ハンガリーの作曲家コダーイ(1882年~1967年)が、ハンガリーの詩人ガライ・ヤーノシュの作品に登場するハーリ・ヤーノシュ(ハンガリー版「ほら吹き男爵」と言われる)を題材に作曲したのが、組曲「ハーリ・ヤーノシュ」だ。とにかく楽しく、またフル・オーケストラの聞きごたえのある6曲から成る作品だ。第3曲(歌)と第5曲(間奏曲)には、ハンガリーの民族楽器である、大型の打弦楽器「ツィンバロン」が使われ、第4曲(合戦とナポレオンの敗北)では、アルト・サクソフォーンが使われている。僕は第5曲が非常に好きである。これぞハンガリーの音楽だと感じさせる哀愁漂う名曲だ。また第6曲の「皇帝と延臣の入場」は、打楽器が活躍し、お祭りの様な理屈抜きに楽しい曲だ。こういう音楽を聞いていると、ヨーロッパには、それぞれに国を代表する大作曲家が存在し、後世に残る作品を作曲しているんだなとつくずくと感じる。
我々の世代は、オペラというと、プッチーニ作曲の「蝶々夫人」とビゼー作曲の「カルメン」がまず頭に浮かぶのではないだろうか。僕は「カルメン」は劇場で見たし、テレビでも色んな公演を見た。「カルメン」の魅力は、当たり前の事だが何と言ってもその音楽にあると思う。まず冒頭の「前奏曲」、第1幕の「ハバネラ」と最後の「間奏曲」、第2幕の「ジプシーの歌」と「闘牛士の歌」と最後の「間奏曲」、第3幕の「何を恐れることがありましょうか」と最後の「間奏曲」、と自分が特に気に入っている曲を並べてみた。この様に「カルメン」では、最初から最後まで、誰もがどこかで聞いたことがあると記憶に残っている名曲が、次々と出てくる。また先ほど書いたミカエラのアリアの「何を恐れることがありましょうか」は、あまりよく知られている曲ではないと思うのだが、情熱的な曲の多い「カルメン」の中では、しっとりとした曲で、感動させられる。
ドヴォルザークのアメリカ滞在の期間中に作曲された「新世界交響曲」は、今も昔も人気の高い作品だ。人々は素朴なメロディーになつかしさを感じ、独特のリズムに心を躍らせ、力強いサウンドから多くの勇気を与えられるのだと思う。第2楽章のイングリッシュ・ホーンの有名なメロディーは、後に「家路」という題をつけて「黒人霊歌」に編曲されているが、日本でも昔から多くの人に親しまれてきた。僕はこの交響曲から、特に第1楽章と第4楽章に顕著に表れているある特色を見出した。それは、金管楽器の強音のユニゾン(複数の楽器が同じ音を演奏すること)が多用されているということだ。強音のユニゾンによるメロディーは、聞く者の胸にストレートに迫ってくる。そしてある種のカタルシスを与えてくれる。「新世界交響曲」の魅力は、その辺にもあるのではないかと思う。この作品は、これからも世界中の人々から愛され続けていく作品だと思う。