-並んで一緒に歩く。
-ただ、それだけのことなのに、
-たったそれだけのことがこんなに難しくて、
-こんなに凄いことだったなんて。
全校生徒1200人が夜を徹して80km歩きとおす伝統行事「鍛錬歩行祭」。
その歩行祭で少女はある密かな賭けをしていた。
高校3年間、親友にも誰にも言えなかった秘密を清算するために。
のどかな田園、水平線の残光、心霊写真の正体、男同士の語らい、恋の話。
降るような星空、親友のおまじない、20kmの自由歩行、小さな賭けの結末。
ただ歩くだけの一日、
目に見える時間の流れを肌で感じながら、普段の日常では話さないような事もこんな特別な夜には話してしまう。
そういう経験は誰にもあるのではないだろうか。
恩田陸さんの本作は、実にノスタルジックで、リリカルで、どこか懐かしく感じさせる小説として私の心に収まった。
この本を読んでいて、中学3年の時の遠足を思い出した。
私の通った中学は野外活動の一環として、毎年秋になると山に登る。
学年入り混じっての班毎に列を作り、山頂目指して2時間歩くのだ。
私が班長を務めるグループには、親友の元カノがいた。
年長者2人と先生が班の最後尾を歩くので、その親友の彼女とは往復4時間一緒に歩くことになる。
当時思春期の私には、そんなわけありの女子と4時間も喋るのは至難の業であった。
前日に会話の流れを色々考えながら眠りについたのだが…
当日、その子に話しかけられても素っ気無い返事をするばかりで、前日の予習は何の意味もなかった。
それでも会話がそれなりに弾んだのは、ひとえに彼女のおかげである。
‐‐1年の時、私の事どう思ってた?
‐あいつには勿体無い女だと思ってたww
‐‐何?私の事好きだったりしたの。
‐まあ、クラスじゃ可愛い方だったからね。
‐でも、
‐あいつの彼女としてしか見てなかったしな~
‐‐色々面倒みてくれたもんね。
‐‐あの時は相談とかありがとう。
‐俺の思春期がその頃だったら、
‐好きになってたかもしんないな。
‐‐え、聞こえなかった…何て言ったの。
‐要はタイミングの問題って話。
‐‐一体何の話よ?
‐なんでもない。
‐ああ~もっと青春しておけばよかった。
‐‐‐今も青春だぞ( ̄∇ ̄+)
‐な!?先生、聞いてたのかよ((>д<))
彼女が根気強く話しかけてくれたおかげで、私にも少し余裕が生まれ、時には冗談を言って笑い合ったりした。
歩き疲れてくると、
次第に防御も疎かになり、
こんな風に普段の学校生活なら絶対喋らないような心のうちをお互いに話したりもした。
親友と彼女は確か中学1年の文化祭以降に付き合い始め、2年の冬休みに別れた。
私の思春期が後2年早かったら、親友と戦うことになっていただろう。
P.S これから読まれる方へ
ちなみに本作の映画は、実に本の世界観をそのまま映像化していて綺麗に収めてある。
映画を観てから本を読んでもいいし、本を読んでから映画を観てもいいと思う。
思春期が遅かった読書家より

