トルコ・ギリシアを旅した村上春樹のエッセイ「雨天炎天」①怖いトルコ | con-satoのブログ

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 村上春樹の旅エッセイは面白い。小説より好き。この人のものの見方が平たいようで、平たくない、そんなこだわりが見えるのも魅力。


 ギリシアの聖地アトス半島とトルコを周遊した記録。旅したのはソウルでオリンピックが開催されている時期。テレビでソウル五輪を見ている描写が出てくる。つまりは1988年。(本が発行されたのは1991年)

 このトルコの描写。タイミングがぴったりなのは、地震があったトルコ南部のことが詳細に書かれているから。トルコ南部の実態を取材した記述なんて珍しい。

 現在地震被害が懸念されている地域。実はこのトルコ・シリア国境は、なかなかに問題の多い場所。(シリア国境だけでなく、イラクなども)そこには独立運動を仕掛けるクルド人も多く住んでいる。

 今回の地震も、このエリアなので、もちろん背後にはクルド人問題があるはず。(シリア側には反政府住民問題)地震の問題が大きいので、ニュースではざっくりと「トルコ人」と伝えているが、その中にはクルド人も含まれるはず。

 クルド人問題は日本では遠い存在だけど、中東では大きな問題。(日本では昨年クルド人少女を主人公にした「マイ・スモールランド」という佳作映画が公開されている)

 村上春樹のエッセイではこの土地を旅して怖い思いをしたことが綴られている。トルコ軍とクルド人ゲリラの一発触発の緊張感の最中を旅人として通過する。日本では考えられない緊張感。このエッセイは30年以上前の旅。しかし、クルドの問題は解決していないし。このあたりの周辺の国際環境も変わっていない。相変わらずキナ臭いエリアなのだ。