名品展 国宝「紅白梅図屏風」

MOA美術館

2024年2月11日(日)


 

久しぶりに熱海にあるMOA美術館を訪れました。

MOA美術館と言えば、エスカレーター。

 

 

 

登って登って登ると円形のホールのような踊り場が見えてきます。天井には色鮮やかな映像が。

 

 

テクスチャーマッピングや、チームラボが現れる遥か前からこういう仕掛けを作っていたのですから、先見の明と資金力がすごいです。

 

 

それにしても、なかなか展示室に辿り着きません。

 

 

 

 

この広さは笑うしかないです。世界を救済するなら、このくらいのスケールは当たり前なのでしょう。

 

そして展示室入ると、いきなり、

 

 

黄金の茶室

 

秀吉の黄金の茶室の原寸復元。

わかっていてもすごい美術館です。

 

さて、それでは今回の本命。

 

20  紅白梅図屏風 尾形光琳

 

所蔵品とはいえ国宝ですから、梅の開花時期に合わせて公開というのが、恒例なのでしょう。撮影OKなので、逆に人混みが絶えない状況でした。

 

 

 

面白い絵です。中央の平面的なパターンでしかない川が、妙な空間的奥行きを生み出しています。瓢箪のような形が、左右の紅白の梅のバランスを天秤のように支えています。梅の枝ぶりはとてもはっちゃけているものの、あり得ない形ではありません。梅は色は鮮やかなものの花は小さく、桜に比べると花の量が圧倒的に少ないので、画面上でポツポツと配置する花をどうやって印象的に見せるかというのも腕の見せどころです。川と2本の梅、金一色の背景というシンプルな要素がそれを支えています。

 

「風神雷神図」にしても「紅白梅図屏風」にしても二曲一双という日本ならではの独特の形式の中でこそ成立しているところもこの絵の魅力です。

 

 

17  色絵藤花文茶壷 野々村仁清

 

赤、藍、緑という少ない色数でありながら豊かな色彩空間。釉薬をかけていない下部の橙が、白い釉薬との対比で地面のようでもあり、写実的にも見えます。360度どの方向から見ても、一枚の静物画として破綻していない。完璧な造形です。


 

3 寒江独釣図  伝馬麟

 

中国の水墨画の名人の絵は、現在の中国に残っていることは少なく、意外に日本に伝えられたものが残っていることがあります。作者については「伝○○」という言い方で、確証はないがおそらくそうであろうというものです。重要文化財であることもよくあります。この絵は「伝馬燐」ですが、この他に「伝馬遠」「伝銭選」の絵が展示されていました。

東洋美術を多く所蔵している美術館でも同様の中国の水墨画を見ることがあるこですが、かなり傷んで古くなっていることが多く正直よさはあまりわかりません。(わかりたいのですが、残念です。)

 

 

6 平兼盛像  佐竹本三十六歌仙切

 

日本画における肖像画は鎌倉時代のやまと絵に始まります。衣服はパターン化され、どれも同じようですが、顔は外見的な特徴にとどまらず内面までとらえたものになっているとも言いますが、この絵は断簡で小さく古いので、そこまではよくわかりません。前述した中国の水墨画といい数百年以上前の絵画の鑑賞にはそういう難しさがあります。ただ、このサイズなら漫画やアニメと同じくらい。そう考えるとそのくらいのことは表現されていて当然ともいえます。

 

13 白衣観音図 吉山明兆

 

この絵は確か以前、京都の東福寺の展覧会で見ました。吉山明兆はその時知ったのですが、多彩な表現で大作もこなす技量に驚きました。あの時は撮影不可でしたが、ここではOKなので抑えておきます。とても手慣れた感じがします。白衣の白が鮮やかで観音様が画面から浮かび上がるようです。

 

 

 

 

46  手鑑 翰墨城(かんぼくじょう)

伝小野道風

 

伝藤原行成

 

伝菅原道真

 

書には明るくありませんので、良し悪しはわからないのですが、国宝ですから触れておきます。

「翰」は筆、「墨」は墨、筆と墨の城、すなわち「翰墨城」ですから、名前からして最強です。当時でも古い名筆をかき集めて、台紙に貼り付けたアルバムのようなものです。まあ、楷書は活字のようにしっかりしていて上手いなあ、とか、草書は流れるのような線が流麗で美しいとか、そのくらいは感じるのですが、小野道風や藤原行成のどこが、他の方と比べて卓越しているのかとかはさっぱりです。

 

 

56 石山切 藤原定信

 
書としてでなく、料紙の絵柄が目にとまったので取り上げることにしました。展示しているものを見てもよく見えなかった柄がスマホで撮影するとくっきり浮かび上がるから不思議です。植物の文様の中に2体の神獣がいる刷り込み。墨で植物の葉や鳥が描いてあります。絵画的で見応えがあります。(本当は書に何か感じなくてはならないのですが。)
 
 

88 海景 熱海 杉本博司

 

最後に紹介するのは、杉本博司。今回の旅の次の目的地、「江之浦測候所」の創設者です。展示室が凝っていて、真っ暗に照明を落とした中で作品にだけライトを当てています。モノクロ写真のプリント作品ですが、本物の風景のようにも見えてきます。海景シリーズの中では、太陽の光の反射、雲間から差込む光、ぼかした焦点と、場面や表現に変化があり、風景写真、写真表現として面白みがあり見やすい作品だと思います。

 

 

 

記憶が定かでありませんが、前回訪れたのは、10年、いや20年くらい前かもしれない。いろいろ改装もされていると思いますが、広くていい美術館です。

 

展示室の広さに比して展示数はおさえめ、作品と作品の間の距離も広くとっているので、観るストレスが低い。ガラスも最新の透明度の高いもので、作品もよく見えました。最近は熱海も人気の観光地として復活していると言いますし、もう少し気軽に訪れたい美術館です。

 

 

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