戦後のヤクザ界のスターから映画俳優になった安藤昇を書いた石原慎太郎の昭和。 | con-satoのブログ

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 石原慎太郎が書いた、同時代を生きた元ヤクザ、安藤昇の評伝「あるヤクザの生涯・安藤昇伝」を読んだ。


 戦後の若者のイコンだった石原慎太郎と裕次郎。その同時代を生きた安藤昇。

 慎太郎が一番憧れをもったのは彼が特攻崩れだということだったのではないか。世代的には、少しの差で戦中を経験しなかった慎太郎。兵士になった安藤。死の覚悟を実感したからこそ、死なないヤクザの道を選んだ安藤へのシンパシーがあったように思う。

 もちろん、彼が他のヤクザとは違い、インテリでダンディだったということも大きいだろう。

 それを令和の時代に発表したのは、自分の死を意識して、自分の美学をまとめたいという思いと、昭和の時代の寛容さへのノスタルジーが潜んでいる。

 案の定、ネットの評を見ると安藤がヤクザだったことへの不快感で溢れている。「反社が俳優になるなんて信じられない」という意見が主流。コンプラで何事もハラスメントになる時代。

 多様性といいつ、実は本当の多様性には目をつぶるような建前に、昭和の慎太郎を疑問に感じていたのだろう。それがヤクザ界のスターからスター俳優になった安藤昇という破天荒な男に託されているように思った。

 それにしても、リアルなヤクザが映画俳優になったのは安藤昇だけだろう。ハリウッドにはモンローをケネディにくっ付けたジョージ・ラフトなどという人もいた。ワルの魅力って、あるのだろうな、縁遠い世界だけど。