山本一力の現代小説「ずんずん」を読んで、宮本輝の偉大さを再確認。 | con-satoのブログ

con-satoのブログ

映画を中心にエンタメ、旅などを紹介しています。

 山本一力の現代小説「ずんずん」を読んだ。元気の良さそうな表紙、この作家が下町を舞台に現代小説を書いたら、どんな作品になるのかと手にとってみた。


 小説の舞台は人形町にある牛乳販売店。祖父の代から始まった販売店。3代目を継いだ主人公。下町ならでのきめの細やかさで繁盛している。年長の配達員が届け先の一人暮らしの老婆を助けたことで物語が展開する。牛乳配達員は配達先の日々の生活のようすにまで気を配っているのだ。

 小説では、この話をもとに近所で事務所を構える広告の制作会社が、この話を美談として捉え、全米で繰り広げられる日本企業のイメージ広告に採用されるという展開。

 山本一力らしい下町の人情話なのだけど、ゆるい。同じエリアを舞台にした宮本輝の「水のかたち」と比べると人間への作家としての洞察力が浅い。

 小説を読んでいる間、どうも企業PR誌のノリだなと思った。なるほど、その通りのようで、この小説、発売してすぐに明治の1社提供でスペシャルドラマ化されていた。

 キャストを見ると宅配の部分だけをドラマ化しているようで、全米でも広告からみの話はカットされていたよう。

 主演が小堺一機ということは、そうとうにベタな人情話にしていたのだろう。この原作よりもっと甘い、企業に都合のいい話。

 この小説では牛乳の宅配と新聞配達が日本のきめ細やかなサービス心の象徴として描かれている。小説が発表されて10年しか過ぎていないけど、どちらとも、現状のビシネス面では風前の燈状態。ということは日本の美徳が消えつつあるという風になってしまう。

 その辺の時代感覚の弱さも山本一力が宮本輝に遠く及ばない点。宮本輝の小説なら20年前の作品でも古さを感じさせない。

 あまりもベタな展開に4/5読んだ時点で読むのをやめた。小説を途中でギブアップするのは数年ぶりのこと。もう山本一力の本は読むことはないだろう。