まだまだざわつく日本美術
サントリー美術館
2025年8月23日(土)
2021年に開催された「ざわつく日本美術」の第2弾。ざわつくというより、とてもためになる展覧会でした。敷居が高くわかりにくい日本美術を楽しく紐解いています。
1-1 色絵寿字宝尽文八角皿
これはとても良い展示でした。吉祥図と呼ばれるおめでたい物を並べた図案の器や絵画は五万とありますが、現代人には直感的にめでたさが伝わらない。こうしていちいち説明をつけてくれると有り難みがわかってきます。
「宝珠」がめでたいと言われてもタマネギみたいで良さがピンときませんが「望む物を思い通りに取り出せる宝の玉」とあれば確かにスゴイとなりますし、さらにそれが8つもあるなら、ドラゴンボール9つ集めるより全然スゴイと思うでしょう。
2-5 武蔵野図屏風 六曲一双
この企画展でもっとも秀逸と思った展示です。六曲一双の屏風をひとつにまとめて、六曲一隻にして展示しています。
屏風はパーテーション。それが現実、それが真実。
屏風というと日本美術の粋とも言えますが、持ち運んで広げたり畳んだりして使用する実用品です。使い方は自由です。
Wの字の形に立てるだけでなく、このように畳んでT字の形で立ててもよい。絵を描く側も部分的な使い方を想定し使い勝手を考えた構図で絵を描いています。
実際に組み合わせて遊べる展示もありました。
3-7 薄蝶螺鈿蒔絵香枕
すすきちょうらでんまきえこうまくら
女性の使う香枕です。箱の中で香炉をたいてこの上に頭を乗せて髪の毛に香りをたきこみます。
側面にあしらわれた螺鈿の蝶にススキの絵柄。
蝶は「胡蝶」ともいいます。
胡蝶 → こてふ → 来てふ(来てね)
ひらひら舞う蝶に揺れるススキが手招きするように見えます。
女性が来て欲しいと願うのは・・・。
胡蝶 + 枕 → 胡蝶の夢
枕に頭を乗せて眠りにつく時、心に浮かぶあの人の姿は夢か現か幻か・・・。
道具と図案、教養が組み合わさった貴族の女性が喜びそうなものです。
室町時代ってしょうもない絵巻物がありますよね。絵巻物は貴重品ですから、教養の高い作品を作ると思いきや、文学とは言い難いものもあります。
「御用の尼」という何でも屋の老女が老僧に若い女性をあてがうことを約束。その夜、実際に女性が訪れたものの夜が明けてみると若い女性ではなく「御用の尼」本人だったという話。上図は真実を知った老僧がギャフン!という場面。
いわば笑い話です。偉くない人間の振る舞いを笑う。落語に通じるところがあり、こういう物語を楽しむというのは日本人のDNAに組み込まれているのかなとも思います。
5-2 東こぎん 着物
いきなりマニアックなコーナーです。青森県津軽地方に伝わる「こぎん」。
寒さで木綿の採れない地域にあって貴重な木綿や布、着物を大切に使う中で生まれ工夫が、美しい模様となって受け継がれてきました。
6-2 笙 銘 小男鹿丸
最後のコーナーは個人のコレクション展示。これは前回のざわつく展でも展示されていたような。笙の名品を入れるために作った袋や箱が、本体よりも贅沢な工芸品になってしまいました。
左の端に立ててある笙が本体。袋は2つ、箱に至っては3箱の入れ子になっています。刀の拵えが国宝になってしまうような本末転倒ぶり。
6-6 薩摩切子 藍色被船形鉢
器のコレクションのひとつ。薩摩切子は美しいですね。実物はもっと鮮やかな藍でしたが、この画像では再現しきれていません。手前の部分に蝙蝠の図案、後ろには陰陽図があしらわれています。
部分的な紹介にとどまりましたが、面白そうと感じて頂ければ幸いです。展覧会はすでに終了していますので、第三弾が開催された折には観に行かれることをオススメします。
前回のざわつく展のコラムも宜しければどうぞ。
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