ゴロゴロゴロゴロゴロ
カカーーーーーーーーーン!!

(見上げる天井の向こう側より雷鳴が轟き、おそらく近場に落雷が起きたのだろう衝撃が走ると..)

ムーア「ひいいいいいいアセアセ」すてぇ~~~~んDASH!(椅子ごと後ろにひっくり返る)

ベックフォード「庭に落ちたのだろう・・ここにいれば安全だ」(視点主は態勢を直しながら食台の下より車椅子の包帯男をそれとなく眺める)

ムーア「あんた・・・どうしてそんな怪我を?」よいしょっとなDASH!(椅子を直して再びふんぞり返る)

ベックフォード「怪我ではない。これもまた・・・運命なのだよ」


ダーーーーーーーーーーーーー
(滝のような豪雨が屋敷全体を叩きつける音が食卓にも響き渡ってくる)


ムーア「今のあたちにこれ以上、驚くことなんてないか・・・」


ゴロゴロゴロゴロゴロ!!
(頭上より耳をつんざく攻撃的な雷鳴が)


ムーア「ひいいいいいいいいいアセアセ」すてぇ~~~~んDASH!

ベックフォード「まったく・・雷以上に騒がしい娘だ」キコキコキコ・・(車椅子をこちらへ進めながら、グローブを装着した右手を伸ばしてくる)

ムーア「あんがと・・・」


ギュッハッ(その手を握った瞬間)


ベックフォード「!?」


ズルッ!!(グローブを外すと、やつれた骨と皮だけになった右手が露わになるのだが、それ以上にショッキングなのは、その肌の色が乾ききった紫色に染まっていることであった)


ムーア「予感的中」ポイッDASH!(起き上がりながら奪ったグローブを後ろに放り投げる。目の前の車椅子の男は露わになった右手を庇うように左手で覆い尽くしながら、こちらを恐る恐る見上げている)

ベックフォード「なんだと・・?」

ムーア「国王陛下と同じ症状」

ベックフォード「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」(右手を抱きしめながら目を背ける)

ムーア「初めて怯えた眼を見せたわね。ジェイソン・・・・じゃなかった。ヴィンセント・クソ・ベックフォード」ペロッ(傷ついた右拳の血を舐める)

ベックフォード「陛下に謁見したのか?」

ムーア「違う。向こうから勝手に。錯乱しながら。胡散臭い病名以上に・・あの姿は何?」

ベックフォード「そうか・・・ついに陛下までもが・・・彼女の毒牙に・・・・・」

ムーア「いい加減、あんたの背後にいる黒幕について話したら?暗黒商会。その組織にいる下衆な男とも話をしたわ」

ベックフォード「フフ・・・さすがだ、キャロルムーア・ロザリー。やはり私の目に狂いはなかった」


キコキコキコキコキコ・・・(反転せずに俯きながら車椅子を後退させていく)


ムーア「逃げたって無駄よ。あたち、走るのも得意だし、でんぐり返しにも自信があるの」

ベックフォード「飲み物を用意してある。話をする前に一杯飲ませてくれ」キコキコキコ・・(そう車椅子をバックさせながら食卓と繋がっている隣の部屋に消えていく)

ムーア「あ、なら、あたちはいつものおぶどうの(ジュース)ね」(覗き見るように身を斜めにしながらベックフォードの所在を確認する)

ベックフォード「安心しろ。ちゃんと用意してある」カチャリコチョリ・・(用意してあったワゴンの上に置いてある各種ドリンクセットを手に取っている。露わになった紫色の右手が痛々しくも見える)

ムーア「・・・・・・・何の病気なの?」

ベックフォード「正確には病気ではない。副作用によるものだ」キコキコキコ・・(ティーセットを乗せたトレーを右手の上に乗せながら、空いている片方の手で器用に車椅子を回してくる)

ムーア「・・さっきの薬・・・あれは何?」カチャリ・・(視点主が叩き壊した机の端にグレープシュースの入ったグラスを置く車椅子の家主)

ベックフォード「賜物だ」スッ・・(机の上に例の東方戯曲の面を静かに置く)

