ムーア「・・・・・・・・・・・・・まさか・・・そのロザリー家って・・」
ベックフォード「そうだ。忌まわしきシュレイドの暴君、デーモン・ロザリーの末裔。それが君だ。キャロルムーア・ロザリー」
Recollection No.5_114
ムーア「デーモン・・・アーロン・・ロザリー・・・・・そうだ・・・・あの時、お母さんがお父さんのことをそうやって・・・・」
ベックフォード「信じられないのも無理はない。私も恩師の突然の死により、引き継ぎのないまま、正式にジェイソンの執事に任命された。その直後、白の同盟の盟主となったばかりのバーニー・ブラントとジェイソン・ウーがこの屋敷で会合を行った。私にとってはそれが執事としての初仕事だった。そしてその会合に相席した私は、流れの中でバーニー・ブラントがロザリー家の末裔であることを知らされた・・。顔にこそ出さなかったとは思うが、内心狼狽で胃から込み上げてくるものを抑えるのに必死だったのを今でも覚えているよ」
ムーア「・・・・記憶は確かだったんだ・・・・お母さんは・・既に、あの時・・・「あたちに」ヒントを授けていてくれたんだ・・・」(ベックフォードには聞こえない声量で独り言を呟くと同時に涙が視界を覆い尽くしていく)
ベックフォード「父上も今の君と同じ表情をしていたな・・・」
ムーア「・・・・・??」(我に返ったかのように涙目のままベックフォードを見つめる)
ベックフォード「君にとってのバーニー・ブラント・・アーロン・ロザリーもまた、自身がロザリー家の末裔であることを伏せられていたからだ。会合を開いた理由は、デーモン・ロザリーと知己であったジェイソンから、本当に自分がロザリー家の末裔であるのかどうかを知りたかったからだと思う」
ムーア「それじゃあ、お父さんも・・ずっと騙されていたってわけ?どうしてそんな・・」
ベックフォード「我が子に素性を隠してまで成し遂げるだけの価値がある、長期的計画をデーモン・ロザリーが企んでいたからだ」
ムーア「計画・・?」
ベックフォード「白雪神殿の盟主の座を乗っ取るという奸計だ」
ムーア「・・え・・・」
ベックフォード「デーモン・ロザリーにしてみれば、その計画が達成されるまで、なんとしても自分たち親子の素性を隠し通す必要があったのだろう。そこでデーモンはかねてより知己の間柄であったウー家を頼り、そしてクーデターを見事成功させ、老いてもまだ、生粋の姦雄であることを証明してみせた。こうして白の同盟もまた、旧シュレイド王国同様、デーモン・ロザリーの手によって陥落されたのだ」
ムーア「そんな・・・・剥奪して・・・・・」
ベックフォード「当時、神殿のメンバーはウー家に借金をしている負債者から構成されていた。デーモンはクーデターの手引をしてくれたジェイソンへの見返りに、彼らに採掘や採取といった労働を強要させ、その貴重なヒンメルンの資源を返済としてウー家に提供していた。盟主とは名ばかり、その実情は強制労働所の看守だった。対しそんな計画など微塵も知らされていなかった君の父上、アーロン・ロザリーはクーデター成功後に、その事実を知らされ、長い間、投獄されていたという」
ムーア「なんで!?」
ベックフォード「君の父上は大変、心優しい御方だった。これは私の推測だが、アーロンはクーデターを起こした自分の父を止められなかったという自責の念に駆られ、そして憤り、幾度となく反発したからだろう。デーモン・ロザリーは自分の息子にさえ、容赦しなかったということだ」
ムーア「・・・・デーモン・クソ・ロザリー・・!!」グッ・・!!
ベックフォード「長い投獄生活はデーモンの容態悪化と共に開放された。そして死に際のデーモンよりすべてを明かされ、父の死後、盟主となったアーロンは、その因果関係から自信が持てなかったのだろう。そして彼は・・アーロン・ロザリーは父の記憶と共に神殿の空気を一掃しようと考えたのだ。そして会合を開き、ジェイソンの助言も受け、新たな白の同盟を築けあげようとしたのだ」
ムーア「・・・苦しかっただろうね・・・・お父さん・・・・」つぅ・・(視界を潤いのフィルターが覆い、そこから涙の雫が零れ落ちる)
ザーーーーーーーーーーーーーー
ベックフォード「また雨が強くなったようだな・・・・」ザーーーーーーー
ムーア「お父さんとお母さんは神殿で?」クッ(涙を拭いながら)
ベックフォード「そのようだ。アースラの一族もまた、ウー家に借用していたからな」
ムーア「そんなに?」
ベックフォード「一個人にしてはかなりの負債金額を相続していた。実は、そのことについてジェイソンよりクエストを請け負っていた」スッ・・(マゼンダのガウンの懐にグローブをはめた手を伸ばし、何やら丸まった書面を取り出すとそれをテーブルの上に広げてみせる)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(広げられた書面には所々に血痕が滲んでおり、乱雑な筆運びで各所に「赤い字」でサインが記され、その上に血判が押されている。また、借用金には100万Zと記されているのが確認できる)
ムーア「これがお母さんの借用書?なんか只事じゃない感じだけど・・・」
ベックフォード「当時まだ赤子であったアースラはこの血判状と共に、四番街の喫茶店に捨てられ、マスターの手によって育てられた。彼女の両親は消息不明のままなのだ。そこでジェイソンはとある仮説を立て、私にもうひとつのクエスト、サブクエストを依頼してきた」
ムーア「お母さんの両親に何があったか・・・分かったの?」
ベックフォード「残念ながらベアトリクス家に関する資料を探し出すことができなかった。書士隊を雇う計画もあったのだが、何故かこの事に関しては公にしてはいけないという使命感があった・・・・」
ムーア「なにかまずいことがあったのね?」
ベックフォード「あくまでもこれはジェイソン・ウー本人の仮説なのだが・・・」
ムーア「聞かせて」
ベックフォード「アースラのご両親はまだ赤ん坊であった彼女を連れ、返済金と共にヴェルドへ向かう途中、盗賊に襲われたのではなかろうか?当時、西シュレイドにはヒンメルンの山賊が跋扈していたからだ。そしてその山賊こそ・・・」
ムーア「デーモン・クソ・ロザリー・・・・!!」
ベックフォード「だとすればだ。デーモンを匿っていた山賊の手により、アースラの両親が用意していた返済金が盗まれたのだとすれば、その金はデーモンの手によって、とっくにウー家の金庫に戻ってきていることになる」
ムーア「どういうこと?」
ベックフォード「彼は神殿に侵入する際、家族同然であった山賊の仲間たちをヴェルドのガーディアンに売り払い、彼らが貯めていた財産をウー家の金庫に入れたという話だ。これは過去の帳簿にも記されている。そしてデーモンはその預金を担保に神殿簒奪後の融資をジェイソンに約束させた」
ガシャーーーーーーーン!!
