若い監督(34歳)内田拓也の「しびれ」。最後に「母へ」と賛辞の言葉が出るけど、この映画に登場する母親は聖母のような慈愛に満ちた母ではない。
むしろ、息子にとっては悪魔のような存在。そんな母親を演じるのは宮沢りえ。これが見事までの毒親。宮沢りえは、女優の美しさをかなぐり捨てて、この毒親になりきっている。
そんな毒親に育てられる息子を演じるのは,子供時代から4人の男優。大人になった息子は主演としてクレジットされている北村匠海。
新潟の寒々しい風景を背景に、母子の人生が描かれる。
「しびれ」★★★★☆
暗い話。宮沢りえ演じる母親は意図的ではないにしろネグレクト。
一緒に暮らすひとり息子は、父親の激しいDVに接して失語症になる。なので北村匠海まで、息子を演じる4人の俳優にはセリフはない。
映画的なクレジットでは北村匠海と宮沢りえの主演になっているけど、実質的な主演はリレーで演じられる4人の男優。
それにしても、この母への愛は素朴なようで複雑。母親は母親にはなりきれない女。それでも、息子にとっての母親は絶対的な存在。男は皆、とこかでマザコンなのだ。
この映画は、それを思い切りデフォルメする。
宮沢りえの演技は圧巻。女優としての華やかさを捨てきって、この愚かな母親になりきっている。特に最後に登場する介護施設のシーンは見事。老婆に見える。
出番は少ないけど、このDV父親を演じた永瀬正敏も見事。
このふたりと北村匠海の演技を観るだけで、映画を観る価値がある。
レビューを見ると否定的な意見が多い。この救いのない物語を「つらい」と受け止めている意見が多かった。
でも、映画ってパッピーエンドな物語だけではない。
