イギリス映画「アフターサン」は大人になった女性が、子供の時、父親と旅したトルコの夏旅を思い出すという設定。映画で使われるのは、当時、ホームビデオで撮影したという設定の元に撮影された映像。
予告編では「あの時は理解できなかった父」。などというフレーズがあった。ならば本編を見れば父親が抱えていた問題の本質が描かれているのかと思って観た。
映画の売りは、各映画祭で監督賞などを受賞していること。それならば、どんな謎を高等なテクニックで見せてくれるのだろうかと期待していた。
「アフターサン」★★☆☆☆
そんな期待は見事に外れた。父親がなんで悩みを抱えていたのかも、なんで母親とは別れたかも、大人になった彼女が、そんな父親に対して、今、どんな感情で、あの時を思い出しているのかも、描かれてはいない。
淡々とその旅のことが、ビデオまじりの映像で映される。こういう映画が「優れている」と評価されるのも理解できなかった。
主演のポール・メルカルがアカデミー主演男優賞にノミネートというのも、その価値が共有できない。自然な演技だけど、格別「記憶に残る」とか「うまいな」と思えるような演技ではなかったように見えた。
もう少し、大人になった彼女の視点というのがはっきりすべき作品ではないか。30そこそこで死んだ父親。その年齢になって、あの時、パパってこんな風に思っていたのだと理解するという視点の明確さが必要だと思った。雰囲気だけで、あとは察してという映画。ある種の気取った鑑賞者には、こんな描写が受けるのだろうか?