1966年、今からおよそ60年前の日本映画の名作「白い巨塔」。先日BSプレミアムシアターで放映された。何度も映像化された名作。しかし、名作といわれる、この作品を含め何度もドラマ化されているのに、映像作品を見たことがなかった。
もちろん主人公が財前だということは、見なくても知っている。あの主任教授の回診のシーンも。
それほど名作なのだ。(入院していた時、あんなシーンに出くわすと「白い巨塔」が浮かんだ)
何で見なかったのか、その理由は明らか。それは、この映画をまず先に見なければいけないと思っていたから。しかし、何度かあったチャンスを逃していた。
やっと見た名作。もちろん財前を演じるのは田宮二郎。遺作もこの「白い巨塔」のドラマ化作品というのも因縁深い。田宮二郎の俳優生活には山崎豊子は欠かせない存在。
監督は名匠、山本薩夫。脚本は橋本忍。キャストも名優揃い。日本映画、大映の最後の現代映画の名作だったのかも。(キネ旬1位)
田宮二郎は財前そのもの。当たり役というのはまさに、この映画の田宮二郎のようなものなのだろう。
山本薩夫の演出も冴えまくる。普通、現代劇は時代を経ると古くなるといわれるが、風景は変わっても人間の本質は変わらないので、ドラマとして古びない。
あの義父のようなわかりやすく、えげつないおっさんはいなくなったかもしれないが、えげつなさは形を変えて存在する。わかりにくくなった分だけ、今の方がかえって始末が悪いかも。
2時間30分があっという間。手術のシーンなどリアル。カット割も早いテンポで進む。
小沢榮太郎、東野英治のしたたかなオヤジ対決もなかなか凄いが、加藤武演ずる風見鶏のような妖怪な教授の存在もリアル。
それにしても田宮二郎は現代劇が似合う。颯爽としているだけでなく、人間の欲深さ、醜さをスマートに見せる。日本映画史に残る名優。大映時代の田宮二郎作品の特集を見たいなと、田宮作品を観るたびに思う。