いつも旅に行く前に、本屋さんに行って、その土地について書かれているエッセイなどを読んでいる。いわゆるガイドブックではなく、エッセイ。ガイドブックにはガイドブックの良さもあるけど、それは初めて行く時。その土地(街)の概要や見どころを端的に知るにはいいと思う。ただ、ガイドブックに載っている場所だけをトレースするような旅は、あまり、好みではない。
しかし、何も知識がなければ、いい場所を素通りなんてこともある。その意味で、旅や土地に関するエッセイは役に立つ。
下川裕治の旅エッセイを読み始めたのは、ふとしたキッカケ。書店の旅コーナーに彼の本が数多く置かれていたのは、目にしていた。それだけに旅案内本なのではないか、という偏見があった。
最初はユーラシア大陸横断の旅の本を読んだ。ユーラシア大陸横断なんて本じゃなきゃ体験できないと思ったから。
これが面白かった。単なる旅紀行に収まらない魅力があった。元新聞記者の目線の鋭さ。特に中国奥地に行った時に遭遇した官僚たちの傲慢さ。そのへんを見過ごさず、厳しき視点で書いていた。それが社会批判になっている。ああ、こんな文章家の人なのだと思った。
それ以来、機会があると下川裕治の本を読んでいる。先日は韓国の紀行本を読んだ。「週末、ちょっとゆるり」シリーズ。これも面白かった。今のK−POP騒ぎにはうんざりしているので、韓国のことにイマイチ興味が持てずにいた。(それでも韓国には10回以上は行っているけど)
下川さんの本が書かれたのは今から7年前の2015年。その時はBIGBANがトップスターだった。そのコンサート会場のレポート(コンサートは見ないで会場周辺だけ)も、なかなか辛辣で面白かった。
さて、沖縄旅行にあたり、そういえば下川さんの沖縄本ってないのかとアマゾンで探してみた。ありました!「週末沖縄でちょっとゆるり」。これを読むと20年近く前に、彼が書いた沖縄紀行本が現在に繋がる沖縄ブーム元になっていたとか。これ決して自画自賛なコメントではないと思う。自分が最初に沖縄に行ったのは約40年前だけど、当時、沖縄料理に興味がある人なんていなかった。沖縄料理屋などというものも一般的でなく、新宿あたりでも島唄を沖縄出身者が集まって歌うような飲み屋がある程度。(だから「ちむどんどん」が嘘くさいのだ)
アマゾンで注文して、届いたのは出発の前日。届くのに1週間もかかった。でも、どうにか間に合った。前日にこのほとんどを読んだ。那覇・栄町の話など、さすが下川さん。視点がディープ。それに基地問題。この複雑な問題を外側の立場から、内側の本音を引き出している。間に合って良かった!
