はたらく君の手はうつくしい
本書未読の方は解説から先にお読みにならないことをお薦めいたします、念のため♩
誰しもちょっとした個性みたいなものを主張したい、という欲求はそこそこ持っているものの、しょせんは「普通」の範疇内で暮らす事に満足を感じている。
それは「常識」という言葉に置き換えてもいいかもしれない。
「普通」や「常識」なんてものは少し揺さぶってみれば、すぐに壊れてしまうやわなものでしかない。
なのに、それらを主張する人たちは傲慢なまでにその普通さに対する自信や安心感を持っている。そんな普通さに安穏とする人たちに贈るサイコサスペンス。

▽熱帯魚
彼女たちは賑やかな色彩と賑やかな環境の中で、音もたてずに漂っている熱帯魚みたいだと思った。
華やかなファッションビルの内と外、ショッキングピンクの口紅とマニュキュア、女のプライドがもろくも崩れ落ちた時、ある種の衝動的で静謐な狂気が産み落とされる。
▽最後のしずく
音もなく降り注ぐ雨 ーーーー
この顔が雨を受けるのは今日が最後だと、女は自分に言い聞かせた。
扱いづらい帰国子女の園児、引き立て役として続いた友情、あの頃の彼と再会したその瞬間…溜め続けた塊はこぼれ落ち、雫となって弾けた。
▽ばら色マニュアル
草花の名前が付けられたカラフルなファイル、増え続ける膨大なマニュアル、カラオケとサブリミナル効果、設立当初八人の幹部。
彼女は自ずから進んで模倣する、
それは虹の弧を描きバラ色の未来が捧げられる事を信じて疑わない。
▽来なけりゃいいのに
普段、会社にいる私がこんな憂鬱を抱えているなんて、職場の誰が知っているだろう。
多重人格の噂、ビリー・ミリガン、手のかかる妹弟たちの存在、疑惑の矛先が急に転じたとき、足元が突如としてひっくり返ったような錯覚に陥る。

P.S. 成田空港で手に取ったその人へ
ブックオフで買ったとき、レシートが挟まっていましたよ。日曜の10時、機内での読書のために買ったのでしょうか?
これからどこかに出かけるのか…それとも帰るところだったのか、少し想像してみたりしてww
人から人の手に渡っていった本自体にも物語がある…ビブリア古書堂の栞子さんの台詞をふと思い出しました。
そのレシートを栞代わりに使った者より