イタリアに在住して、イタリアの魅力を伝えた作家、須賀敦子。20代30代をイタリアで過ごした彼女は晩年は日本に帰国、翻訳以外でもイタリア文化を伝える役割を果たした。
そんな須賀敦子の軌跡を写真家、大竹昭子が追ったフォト・エッセイ「須賀敦子のヴェネチア」。写真も豊富で、ヴェネツィアの魅力が余すところなく伝えられている。
といっても観光案内ではない、ヴェネツィアの素顔がうかがえる本。本はヴェネツィアの鉄道駅サンタルチアに到着するシーンから始まる。これ正しいヴェネツィアへの行き方だと思う。駅を降りると目の前の広がるグランドキャナル。瞬間にヴェネツィアについたことを実感できる。
そして、大竹は須賀がたどった道をたどっていく。小さな運河にかかる橋をわたり、入り組んだ小道を歩く。ユダヤ人のゲットーの跡を尋ね、普通の観光客が行かないようなザッテレの川岸を訪れる。
そして、リド島へムラーノ島へと周辺の島々を訪れる。この本を読みながら自分のヴェネツィア体験を思い出した。2回しか訪れていないので、詳しいとはいえないのだけど、それでもヴェネツィアは自分にとって永遠の憧れの街。
キャサリン・ヘップバーンの「旅情」の舞台であり、ヴィスコンティの「ベニスに死す」の舞台なのだ。
もちろん、映画の舞台になったリド島の高級ホテル「ホテル・デ・パン」も訪れた。高級ホテルへ宿泊もしないのに訪問するのは気後したけど、マネジャーらしき人は親切に館内を案内してくれた。
聞いてみると、意外に、それほど日本人が訪れることはないよう。「なんでここへ?」と聞かれる始末。「だってヴィスコンティの映画で有名でしょ」というとニコリと笑った。
もう、行くことはないかもと、感傷に浸りながら、この本を楽しんだ。

