四日目 念願の芝桜

やっとこの日がやってきた。花の時期とバースデー割引の適用期間が重なっていることに気づいて決めた旅行だったが、最初に考えていた日程ではチケットが取れず、その年によって花の時期は少しずつずれるので、どれだけ残っているかは未知数だった。

ホテルで自転車を借りて、朝8時に出発。


  



  



滝上公園 芝桜

一部、花が枯れたり、他の草が伸びたりはしていたが、まだまだ花はきれいだった。むしろその新緑とのコントラストが鮮やかだった。
10万平米、
甲子園7つ分
という広さ(なんで甲子園なんだろう?)。どこを見てもシャッターを切りたくなる。
黄色とオレンジ色はつつじ。北海道のつつじはなぜかこの色が多い。


朝早く出てきて大正解
。(カーテンの隙間の朝日で、早朝に目覚めてしまったからなんだけど…)
芝桜は朝露で瑞々しいし、見物客がほとんどいない。
ベンチに寝転がったりして、
夢のようなひとときを堪能する。

(「フォト 」に他の写真もupしておきます)


10時頃になると、駐車場に車が集まって来るのが見えた。
これぞ潮時と思い、停めた自転車へ向かって丘を降りる。
ちょうど観光バスが到着して、おっちゃん、おばちゃんがゾロゾロ降りてきた。芝桜に見とれる人は少なく、ほとんどが建物に入っていく。お土産か、トイレか。やっぱこういう旅行はしたくない。(涙)

まだまだ時刻が早いので、どこへ行こうか地図を広げる。町外れに「浮島湿原」というのがあるらしい。





地図の中心部は正確なんだろうけど、端の方は距離が省略されている可能性がある。暑さや疲れでダウンしたらまずいので、ある程度のところまで行って着かなくても、折り返して来よう。魚を売っているために妙な臭いの充満したコンビニ(?)でお弁当を買い、出発。

木陰の涼しい林の中の道を過ぎると、あとは牧場の中を突っ切る拓けた道(一応国道)。木材を積んだ大きなトラックが追い越して行く。どこまでもどこまでも、景色が変わらない。一本道なので標識とかもほとんどない。でも「浮島峠 33km」という標識があった。湿原と峠の位置関係は…うーん。
大きな谷をひとつ越えたら、その先にまた谷があり、そこで諦めて折り返した。片道10kmくらいだったようだ。


夕方のさんぽ

浮島湿原を諦めて戻っては来たが、時間はまだお昼。
街の中をふらふらし、まだ時期の来ていないハーブ園や道の駅に行き、結局また芝桜を見に行った。出店コーナーみたいなのがあって、北海道らしいメニューが並んでいる。いももち、いもだんご、ラーメン、ジンギスカン、芝桜生ソフトクリーム…。生?生って…。生芝桜絞りたて…?
ジンギスカンにビールなんていいなぁとは思ったが、遅いお昼を食べたばかり。芝生に寝転んでみたりして過ごす。




一度、ホテルに戻ってから、パン屋のおばちゃんに教えてもらったサクルー川沿いの遊歩道を散歩。きれいな水が流れ、水音がすがすがしい。
遊歩道に弘法大師の像があった。こんなところまで来たのか?!健脚ということか、伝説だけなのか…と思ったが、謂れ書きを読むと、水死者の霊を鎮めるために建立されたとのこと。
ああ、びっくりした。


駄目押しの芝桜

木に咲く桜には、夜桜という楽しみ方があるが、私は夕方の桜が好きなのだ。芝桜も夕方の陽射しの中でかわいい色になっていた。遊歩道で小さなかたまりを作って咲いていた芝桜を撮る。
この日は朝が早く、疲れもしたせいか、9時からの『動物のお医者さん』を見ながら寝てしまった。半分くらいしか見られなかった。

三日目 大移動

北海道での移動は、住んでいる人も旅行者も車を使うのだろう。公共交通機関がとても使いづらい。知床から紋別経由で滝上まで、オホーツク海沿いにずーっと行けばよさそうなものだが、そういうバスはなく、調べた結果、バスと電車を乗り継いで、一日がかりでうねうね行かなければならないことが分かった。


