永遠に続く手紙の最初の一文…
母の日にカーネーションを買ってあげようと考えていたら、それよりミニバラがいいと思わぬリクエストを受けてしまった。
というわけで、バラを少し調べてみたら種類があり過ぎて驚いた…とある日曜日のこと。
ロイヤルスカーレット
サマースノー
アイスバーグ
ヘリテージ
八女津姫
グラハムトーマス
バタースコッチ
そういえば、「世界から猫が消えたなら」でも人はどうして花に名前をつけるのだろうという疑問を猫が投げかけていたのをふと思い出した。
人はなぜ名前をつけるのだろう…
そして、どうしてそこに意味を込めるのだろうか…
■デルフィニウム(ブラックナイト)
勇猛果敢で気高い性格の持ち主だった君はまさに孤高に戦う騎士さながらであった。揺るぎない信念を持つあなたは今も変わらず闘い続けているのだろうか。君ならば異国の地でも物怖じせずに立ち向かっていけると信じている。

■ザクロ
幻の稀覯本を題材にした小説「三月は深き紅の淵を」において、キーワードとなったのが柘榴の実。本格ミステリを好む読書家のあなたには、この花の謎めいた深紅の色合いこそふさわしい。
ギリシャ神話において、農業の神デメテルは地獄の神プルトンの計略にはまり、ザクロの実を口にした。そのため彼女の娘は一年の半分を地獄で暮らさなくてはならなくなったという。
愛する娘が離れるたびにデメテルがふさぎこんで太陽を隠してしまうので、球根や種子は半年を地中で過ごすことを余儀なくされた。これが「冬」のはじまりと伝えられている。

■スイレン
まるで空から水上に落ちた星のような花。夜の淵に浮かび上がるそのあまりの白さにおののいてしまう僕は、この花の持つ花言葉である清純な心には程遠い。
相手を映し出す鏡のような君は、僕と静態した事で水面は歪んでしまい、それきり二度と元には戻らなかった…

■アマリリス
その毅然とした立ち居振る舞いからは想像もできないが、実は内気で臆病な君を僕だけが知っている。
強い虚栄心から放たれる人を寄せ付けない空気とは裏腹に、本当は怯えて踞っている子供のように弱くて脆い君を理解してくれる人がどうかきっとあらわれます様に。

■クロッカス
美しい青年クロッカスは羊飼いの少女と恋仲にあったが、神々の反対にあい、悲嘆のあげく自殺してしまう。哀れに思った花の神フローラは、彼の亡骸をこの花に変えたという。
愛した事を後悔するというこの花の言葉をあなたに贈るのは、あまりにも哀し過ぎる。

P.S 猫のレタスとキャベツへ
世界から名前が消えたなら…
僕はこうして沢山の美しい花を調べる事はできないし、込められた花言葉も伝える事が出来ないと思うから。
永遠に完成しない二通の手紙より