最低限の治療と最小限の休憩で体をケアした私とSは、第五チェックポイントの佃へ向かう。
本当は鍼灸師さんたちに施術してもらいたかったが、順番待ちが長そうなので諦めた。
この疲労感で食ううどんは美味いな、しかし。
さあここまで来たら行くしかない。
行きたくないけど行くしかない。
尼崎に差し掛かる頃、道端で横になり休息をとる参加者を見た。
この仮眠は危険と思う。
私だったら起きたくないし、疲労も取れないだろう。
今さらだが、彼は果たしてゴールできたのだろうか。
しかし、しばらく歩くと私も眠たくなってきた。
歩行がふらふらと安定せず、信号待ちで目を瞑るとすやぁ〜っとなりかなりやばかった。
そこで私は本当は絶対にごめん被りたかった禁じ手に出る。
Sが持参した物資の中にネットで買った眠気覚ましがあった。
ただでさえ、ロキソニンやらを過剰摂取している身である。
得体の知れない薬品を服用したくはなかったが、背に腹はかえられぬ。
本当は一回二錠であるとSは囁いたが、一粒だけ下さいとお願いした。
夜明けに向かって歩く。
夜明け前に釣りに行くことはあるが、夜通し起きっぱなしは久しぶりだ。
おそらく、約11年前、午前4時半に生まれた長男の出産に付き添った日以来ではないか。
Sがネットで買った眠気覚ましの効果は抜群で、体の隅々まで冴え渡っていた。
周囲を見渡す余裕もある。
飲食店の前で明らかにウォーキング参加者ではない人が突っ伏して寝ていた。
これは一大事、救護が必要かと思ったが、Tシャツとズボンの隙間から素晴らしい柄の紋々が見えた。
次の瞬間にはSと目が合い、歩みを止めず、歩行のペースを保つことに専念した。
サッカー経験者の私とて、アイコンタクトがこれほど決まったのは初めてだった。
夜が明け、日曜日の太陽がおはようと言う。
鳥達は歌い始め、早起きの住民とすれ違う。
私とSは佃に到着し、係の者に楽勝ッと言った。
一つのおにぎりとコップ一杯の味噌汁がエネルギーになる事を知った。
一方でTはここに午前6時前に到着していた。
もはや追いつくとかそんな事はどうでもよくて、先にゴールするであろうTの待つツイン21に無事に着く事、そして私をこんな目に遭わせた彼を一発どつく事を現実的な目標にする。
何で俺がこんなことせなあかんねん。
残り10kmでこの物語は終わる。
係の者に楽勝ッと言ってチェックポイントを後にする。
少し寂しいような、すぐにタクシーを拾いたいような複雑な気持ちが芽生えていた。
歩行は摺り足に近かった。