ボンズホームに別れを告げ、10:10発のバスで網走へ。

網走




11:44着。電車が出るのは12:09なので、駅で食事をするか、お弁当を買うか迷ったが、面倒になってそのまま乗車。
風が強く、駅名の看板が揺れる。駅を出ると、土が舞い上げられて火事の煙みたいになっているのを見た。湖が海のように波立ち、川へ逆流しているのも見た。

さすが地の果て。すごいところだなぁ。冬にうっかり外出したら死ぬわ~とか思っていたが、この日は特別だったらしい。
このとき少し離れた弟子屈湖でカヌー転覆事故が起きていた。

電車は山あいに入り、なんだか天気も荒れてきた。
車内がだんだん寒くなり、荷物から服を出して次々重ね着する。
しまいにはパジャマ代わりのトレーナーまで出して着たが、ジーンズ越しに足が寒い。仕方なくごしごしこすっていたら、
暖房が入った

14:53 遠軽着。


遠軽

すごく寒いところだ。しかも寒々としたところだ。
大きな道を車が走っているが、素通りして行く。店もあるにはあるが閉まっている。人気はない。
バスターミナルに着く頃には、歯がガチガチ鳴っていた。電光表示板に「9℃」とあるが、知床に着いた時より風が強いせいか寒い。


食べ物で暖を取ろうと探し回り、人に聞いてラーメン屋に入り、かきこむように食べてバスターミナルに戻る。体は温まったが味はよく分からなかった。



遠軽発 15:35

四方を山に囲まれ、どんよりとした雲でフタをされた寒いところから、30分くらいで海の見えるところに出た。空も晴れた。磯の香りがする。

紋別着 16:55
紋別発 17:36

港町紋別でバスを乗り換え、また内陸へと向かう。牧場しかない。開墾された頃のことを想像してみる。果てしないなあ。
「次はホテル渓谷」とアナウンスされ、慌てて降りる仕度をする。そんなバス停があるとは思わなかったので、滝上の町で降りて、歩いて戻るつもりだった。

ホテル着 18:40



川沿いに建つかわいらしい外観のホテル。今日からは味気ないユニットバスかぁ…と思っていたが、なんと大浴場があった。ラジウム温泉なのはありがたいが、換気扇があるだけで窓が開かない。浴室を開けただけですごい熱気と湿気。案の定、すぐにのぼせた。

二日目 体力勝負?

宿でMTBを借りて、
知床五湖 を目指す。
前夜、オーナーに相談して、教えてもらったコースだ。
「行ってごらん」と軽く言われたが、想像以上にハードなコースだった。
しかも
14キロもあるなんて知らずにスタートした午前9時。




  


はじめは上り坂でもエンヤコラとこいでいたが、だんだん苦しくなるのが早くなっていった。
自転車を降りて押しても、なかなかおさまらない。標高がぐんぐん高くなっているので、多少空気が薄いのかもしれない。降りて押すにしたって、充分急な坂なのだ。
空は真っ青。日差しジリジリ。でも湿度が低くて風があるので、さわやかな暑さ。
昨日とは打って変わって海も青い。森は新緑で、鳥や虫がかまびすしい。

どうもセミのような声がする。あとで聞いたら「ハルゼミ」
というヤツがいるらしい。
羽虫がたくさん飛んでいて、走っていると顔に当たる。鼻にも入る。
平地では綿毛になっていたタンポポがまだ咲いている。春と初夏と夏が一度に来たようだ。


森林限界を超えた知床連山の青い山と残雪の白とのコントラストを眺めながら、ジェットコースター並みの下り坂でイェーイ!…あれ?ってことは、
帰りはこの坂を登るんじゃん!
下り切って岩尾別川を渡り、今度は早々に諦めて自転車を押して上る。


  



  


