300億円程度の事業にする必要があります。

今回の事業では学校を顧客にするという前提を置き、販売するものはGREE Educationプラットフォームへのアクセス権としました。
GREE Educationのアクセス権は1学校に付き年間100万円。

日本における学校数は小中学校・短大・大学併せて約4万。
この4万の学校に対して、最終的に6割程度のシェアを獲得できた場合、目標額に近い250億円程度の事業の柱となります。
開業1年目に約1割(4000校)と契約ができ、その勢いを持続されることができれば7年程度で目標額が達成できるプランになります。

事業化のリスクとしては、

- 学校教育現場が興味を持ち、100万円の価値があると思うか
- 学校現場に魅力のある教育アプリが作れるか
- グリーと言う企業が教育現場に受け入れられるか

と言ったことがあるかと思います。

一方で教育に参入することはGREEの社会・文化価値を高めるいい機会であり、
個人的にとても良い取り組みになるのではないかと思います。

昨年からグリーと言う会社は経営の岐路に立たされていますが、
やはりベンチャー気質であり様々チャレンジをしていく環境にあるようです。

最後に今回参考にした各Webのサイトを共有したいと思います。

◆ グリーとディー・エヌ・エーを分析する
http://toyokeizai.net/articles/-/37531

◆ 田中良和氏が語った、GREE停滞の原因と「世界で勝てる事業」とは?
http://logmi.jp/10428

◆ グリー(GREE)のホテル予約事業「Tonight」、アジアのホテル直前予約アプリと連携強化、役員を相互派遣へ
2015年 1月 14日
http://www.travelvoice.jp/20150114-35200

◆ グリー/リフォームECを買収/13億円で完全子会社化
http://www.bci.co.jp/netkeizai/article/364

◆ ものづくり企業としてのプライド--グリー藤本CTO
http://japan.zdnet.com/article/35058217/

◆ 「グリーは、ずっとダメな会社と言われてきた」
http://toyokeizai.net/articles/-/55084

◆ 「グリーがやるべき事業領域がわかった!」
http://toyokeizai.net/articles/-/55091

来月はANAの新規事業立案をしてみたいと思います。