80年代から演技派女優として一目おかれていたグレン・クローズ。決して正統派の美人ではないけど、その演技力で主演の地位を勝ち得ていた。彼女が演じてきたのは一貫して、自立した強い女性。何せ最初に注目されたのが「ガープの世界」。自分の子供を産むために死にそうな戦士にまたがって、強引に妊娠する看護婦という役なのだから。大ヒットした「危険な情事」では、単なる浮気で寝たマイケル・ダグラスを徹底的に脅かす怖い女。グレン・クローズには、決して母性あふれる優しい女のイメージはない。
映画から舞台に移った時の代表作は「サンセット大通り」のミュージカル版。あのグロリア・スワンソンの演じだ狂った大女優の役なのだから、やはり怖い女。怖い女を巧みに演じるというのが彼女の固定したイメージ。
新作「天才作家の妻」も決して母性あふれる役ではない。ノーベル賞を受賞した作家の妻役。クローズが出るので、暖かな夫婦愛の話には、やはりならない。夫婦には、他人に絶対に知られていはいけない秘密がある。この映画は、いつクローズが、この秘密を暴露するのかをめぐるサスペンス仕立てになっている。この妻も、相当に怖い。観客は、この秘密が何かすぐわかる。クローズが演じるので、絶対におとなしくは引く下がらないはず、そうなったら、どうなるかとハラハラするのだ。
クローズはこの映画で7度目のアカデミー賞にノミネートされた。さすがに今回は受賞するだろう。これほどノミネートされて受賞できなかったのは「アラビアのロレンス」のピーター・オトォールや「聖衣」のリチャード・バートン、女優では「王様と私」のデボラ・カーぐらい。まあ、名優ばかりで、その中に名を連られるのも名誉かもしれないが、本人は、さすがに受賞したいだろう。もちろん受賞に値する名演。クローズの演技を観るだけで、映画館に行く価値のある映画。今週末公開。