知床五湖

休み休みだったけど、2時間くらいで知床五湖に到着。
文字通り、5つの湖がある。しかもそれぞれ「1湖」「2湖」…「5湖」と名づけられている。
ただし
ヒグマが出る
ので、日によって入れるエリアが違う。
この日は1湖と2湖のエリアしか入れなかった。それで完全に安心というわけではなく、売店でクマよけの鈴を貸していたり、遭遇した時の対処法が書いてあったりする。


湖は澄んだ地下水。そこに連山が映る。風が渡り、さざなみが起きる。
いつまでもボケーッとしていたいところだが、ここにも中高年の団体客が来る。(涙)
どうせ湖なんて大差ない(斜めになってるとかさー)んだから、2湖まで行くこともないと、ひとりのオヤジが何度も繰り返す。じゃあ、
近所の池でも見てろよー。(怒)

人気のないところにいると、今度は蚊に囲まれた。なんかデッカくて、刺されたらスゴいことになりそう。(汗)



  


写真左
2湖エリアと3湖エリアの境にあった、立ち入り禁止の札。

写真右
エゾシカが木の皮を食べた跡。
どうやって、あんな高いところまで食べたのか…。




五湖から折り返して、一時間で「フレペの滝」 へ。
道路から海側へ折れて、ハイキングコースみたいなところを1キロ歩く。足がカクカクする。
このエリアもヒグマ注意らしい。見てみたいけどやっぱり怖いので、歌いながら歩いた。


フレペの滝(アイヌ語で「赤い川」)は、別名「乙女の涙」
なのだが、そうは見えない。
地下水が海へ注いでいるので、川はなく、崖からいきなり噴出している。この海岸沿いにはこういう滝がいくつもあるが、ほとんどは船で海からじゃないと見られない。



  

その船に乗ると、知床岬まで行ける(上陸は出来ない)。この時期は岸辺でヒグマが見られる可能性も高いらしい。もちろん国後島も見えるだろう。もう一泊するんだったら、行ってもよかったかな。

♪知床の岬にハマナスの咲く頃…と歌われているが、知床岬は立ち入り禁止区域らしい。(保護のため?)先端まで行って、国後島を眺められるんだとずっと思ってた。


カモメがたくさん飛んでいるのを上から見る。かなりの高低差がある。
この海岸線のくぼみは、長い年月をかけて流氷で削られたものとのこと。
人が来ないのをいいことに、東屋のベンチで足をたっぷりマッサージ。MTBの前傾姿勢で痛くなった腰も寝そべって伸ばす。



残りはほとんど下りで、あっと言う間に街の近くまで降りた。
お腹が空いたなぁと思っていたら、ガイドブックに載っていた
「かにや」 があったので、そこで昼食。
カニいくら丼 2,500円
。汗をかいたせいか、カニの味噌汁がやたらうまい。
カニもいくらもほんのり甘味があって、生臭さは全くなくて、本当においしかった。やっぱり新鮮なのが一番だなぁ。


勢いでタラバの脚
を買い、自分宛に送る手配をしてしまった。
だって、うまかったんだもん。
マジで



「しれとこ自然村」 というキャンプ場にある温泉に入る。
ここの露天はなんの障害物もなく海が見える。
私にはちょうどよかったが、あとから入ってきた人は「ぬるくて寒い」といってすぐ室内に戻ってしまった。その後も露天に出てくる人はなく、貸切り状態。




夜のプリン

宿の1階は
喫茶・軽食の店 になっている。グラタンを食べたその店では、じゃがいもを使ったデザートも出している。これを宿泊客は2階で食べることができ、しかも百円割り引き!
これはじゃがいもを使ったプリン…のようなもの。じゃがいもが入っているので、かなりの充実感。おいしかった。


この日はほかに宿泊客はなく、コインランドリーで洗濯して、コンビニで買ったおにぎりを食べ、早々に布団に入る。旅の供は宮部みゆきの「蒲生邸事件」。日焼けした腕がガンガン熱いのに、小説の中では雪が降っている。寒さがイメージ出来ない。