- 愛よりも昔、孤悲(こい)のものがたり
雨の朝は学校をさぼり、庭園で靴のスケッチを描いている高校生。靴職人を志す彼はある日、まるで世界の秘密そのものみたいに雨の庭に佇む年上の女性に出逢い、心惹かれていく。
やがて二人は心を通わせていくのだが…
梅雨はもうすぐ明けようとしていた。
監督の新海誠さんを知ったのはいつだったろう。6年前のTSUTAYAでみたアニメコーナーの一角だった気がする。そこには「ほしのこえ」「雲の向こう、約束の場所」が置いてあり、「秒速5センチメートル」公開記念の特集が組まれていた。
まさに映像叙事詩と呼ぶにふさわしい、モノローグ感のある描き方に感嘆する。前作「星を追うこども」は子供向けに偏りすぎて残念に思っていたところだけに、本作は大人も観れるアニメとして期待が高まる。
短編アニメーション「彼女と彼女の猫」をみたとき、僕はこういうものを作りたかったんだろうなあと…ぼんやりと思ったりしたものだ。それは大成建設のCMをみたときも同じだった。
短い映像の中に込められる想いを感じ取り、観る者はそこから物語の情景を思い描き、想像力を膨らませていく。
それは活字から物語を紡ぎだす小説と同じであり、短編映画の素晴らしさはそこにある。同時上映の「だれかのまなざし」もショートフィルムとして楽しみな作品である。
万葉の時代、日本人は大陸から持ち込んだ漢字を自分たちの言葉である大和言葉の発音にあてはめていったのだという。
現在の文字に固定される前のその表記には、どこか生き生きとした情景が文字に宿っているように感じる。
春 → 波留
菫 → 須美礼
そして、この映画のキャッチコピーにもある通り「恋」は、古非や古比という表記の他に「孤悲」とも表現されていた。
恋愛は近代になってから西洋から輸入された概念であり、かって日本に恋愛はなく、ただ恋があるだけだったという。
孤悲という表記には…
ひとり(弧)さみしく あなたを想う 悲しい気持ち
…というむかしの人が抱いていた心情が汲み取れる。
そして、「悲」という字は、心を両手で引き裂いている様を表しているそうである。何とも意味を聞いただけで、無性に切なくなってくる言の葉ではないだろうか。
P.S 秦基博さんへ
本作の主題歌「rain」を何度も何度もリピートして聴いてます。
何となく食わず嫌いならぬ聴かず嫌いしていたのですが、これから他の歌も聴いてみようと思っています。何かお薦めの曲はありますか?
傘もささず歩く君に捧ぐ歌を探す捜し人より


