ライアン・ガンダー:ユー・コンプリート・ミー

ポーラ美術館

2025年11月24日(月)


 

ライアン・ガンターの作品は、コンセプチュアル・アートです。洗練されたおしゃれなデザインで、とっつきやすいものが多い。日本での個展は3年ぶり。以前観た東京オペラシティアートギャラリーの展覧会はとても良かったので、ポーラ美術館まで足を伸ばしました。

 

入り口にあったのがこちら。

 

 

③孤独なまま、幸せでいられるの?

 

Can you be lonely and happy?

孤独なまま、幸せでいられるの?

 

同様の作品があちこちに置いて(?)ありました。英語の質問を記した黒い玉です。別のフロアに小さい玉のバージョンも展示されています。

 

 

⑰おばけには歯があるの?
 (答えばかり求める世界での問い)

 

入り口のフロアに展示されていた巨大な玉に比べてカワイイですが、こちらは物量で攻めてきます。

 

 

大きいせよ、小さいにせよ、球に記されている質問は見えないものもあります。見えても答えのわからない質問もありますし、思いあたる答えがある質問もあります。世界は見える質問、見えない質問に溢れていて、時に大きな重い質問に向かい合う時がくる、そんなことを表現していると漠然と眺めるのも良いと思いますし、時間をかけてひとつひとつの質問に向き合ってもよいと思います。

 

 

④幾多の野望たちの亡霊(待合室)

 

現実には開催されていない架空の展覧会のポスターを50点制作。それを重ねて貼り付けた作品です。貼り重ねられ見えなくなってしまった架空の展覧会と、見ることなく終わってしまったリアルな展覧会。私たちにとっては見ることはできないという点では同じです。この2つを違えているものが、私たちの心の中にしかないなら、その事実はいかに心もとないものでしょうか。

 

 

⑦閉ざされた世界

 

ライアン・ガンダーの5才の息子は自閉スペクトラム症で、身の回りのものをキレイ並べることに「執着」しているそうです。その姿にヒントを得て制作しています。アール・ブリュットのアーティストの作品を思い出させます。彼らが一心不乱に制作する姿は「好き」とか「夢中」とかとどこか違う精神的姿勢を感じます。

 

 

⑧時を巻き戻して

 

ゴッホは絵の具を買うためのお金を弟のテオの仕送りに頼っていました。ライアン・ガンダーはその仕送りと同じ金額のお金でスクラッチくじを購入。当たった賞金はアーティスト支援に使っています。展示しているのはそのスクラッチを貼り付けたものです。これが作品といえば作品ですが、作品の本体は一連の行動にあります。テオとゴッホの行為の再現とも言えるそれは、時を経て繋がっているともいえます。目の前にあるものを手がかりに、見たことのない行いが心の中に形作られる、そういう作品です。

 

 

⑩生産と反復を繰り返しながらも

 君は自由を夢見ている

 

単なる鳩時計のオブジェと思いきや、動きます。

 

 

この鳥は鳴くのではなく喋ります。もちろん英語。よくわからなかったので、和訳の解説を読みました。架空の物語で人類が有史以前から文明を手にするまでの歴史を神話にしたような現代人に批判的な内容です。

 この小鳥の演説がそのまま作品の主張でないとするなら、時計に縛られて決まったことを定期的に発信するだけの姿こそ、現代人にたとえたものかもしれません。

 

 
⑥俺は・・・

 

鏡を隠している布は大理石のような素材でできています。言われなければ全くわからない仕上がりです。これは外すことはできるのでしょうか。鏡を保護するためにかけられた布が実は鏡を使う邪魔になっている。見えているものの不確かさと思い込み、ありのままを写すという鏡の特性と相まった、入れ子のような問いかけの作品です。

 

 

⑬物語は語りの中に

 

壁に穴が2つ。それぞれの穴から顔を出したネズミが2匹。人が近づくと会話を始めます。会話は英語。内容はネズミ自身がこれはアート作品なのかと暴露するような身も蓋もないようなこと。ここまでやると少ししらけるな、と思いました。

 

 

⑮すべてはカウントされている

 

これは、黒い点が作品。

 

 

蝿です。以前見た覚えがあります。その時は椅子の上に落ちていました。時間が経つと動く仕掛けのはずですが、私が見ている時は動きませんでした。それにしても作品らしくない展示の仕方です。

 

 

⑫アイディア・マシン

 

ボタンを押すと、作品のアイデアが出てくる装置です。説明が特に掲示されてはいないので、気づかずに通り過ぎてしまう方もいたでしょう。

 

 

オフィスビルの部屋のミュージアム?

 

現実にありそうな気もしますがどうでしょうか。

 

 

⑯時空からの離脱(ロンドン、マレ通り146番地)

 

タイトルにあるロンドンの住所に実在するドアをピカピカの金属で制作した彫刻、オブジェです。フリーハンドで描かれた落書きのような浮き出た曲線も実物を写しているそうです。

 彫刻は生き物以外を対象に作ると妙に見えるもので、これもそれに当てはまります。この作品が彫刻のありようにケチ(?)をつける作品なのか、わかりかねます。そういうのは今更なので別の解釈、制作意図を知りたいとは思いました。

 

見始めてから気づいたのですが、以前の個展で見た作品も多かったです。前回から3年しか経っていないのでしょうがないかもしれません。それでも色々考えさせる面白さのある展覧会で見に来た価値はありました。

 

美術館としては、他にゴッホの企画展示もありますので、見どころ満載です。

 

 

 

 

 

 

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