21世紀になって渡航する回数が増えたのはバンコク。理由はホテルがリーズナブルだし、エアもLCCを含め多彩。気軽に行ける場所だった。年末年始でも価格はリーズナブル。
さらに、年末年始は天候も安定しているので、コロナ前の数年は毎年バンコクで年越しをするのが通例になっていた。大晦日のチャオプラヤー川の年越し花火も楽しかった。
そんなバンコクでも映画は欠かせなかった。サイアム周辺にはシネコンもたくさんあったし、名画座的な映画館もあった。シネコンでは800円ー1000円程度の料金だったけど、古い映画館では500円弱でアート映画を観ることが出来た。
そんな映画館で15年に観たのが、今やアカデミー賞にも常連になったヨルゴス・ランティモス監督の「ロブスター」。主演はコリン・ファレル、レイチェル・ワイズ・さらにベン・ウィショー、ジョン・C・ライリー、オリビア・コールマン、レア・セドゥという渋い豪華なキャスト。
国際映画祭で才能が認められた監督の国際的な規模、キャストでの初めての作品。このあと、オリビア・コールマンがオスカーに輝いた「女王陛下のお気に入り」エマ・ストーンがオスカーに輝いた「哀れなるものたち」へと続いている。
この時はランティモス監督の名前など知らなかったけど、映画好きの友人から「次世代を担う監督になるのは、このひとらしいので、今、観ておくべき」と勧められた。(そういう時は意外に素直に従うのだ)
映画が友人が言っていたように奇妙なテイストの映画だった。まあアート映画らしい映画。でも、ストーリーやシーン描写は妙に頭に残っている。
昔、淀川長治が映画雑誌に「人の薦める映画は、(観ている間に)寝てもいいから観なさい。必ず後に、何かが残るから」と言っていた。アンゲロプロスなんて、まさにそう。このランティモスの作品もそんな1本だった。それを渋谷ではなくバンコクで観るのが妙な味。