(右拳をテーブルに叩きつけ、一部を大破してしまう)
ムーア「この手で殺してやりたい。デーモン・ロザリーを・・!!」ポタポタ・・・(握りしめた右手から鮮血が滴り落ちている)
ザーーーーーーーーーーーーーー
ベックフォード「あくまでも仮説だ。そしてベアトリクス家に関することもまた・・・・」ザーーーーー(無念のように天を見上げる)
ムーア「・・・・・あんたの性格からして、一生懸命やってくれたことはなんとなく分かる」ガタン(再び椅子にふんぞり返る)
ベックフォード「まるでベアトリクス家自体が歴史から削除されているかのような印象さえも・・・・・すまない」
ムーア「こっちこそ・・・お母さんに変わって、ありがとうって言わせてもらうわ」
ザーーーーーーーーーーーーー
ベックフォード「これまでの実直な感想は?」
ムーア「あーーーーいろいろ整理することだらけだけど・・・・あたちはクソデーモンの孫で、お母さんもまた謎に満ちた人だったみたいね」やれやれ(と、椅子にふんぞり返り、高級ダイニングテーブルの上に組んだ両足をゴトンと乗せる)
ベックフォード「外街での彼女のあだ名は・・」
ムーア「UBU・・あたちもいつかハンターになったら、そう登録しようかな・・」
ベックフォード「フッ・・・では、彼女の耳については知っているか?」
ムーア「みみ・・?」(疲れたのか、虚ろな視線でぼうっと天井を見上げている)
ベックフォード「君の母上は、どうやら竜人の血が流れていたようだ」
ムーア「竜人・・・・・」
ベックフォード「祖父母のどちらが竜人の血統であったのかは定かではないが、君の母上の両耳が尖っていたのは事実だ。彼女はそれを気にしてか、いつも帽子を被っていたがね・・・」
ムーア「どうして?」
ベックフォード「当時のシュレイドには、まだ竜人狩りの記憶が残っていたからだ」
ムーア「それもデーモン・クソ・ロザリー・・・・てめぇの息子の配偶者にも迷惑を・・・・たくさんいるんだろうね・・・・被害に遭った人達は・・・・・お父さんの気持ちがよく分かる・・・・」(現実から目を背けるように両目を閉じる)
ザーーーーーーーーーーーーーーー
ムーア「どうしてあたちは?」つんつん(気を取り直すように目を開け、ニット帽から片耳を出し、それを触っている)
ベックフォード「さぁな・・・父上の血が竜人のそれに勝ったのかもしれぬな・・」
ムーア「・・・クソ・ロザリー家。あたちにはその血が流れてる」
ベックフォード「高潔な母と勇敢な父の血も流れているということを忘れるな」
ムーア「・・・・・・あんたに言われたら・・おしまいね・・・」ふぅ・・・
スッ・・(血判状を押し返す)
ベックフォード「いいのか?君が持っていてもいいんだぞ?」
ムーア「いい。お母さんの直筆じゃないんでしょ?それにまだ・・」
ベックフォード「返済はとっくに終わっている」
ムーア「そうなの?」
ベックフォード「これに関しては君の母上には内密にしていたのだが・・・彼女が抱えていた借金を完済したのは他でもない、無二の親友である、ルチア・ロッティだ」
ムーア「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ベックフォード「ルチアからのたっての希望でな・・。彼女はアースラの借金を秘密裏に肩代わりし、強制労働施設だった白雪神殿から、アースラとバーニーを下山させるようジェイソンに伝え、彼はその約束を守り、私に誓約書を作らせた。だが、それも叶わぬ夢となってしまった・・」
ムーア「クソッ・・・・いつも知らないことばかり・・・・クソッ・・!!」
ベックフォード「里親である彼女に感謝しろ。今、君に自由が与えられているのは、すべてルチアのおかげだ。もし彼女による返済がなかったら、君もまたウー家に拘束された人生になっていたかもしれないんだからな・・・」
ムーア「ジェイソン・クソ・ウー、ヴィンセント・クソ・ベックフォード」ブッ(唾を吐き捨てると同時に中指を突き立てる)
To Be Continued
★次回ストーリーモードは11/9(月)0時更新予定です★