お腹が軽くなった私は見事なV字回復を見せた。
足は痛むが、先ほどの腹痛に比べれば大したことはなかった。
内科的なやつは怖いぜ。
そして、Sの怒りも収まりつつあった。
Sは明石の海岸沿いを走るランナー達にキレていた。
おそらく神戸マラソンへの出場を予定している人達が、過去の大会Tシャツを汗で湿らしながらこれでもかと肩で息をしながら走り抜けていく。
Sに言わせるとその練習自体がイケてなかったらしい。
練習で自らを体力の限界に追い込むのは愚の骨頂。
Sはランナーが走り去る度に腹痛に苦しむ私を励ましながら愚痴っていた。
さて、ここからが私の電車釣行でいつもお世話になっている明石である。
大会に申し込んだ頃は、ワンチャン釣りできんじゃね?って思っていたが、そんなんできるわけねえ。
足早に明石川を通り過ぎて子午線を跨いだ。
大蔵海岸を右手にいよいよ神戸市に突入する。
私の腹痛による大ブレーキもあり、Tとの差は縮まっていない。
しかも、Tはなか卯で親子丼を食べていたようだ。
明石海峡大橋を下から眺める。
兵庫県在住の私にとっては特別な風景ではないが、Sも他の参加者も写真を撮りまくっていた。
少し歩くと橋の麓のベランダから夜釣りを楽しむ人達がいた。
ケミホタルとか電気ウキがみえたので、タチウオ狙ってんのかなと羨ましくなった。
あと、天使と悪魔のコスプレをした女性配信者が撮影していたので、Sとの会話を装って彼女達に聞こえるくらいの音量でめっちゃ可愛いやんと言っておいた。
これぞ福祉。
私とSは須磨方面に歩く。
私はこの道の長さを知っていた。
なぜなら、数年前の釣行で明石市役所ベランダで楽しみ、歩いて大蔵海岸まで移動して釣りをし、そのまま穴場的な釣り場はないか歩くうちに平磯を抜けて塩屋に辿り着き、須磨まで自然と歩いたから。
確か残暑厳しくて死ぬかと思った。
当時に比べれば夜の海岸沿いは悪くないな。
ただ、ここでまたSがキレ始めていた。
ひっきりなしに通過するJRと山陽本線がうるさい。
土曜日の晩なのでそこそこ車も多い。
Sは騒音に敏感なんだろう。
そう言えば、須磨あたりで大阪方面からくる車に声をかけられた。
減速した車の助手席に座る若い兄ちゃんが、「これって何なんスか?どこからどこまで行くんスか?」と尋ねてくる。
姫路から大阪までやと返事すると、えっマジっスか頑張って下さいッと笑顔でエールをくれた。
この後、神戸では何度か同様の質問を受ける。
でも不思議なことに、頑張れと応援されると嬉しくなる。
そんな言葉を力に変え、第三チェックポイントの妙法寺左岸公園にたどり着いた。
予想以上の疲労にぼんやりしていたため、公園前の歩道で左足を引っ掛けてしまい爪先を負傷する。
当時は大した事はなかったが、実は3週間経過した今でも左足親指の爪は内出血している。
チェックポイントではにゅうめんが差し入れられた。
これまでの人生であんなににゅうめんを美味しいと思った事はない。
何杯でも食べたかったが、腹痛の中で歩くのは二度とごめんなのでおかわりはしない。
私は学び続ける。
しかし、やはり下半身の疲労は凄まじい。
座ると立てない。
Sは入念にテーピングを巻き直す。
足元の擦れも気になるようで、水脹れのようになっていた。
アミノ酸で疲労回復を図りつつ、ロキソニンで痛みを和らげた。
私とSは今回最長の24km区間に立ち向かい、第四チェックポイントの津門中央公園を目指す。