ムーア「前にあんたはゴルゾンと自分が似ているって言っていたけど・・その仮面の持ち主・・・その人が薬も?」

ベックフォード「昔の話さ・・・」カチャリ・・(おもむろに紅茶を飲みだす)

ムーア「ゴルゾンは命を懸けたのよ?あんたも覚悟を決めて話しなさいな」スッ・・(受け入れるようにそっと椅子に腰を下ろす)

ベックフォード「ゴルゾン・・・・・・そうだな」カチャ・・(静かにティーカップを置く)


ザーーーーーーーーーーーーーー


ベックフォード「フランク・ヴューラー・・・ジェイソン・ウーにもまた、専属のボディガードがいた」

ムーア「どうせゴルゾンの先生みたいな格好した人でしょうに」

ベックフォード「真逆だよ。美麗にして妖艶。一見して才色兼備で清楚な趣を漂わせながら、常にこちらの予想を上回る知見と天眼を持ち、男顔負けの豪胆さを兼ね備え、何処か人を惹きつけてやまない謎めいたパーソナリティを持つヒロイックなヒロイン・・・・そんな御方だった」カラカラカラ・・(記憶を辿るようにスプーンでティーカップをゆっくりと回し始める)

ムーア「憧れ。そんな人がジェイソン・ウーの?」

ベックフォード「ウー家と繋がりのある重要人物だった。私が執事となったばかりの頃、ちょうど恩師に代わり、彼女がジェイソンの相談役を務めるようになっていた」

ムーア「信頼されていたのね」

ベックフォード「まだひよっこだった私など足元にも及ばないくらいにな。彼女はやがてジェイソンの護衛も務めるようになり、彼が神殿へ赴く際は、必ずといっていいほど彼女も帯同するようになった。この仮面は、デーモン・ロザリーの葬儀を行う際、彼女がつけていたものなんだ」

ムーア「ふぅ~~~ん・・あんまりセンスは・・」

ベックフォード「彼女と一緒に選んだ思い出の品だ」

ムーア「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」(気まずそうに口を閉ざす)

ベックフォード「今でも思い出す・・・・・彼女と過ごした一時の時間を・・・・・・」(天を仰ぐように両目を閉じて顔を上げ、記憶と共に感慨に耽りだす彼の雰囲気から溢れ出る気概はどこか若返ったようにさえ見える)

ムーア「・・・・・・・好きだったのね?その人のこと」

ベックフォード「そんな簡単な気持ちではない」(両目を閉じたまま)

ムーア「あっそ。悪かったわね。まだガキで。それで?その憧れのマドンナは今どうしているの?」

ベックフォード「君の両親が亡くなったヒンメルンの災厄後、彼女もまた消息を絶った」

ムーア「それじゃあ、その人も・・」

ベックフォード「違うな。彼女は生きている。その証拠にこの仮面をカーンに託し、私のもとに送ってきたのだ」コンコンコン(やせ衰えた紫色の指で手元の仮面を小突く)

ムーア「ちょっと待って。カーン様はその人と繋がりがあったの?」

ベックフォード「恩師を殺害したのはカーンとその部下だろう。そしてそれを許可したのが彼女・・・というのが私の推測だ」

ムーア「ってことは・・・カーン様たちも暗黒商会のメンバーだったの?」

ベックフォード「関連のあるギルドだ。邪龍教。君も名前くらいは聞いたことがあるだろう?」

ムーア「ニッキーやシオンがこの街に嫌気がさした理由が本当に分かる・・。で?あんたは自分の仇だと分かっていて、その人のことを?」

ベックフォード「当時の私は野心こそ抱いていたが、それに伴わないほど無垢でもあった。その脆弱性をつかれたのだよ」

ムーア「??」

ベックフォード「突然訪れた恩師の死・・・いや、あれは公開処刑というべきか・・別れを惜しむ間もなく、執事に任命されたかと思いきや、影武者などという大抜擢を受け、私はジェイソンと彼女の期待を裏切るまいとして必死だった。それもまた彼女の計画の一部だとも知らずにな・・・」

