24年映画は映画館で118「悪は存在しない」人間の根幹を問うような心を抉る作品 | con-satoのブログ

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 海外での評価が高まっている映画監督、濱口竜介。新作「悪は存在しない」が公開された。昨年のベネチア国際映画祭に出品され銀獅子賞(審査員大賞)を受賞した作品。

 舞台は長野の高原。この町にグランピングの施設が計画される。何故か、運営するのは芸能プロダクション。資金繰りに苦しくなった芸能プロダクションの社長がコンサルの知恵を借りて、補助金欲しさに計画したのだ。その説明会に駆り出された社員と、計画を危惧する地元民との攻防が描かれる。


「悪は存在しない」★★★★★

 ちょっと凄い映画を観た!というのが正直な感想。環境問題映画のように装っているけど、主題は全然違う。プリミティブな人間の感情が描かれる。

 この映画を観終わって、思い浮かべたのが柳町光男監督の1985年の「火まつり」。北大路欣也演じる熊野の男を主人公にした神話的な物語。この映画でもモチーフになっているのは森の木々だった。

 この「悪は存在しない」の主人公も森に生きる男。その男の自然に関するプリミティブな感情が、柳町作品と重なる。

 日本ではアート映画の観客はいないと言っていた濱口監督の心配をよそに渋谷のル・シネマは毎回満席の盛況。宮下坂に移ってこんなに混んでいるル・シネマは初めてだった。

 40年前に観た「火まつり」の異様な興奮を思い起こさせるほど、ある種、異種な映画だったけど、個人的にはこれほど完成度の高い日本映画は今年出ないだろうと思う。

 1ショットとして無駄のない映画。間違いなく今年の日本映画の頂点の作品。