ビールは5杯までいってもいいらしい。
Tは地元の先輩の助言を反芻していた。
翌日から寝ずに100km歩く人間が、その大会前にアルコールを摂取するものなのだろうか。
下戸の私には理解が及ばなかったが、上級チャレンジャーが言うのだからそうなのだろう。
それでもやはり、私とTは後輩Sに完歩のコツを聞きまくった。
フルマラソン経験者のSとて、100kmウォークは未知の世界である。
彼は予想できる限りのトラブルを教えてくれた、気がするがよく覚えていない。
最後の晩餐は実に楽しかった。
何とかなるやろ。
ホテルに戻り、ひとっ風呂浴びた我々は居室のモニターでYouTubeを駆使し、コースの下見をした。
そして、いつの間にかいびきが聞こえていた。
私は歳を重ねるに連れて睡眠時間が短くなり、夜中に目が覚めることもしばしばである。
ぼんやりと明日を思う。
泣いても笑っても、翌朝、100km完歩に向けてスタートを切る。
この時の私はまだその重大さに気付かず、気持ちよさそうに眠るTとSを羨ましく思っていた。