ムーア「・・どういうこと?」

ベックフォード「その真意がこの仮面に込められていたと知った時、私は絶望したよ」グッ(紫色の痩けた右手で頭部を覆っている包帯の先端を無造作につまみ上げる)

ムーア「・・ちょっ・・・・」


グッ!グッ!シュルシュルシュルシュルシュルシュル
(止める間もなくベックフォードは、半ば強引に包帯を引きちぎるように解いていくと、毛髪が抜けきってしまっているドライな紫色の肌をした頭頂部が次第に露わになっていく)


ベックフォード「その結果、このザマだ」カカーーーーーーン!!(稲光の大袈裟な演出が紫の皮と骨だけになってしまった骸骨のようなベックフォードの姿を誇張して見せる)

ムーア「・・・・・あんたも・・陛下みたいになるの?」クッ・・(グラスを手に取り、自分を落ち着かせるようにグレープジュースを飲みだす)

ベックフォード「・・・・・・・・・・・・・。安心しろ。彼のケースは稀だ。最も、陛下の変わり果てた姿もまた、私同様、彼女の・・・・」ゴクゴク・・(彼の台詞を聞きながら一気にジュースを飲み干していく)


ゴンゴン・・ゴンゴン・・(廊下の向こう側から玄関をノックする音が雨音に混じりながら微かに聞こえてくる)


ムーア「誰か来た・・」コトン・・(空になったグラスをそっとテーブルに置く)

ベックフォード「彼女からの使者だろう。おそらくは顔に傷が入ったメラルー。仮面を持ってきたのも彼だ。顔見知りだろ?悪いが、私に代わって出てくれないか?」ザーーーーーーー・・・ゴンゴン・・ゴンゴン・・!!

ムーア「・・・・・・・・OK。待ってて」


はぁ・・はぁ・・・・・(息を切らせながら、その場を逃げるように廊下を小走りに進んでいく)


ちら・・・(ゆっくりと来た道を振り返ると、食卓の向こう側から、「車椅子の玉座」に座った紫色のミイラがこちらを凝視している)


はぁ・・・はぁ・・・・(その視線から逃れるかのように玄関へと一目散に向かっていく)


ゴンゴン!!ゴンゴン!!
(玄関の前まで辿り着くと、向こう側からけたたましいノック音が)


ムーア「わかってるわよ!!今開ける!!」ガチャッハッ


ザーーーーーーーーーーーーーー!!
(豪雨を背景に案の定、目の前に立っているのは黒いレインコートに身を包んだスカーフェイスなメラルーであった)


スカーフェイス「なぜお前がここにいる!?」ザーーーーーーー!!

ムーア「成り行きでね!それより、彼に渡すものがあるんでしょ!?」ザーーーーーーー!!

スカーフェイス「このクエストを最後に俺もウー家との連絡係は解かれる!これを渡したら、すぐにお前も立ち去れ!!」スッ・・(懐より一通の手紙を差し出してくる)

ムーア「わかってる・・・わかってるんだよ!?けど・・」スッ・・(それを受け取る)

スカーフェイス「いいな!?これ以上、関わるな!!自分の未来を大切にしろ!!・・・・元気でな・・」クルッ・・


ザーーーーーーーーーーーーー
(より激しく降る雨の中、袂を分かつように降りしきる雨粒のカーテンの向こう側へと消えていくスカーフェイスの朧気な後ろ姿が見えなくなるまで黙って見送り続ける)


ムーア「はぁ・・・・はぁ・・・・・・・」ブンブン(急激にぼやけてくる視界の中、意識を取り戻すように頭を振り、ドアノブに手をかける)


ガチャッ・・


ムーア「なんだこれ・・・・・ヤバいくらい眠く・・・・・・」クルッ・・



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(振り返るとそこには紫肌のミイラが「立ち塞がっている」)






Recollection No.5_115






ムーア「!?」

ベックフォード「フッ・・・」にや(しっかりとバランスを保ちながら二本の足で立っている彼が右腕を大きく振りかぶる)



ガツン!!(振り下ろされた右手によって首元を強打されると同時に記憶もまたブラックアウトしていく)




To Be Continued






★次回ストーリーモードは11/12(木)0時更新予定です★