24年映画は映画館で153「バティモン5」パリ郊外の移民の息詰まる現実 | con-satoのブログ

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 フランス映画「バティモン5」の舞台はパリ郊外。普通なら観光客が訪れることはないエリア。パリ周辺(電車で20分から30分ぐらい離れたエリア、東京なら川口、川崎みたいな街)にはこのような貧民層、移民たちが住むエリアが多くある。(さらにいえば、このエリア「ピカソ」とか美しい地名を与えられていたりするのも、一つの特徴)

 映画は俗に「バティモン5」と呼ばれる地域の集合住宅を壊して、貧民層を一掃しようとする臨時市長との攻防が描かれる。


「バティモン5望まれざる者」★★★☆☆

 監督は同じような移民たちの現実を描いた「レ・ミゼラブル」で高く評価されたラ・ジリ。本人もこのようなエリアの出身。

   なので、彼の姿勢はあくまでも移民側。彼の怒りはわかるけど、映画として作るなら、もう少し複眼的な視点が必要なのではないかと思う。

 もうすぐオリンピックが開催されるパリ。このメインスタジアムになるのはサッカースタジアムとしても使用されている「スタッド・フランス」。あのサンジェルマンのホームスタジアム。

 日本人も見たことがある人が多いと思うのは、シャルル・ド・ゴール空港からパリ市内に向う高速道路の脇にあるから。このスタジアムのあるサンドニはまさに移民たちの町。もちろん治安は良くない。

 パリジャンはシャルル・ド・ゴールに行く郊外列車を使いたがらない。それは、このサンドニを通過するから。「怖くて乗れない、乗りたくない」という。これも、ひとつの側面なのだ。


 この映画を観ると郊外に住む彼らは一方的な被害者という風に見える。しかし、犯罪者も多い。この映画でも主人公も看板に放火するし、恋人はもっと重い犯罪行為をする。

 犯罪に走るのは貧困だから、差別されるからで許されるのか?問題の根は深い。しかし、最終的に略奪、放火など犯罪に走る輩を許すのは違うと思う。そんな含みのあるラストシーンだった。

 双方が理解する糸口があるのか、この手の映画だからこそ、融和の希望を見せて欲しかった。

(少なくともパリにおける、この手の争いは30年以上前から続いている。建物はスクラップ&ビルドを繰り返し、結局10年もするとスラムに戻るを繰り返しているのが現実。正直、30年、前に進むどころか、少しずつ、でも確実に後退(対立の激化)するばかりに映る。)